■第だい３話わ　エルフちゃんはなんでも一緒いっしょにしようとする

　夕ゆうご飯はんも食たべて日本にほんに来きた理由りゆうも聞きいた。
　さてお風呂ふろに入はいろうか。

「お風呂ふろですねぇ。家族かぞくなんだから一緒いっしょに入はいりましょう、ケート君くん～～」
「えっ、は？」
「は？　え、一緒いっしょに入はいらないんですか？」
「うん。別々べつべつでしょ、普通ふつう」
「がーん」

　めっちゃ落おち込こむエルフのララちゃん。
　いや、その巨乳きょにゅうと一緒いっしょにお風呂ふろ、生なまおっぱい、見みたいけどさぁ。
　どう考かんがえてもそれ「国際こくさい問題もんだい」だよね。

　俺おれたちは家族かぞくだけど、家族かぞくになったけど、それはないのではないでしょうか。

「男女だんじょは別々べつべつにお風呂ふろだよ？　いや小学生しょうがくせいでも高こう学年がくねんになったら一人ひとりでしょ」
「そうなんですか？　そんなの聞きいてないです！！！」

　そんな抗議こうぎの声こえ上あげて、心外しんがいですみたいな顔かおされても、一緒いっしょにお風呂ふろなんて入はいったら問題もんだいあろう。

「家族かぞくは一緒いっしょなんです！　エルフの里さとではそうでした！」
「ここは日本にほんなので。それ以前いぜんに地球ちきゅうなので」
「そんなの知しりませんよ。いいじゃないですか、お風呂ふろくらい。減へるもんじゃないし」
「ダメ。っていうか、ごめん。俺おれが理性りせい保たもてないから無理むり」
「そうですか……」
「分わかりました。一人ひとりで入はいりますぅ」
「そうしてくれ、先さきにお風呂ふろ入はいっていいよ」
「ありがとうございます～～ぶぅううう」

　あっかんベーをして、お風呂ふろの準備じゅんびを始はじめるララちゃん。
　まったく、エルフの里さとはどうなってんだか。

　俺おれは暇ひまなのでテレビを見みる。
　ちょうどＣＭだったけど、好すきなアーティストだったので注目ちゅうもくしてみる。
　女おんなの子このスリーピースバンドだ。最近さいきんネットで話題わだいだったもので、このスピード感かんでＣＭ起用きようか。

『革新的かくしんてき新しん技術ぎじゅつにより全ぜん世界せかいどこでもアンテナ五ご本ほん保証ほしょう。エルフィールの新しん携帯けいたい、アクアズ。新しん発売はつばいです。「君きみとずっとどこまでも……」』

　お、すげえな。新あたらしい携帯けいたい。
　今いままでは地上ちじょうにアンテナを建たてていたんだけど、低てい軌道きどう衛星えいせいのメッシュネットワークと謎なぞの新しん技術ぎじゅつを応用おうようしたどこでも超高速ちょうこうそく通信つうしんのインターネットが使つかえるという。
　アングラ掲示けいじ板ばんでは実じつは電波でんぱじゃないという噂うわさまである。なんでも異世界いせかいの技術ぎじゅつを応用おうようした魔力まりょく通信つうしんなのだとか。
　電話でんわ料金りょうきんも近年きんねん、謎なぞの新しん技術ぎじゅつの導入どうにゅうで年々ねんねん値段ねだんが下さがっている。
　通信つうしん費ひも上限じょうげんほぼなしの無制限むせいげんでこのアクアズは月つき五百ごひゃく円えんだそうだ。
　問題もんだいは電気でんきだな。今いま、核融合かくゆうごう炉ろを国内こくない四よんか所しょに実用炉じつようろを作つくってる途中とちゅうだった。完成かんせいすれば一気いっきに電気でんき需要じゅようをまかなえて、でもって安全あんぜんなんだそうだ。
　噂うわさだとこっちも実じつは核融合かくゆうごう炉ろじゃなくて本当ほんとうは魔道まどう炉ろなんだって。

　今いままで匿名とくめい掲示けいじ板ばんなんて一切いっさい信しんじてなかったけど、エルフが目めの前まえにいると、マジかもしれない、という気きにもなってくる。
　現実げんじつ世界せかいは確実かくじつに侵食しんしょくされてるな。魔王まおう軍ぐんが攻せめてこなければいいが。

　いらぬ心配しんぱいをしていたところで、俺おれは面めんを食くらった。

「ぶはぁっ……」
「どうしました、ケート君くん」
「いや、その格好かっこう、マジでダメだから。早はやくパジャマ着きてきて。イエローカード、ワンナウトだからな」
「えっ、ちゃんとタオル巻まいてるじゃないですかぁ、なんでぇえ」
「上うえも下したもギリギリだろうがああ」
「え、まあ、そうですね。別べつに見みられても私わたし、怒おこったりしませんよ？」
「俺おれが困こまるのっ」
「そうですか、分わかりました。着替きがえてきます。しょぼーん」

　どこでしょぼーんとか覚おぼえてくるんだよ。
　階段かいだんを上のぼっていく音おとがする。
　彼女かのじょの部屋へやは二に階かいだ。

　というかこの家いえには一いっ階かいに広ひろいリビング、親父おやじの書斎しょさい、キッチン、バス、トイレ、納戸なんど、和室わしつがある。
　二に階かいにはトイレと、似にたようなサイズの個室こしつが家族かぞく四人よにん分ぶん。でもって母親ははおやは父親ちちおやと一緒いっしょのベッドを使つかうので、実質じっしつ母親ははおやの部屋へやはほぼ使つかわれたことがない。
　使つかうのは数すう年ねんに一いっ回かいあるかどうかのけんか中ちゅうのときと風邪かぜを引ひいたときくらいかな。
　だから母親ははおやの部屋へやをララちゃんの部屋へやとしたわけだ。
　母親ははおやのクローゼットが二に台だいあるんだけど、一ひとつの中身なかみは出張しゅっちょう先さきに持もっていっていて、空あいてるので使つかっていいそうだ。

「はい、ちゃんとパジャマ着きてきましたよ。にゃーん」
「なるほど？」

　にゃーんとか言いって、猫ねこさんパジャマを見みせてくれる。
　うん、ピンクの生地きじに白しろい猫ねこがたくさんプリントされた薄手うすでのパジャマだった。
　あー、うん。でもなんだろうセウトだな。
　生地きじが薄うすいんよ。おっぱいがな、これでもかとな、強調きょうちょうされてるんだわ。
　でナイトブラなんだろうけど透すけてんだわ。
　生なまじゃないからいいけど、これはこれで破壊力はかいりょくが高たかい。
　歩あるいてくると、ぼいんぼいんと非常ひじょうによく揺ゆれる。

「お風呂ふろ行いってらっしゃい」
「いってくる……」

　諸行しょぎょう無常むじょう。もういいや。お風呂ふろ行いこ。
　頭あたまを空からっぽにしてお風呂ふろに浸つかる。
　さっきまでララちゃんが入はいっていたお湯ゆに浸つかる。
　なんだかそう思おもうと、イケないことしてるみたいだけど、お湯ゆの共有きょうゆうは家庭かていでは一般的いっぱんてきだろう。
　俺おれはアニメに現あらわれるごくごく民みんでもないしな。
　再ふたたび頭あたまの中なかを空からっぽにして体からだを洗あらってお風呂ふろから出でてくる。

「いいお湯ゆでしたか？」
「ああ、気持きもちよかったよ」
「えへへ。ごくごくしちゃいました？」
「しねぇよ」
「ごくごく民みんではなかったんですねぇ」
「知しっているのかごくごく民みん」
「はい。日本語にほんごの勉強べんきょうたくさんしました。通信つうしん教育きょういくだったんです。それからネットでアニメもたくさん見みたんです。勉強べんきょうになりました」

　なんの勉強べんきょうしてるんだよ。
　外国がいこくの人ひとがアニメで勉強べんきょうしてるって話はなしはよく聞きくけど、日本にほんの動画どうが配信はいしん見みてて、変へんな言葉ことばばっかり覚おぼえてもらっても困こまる。
　なんか日本人にほんじんでごめんな。

「それじゃあ、寝ねましょうかぁ。今日きょうは私わたしの部屋へやで寝ねますか？　それともケート君くんのベッドで一緒いっしょに寝ねますか？」
「え、それってどっちの部屋へやでも一緒いっしょに寝ねるってこと？」
「そうですよ？」
「当あたり前まえのように言いう……」

　俺おれが頭あたまを抱かかえる。

「いや、日本にほんではな、個人こじんの部屋へやで別々べつべつで寝ねるんだ。家族かぞくでもね。兄妹きょうだいだって別べつだよ。一緒いっしょには寝ねないんだよ」
「そんな……そんなの、聞きいていませんっ、私わたし、誰だれかと一緒いっしょじゃないとぐっすり眠ねむれないのにぃ」
「すまん、俺おれの精神せいしんがもたないので、別々べつべつで」
「がーん。分わかりました。……おやすみなさい。ケート君くん、いけず」
「おやすみなさい、ララちゃん」

　ララちゃんがしぶしぶという顔かおで自分じぶんの部屋へやに入はいっていく。
　よし、俺おれの安全あんぜんは保たもたれた。
　一緒いっしょに寝ねたら、たわわに押おしつぶされて俺おれが朝あさまでも一睡いっすいもできないに決きまっている。

　俺おれは一人ひとりで自分じぶんの布団ふとんに入はいり、安心あんしんしてすぐに眠ねむりについた。

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