■第だい４６話わ　エルフちゃんとエイプリルフール

　四月しがつ一日ついたち。午前ごぜん中ちゅうからハルカがきていたので俺おれ渾身こんしんの嘘うそを吐ついてみることにした。

「俺おれ、実じつは他ほかに好すきな人ひとがいるんだ」
「ええっ」

　真顔まがおでハルカの顔色かおいろが曇くもる。
　えっと思おもったのは俺おれの方ほうだったが、反対はんたい側がわを見みるとそこにはエリカとララちゃんも目めをこれでもかと大おおきく開あけたかと思おもったら、目めから涙なみだが。

「わああああああん、お兄にいちゃんの嘘うそつきいいいいいいいい」
「私わたしのことも騙だましてたんですねぇ、うわああああああんん」
「うわあああああん、景都けいとのバカあああああああああ」

　家いえの中なかはまさに阿鼻叫喚あびきょうかん。三人さんにんが泣なき出だしてしまった。
　最近さいきん、卒業式そつぎょうしきがあって少すこし泣ないていたがあれとは明確めいかくに色いろが異ことなっていた。

　それはまるで連鎖れんさするように三人さんにんともワンワン泣ないて収拾しゅうしゅうがつかない。

「嘘うそだから、ほら嘘うそ」
「うわあわあああああん、お兄にいちゃんが嘘うそついたぁあああああ」
「わあああああん、ケート君くんのバカあああああああああ」
「景都けいとの嘘うそつきうわああああああああああんんん」

　どうなってんだと言いいたいのはこっちなんだが、どうこの現場げんばを見みても俺おれが犯人はんにんとしかいいようがない。

「みんな、ごめん、俺おれが悪わるかった。今日きょうはエイプリルフールだからって」
「ひくひくっ、ひくひく……エイプリルフール、あっ今日きょう四月しがつ一日ついたち」
「なにそれぇ、エイプリルフールってなんですかぁ」
「お兄にいちゃん、エイプリルフールって何なに」

　そうか妹いもうとも小学生しょうがくせいだった時ときはともかく、俺おれもこんな嘘うそを吐ついたことなくって、学校がっこうもちょうど休やすみだし、中学ちゅうがく上あがってから入院にゅういんしてて知しらなかったのか。
　ハルカは早はやとちりだとしても、ララちゃんはあれだよな、本当ほんとうに知しらなかったと。

「すまん。完全かんぜんに俺おれのミスだ。ごめんなさい」

　俺おれが土下座どげざをする。

「なんだーお兄にいちゃん、嘘うそを吐ついていい日ひでそれで嘘うそを言いったってことかぁ」
「そうだったんですねぇ、そっか、全然ぜんぜん知しりませんでしたぁ」
「ごめん、私わたし今日きょう四月しがつ一日ついたちだと意識いしきしてなかったから」

　ハルカはちょっと恥はずかしそうだ。
　しかしいきなりクソ真面目まじめな顔かおで冗談じょうだんにならない発言はつげんをした俺おれの完全かんぜんに判断はんだんミスだった。
　渾身こんしんの嘘うその出来できだと思おもったあの一瞬いっしゅんの俺おれをぶん殴なぐってやりたい。

「本当ほんとうは三人さんにんとも大好だいすきだから」
「えへへ、ララは信しんじてましたよぉ」
「う、うん。大好だいすきっていうなら」
「お兄にいちゃんは私わたしのこと大好だいすきだもんね」

　なんとか機嫌きげんを直なおすことができた。

「でもショックで死しんじゃうかと思おもいましたぁ」
「まさか景都けいとが浮気うわきしてるなんてって思おもった私わたしもバカだったわ」
「お兄にいちゃんがまさかとは思おもったけど、みんなもう泣ないてたから、てっきり本当ほんとうかと思おもって」

　お、おう。

「そうそう嘘うそ吐ついていいのは午前ごぜん中ちゅうだけなんだよ」
「そういう嘘うそじゃないでしょうね」
「なんだよハルカ、さすがに俺おれもそこまでおかしくはない」
「そっか、なんだ、じゃあ午後ごごは普通ふつうなんだ」
「そうだよ、じゃ行いってくる」

　ということで俺おれは罰ばつとしてケーキ屋やさんに人気にんきのシュークリームを買かいに行いかされた。
　行いかされたというと語弊ごへいがあるか。自分じぶんで買かいに行いってくると立候補りっこうほしたのだ。
　このケーキ屋やさん循環じゅんかんバスに乗のって反対はんたい側がわなのでちょっと遠とおいのだ。
　なんとかケーキ屋やさんに一人ひとりで向むかう。

　近ちかくのバス停ていから乗のりこんで、バスに揺ゆられながら思おもう。
　まさかマジ泣なき三連さんれんチャンをされるとは思おもわなかった。
　あれは結構けっこう心こころにぐさっとくる。さすがに悪わるいことをしたと思おもう。
　まるで誰だれのとはいわないが、お通夜つや状態じょうたいだった。
　ただしニヤニヤもしてしまう。
　ひっくり返かえせばそれだけ俺おれって愛あいされているんだな。
　なんだか余計よけいニヤニヤしていたら、バスに乗のり合あわせた女子高生じょしこうせいに変へんな顔かおをされてしまった。
　「あのおじさん、こっち見みてニヤニヤしててキモちわる」って顔かおに書かいてあるようだ。
　誤解ごかいだが、わざわざ声こえを掛かけて言いい訳わけしたら余計よけいに気味悪きみわるがられるに決きまっている。
　解げせぬ。まだおっさんには見みえないと思おもう。見みえないよな？　ふむ、むむむ。
　珍めずらしく私服しふくなんて着きているので、自分じぶんでは判断はんだんが難むずかしい。

　なんとか目的もくてきの洋菓子店ようがしてんに到着とうちゃくしてシュークリームの購入こうにゅうができた。
　またバスに揺ゆられて戻もどる。ちょうど反対はんたい側がわなのが非常ひじょうに惜おしい店みせだ。
　これが近所きんじょだったら週一しゅういちで通かよってもいい。

「ただいま」
「「「おかえりなさい」」」
「お、おう」

　やけに気合きあい入はいっている三人組さんにんぐみに迎むかえられた。

「シュークリームをさっそく食たべようか」
「「「やったーー」」」

　声こえを揃そろえて飛とび跳はねる。
　お、おう。久ひさしぶり、揺ゆれるおっぱいちゃんたち。
　春はるの陽気ようきでだいぶ温あたたかくなり、家いえの中なかなので薄着うすぎだったのだ。
　ぷるんぷるん。

「まるでプリン」
「プリンも買かってきてくれたの？」
「いや、買かってきたのはシュークリーム」
「紛まぎらわしい」
「ごめん」

　また平謝ひらあやまりの俺おれだった。二重にじゅうの意味いみで。

「あっプリンね、あ、うん」

　ニヤリとハルカが笑わらう。

「隊長たいちょう」

　俺おれのほうを見みてからララちゃんに視線しせんを移うつす。

「プリン見みつけましたっ」
「きゃっ、な、なななな、なに？」

　ハルカがガシッとララちゃんのおっぱいを掴つかむ。
　おっぱいが揺ゆれる。揺ゆれる。揺ゆれる。

「“プルンプルンですう”」

　ハルカがララちゃんの口真似くちまねをして手てで掴つかんでいるおっぱいを強調きょうちょうしてくる。

「もうやめてぇ」
「はい、これがプリンの正体しょうたいでした」
「なるほどですっ」

　妹いもうともララちゃんのプリンを見みて納得なっとく顔がおをしていた。
　ララちゃんは隅すみで恥はずかしそうに顔かおを赤あかくして縮ちぢこまっている。
　その後あとシュークリームは美味おいしくいただきました。
　プリンも食たべたかったなぁ。

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