十月じゅうがつ某日ぼうじつ。今日きょうも天気てんきは晴はれ模様もよう。いい秋あきが続つづいている。
　今日きょうは課外かがい学習がくしゅうがある。幼稚園児ようちえんじと一緒いっしょに山やまへ行いき、ドングリやモミジを拾ひろってくるらしい。
　幼稚ようち園えんに到着とうちゃくした高校生こうこうせいたちは挨拶あいさつも早々そうそうに、園児えんじと一緒いっしょにバスに乗のり込こんで出発しゅっぱつした。

「お姉ねえちゃん、おっぱい大おおきい！！」

　突然とつぜん一人ひとりの園児えんじがそう言いいだした。

「僕ぼくのお母かあさんよりも大おおきいよ」
「そう言いわれれば」
「もう赤あかちゃんいるのかな」

　無邪気むじゃきなものだ。ララちゃんは微笑ほほえましそうにそれらの会話かいわを聞きいて、適当てきとうに返事へんじをしていた。
　ララちゃんもなかなか幼児ようじ耐性たいせいがあるらしい。

「あのお姉ねえさん、おっぱい触さわってもいいですか？」
「いいですぅ」

　これには俺おれたち高校生こうこうせい男子だんしたちも一瞬いっしゅん色いろめき立たった。
　男児だんじがララちゃんのおっぱいを優やさしく触さわる。

「柔やわらかいっ、すごーーーーい」

　そうして顔かおをうずめる。ぐりぐりする。もうべったりだった。

「ママ……」

　その子こは父子ふし家庭かていでお母かあさんがいないとさっき幼稚ようち園えんの先生せんせいが言いっていたのだ。

「ママだったら。お姉ねえちゃんがママだったらよかった」

　その言葉ことばが俺おれたちにのしかかる。
　男児だんじも寂さびしい思おもいをしてきたことが窺うかがえる。
　おっぱいを堪能たんのうしたらしい男児だんじは笑顔えがおを浮うかべていた。

「ありがとう、お姉ねえちゃん」
「ううん、じゃあね」
「うんっ」

　男児だんじが名残惜なごりおしそうにしていたが場所ばしょを変かわる。
　そうそうララちゃんの隣となりはお兄にいさん、つまり俺おれの席せきだからね。

　バスが青沢あおさわ山やまに到着とうちゃくした。
　ここ、俺おれたちが春はるに遠足えんそくで来きた山やまで反対はんたい側がわの斜面しゃめんだった。

「お兄にいさんお姉ねえさんたちから離はなれないように、いいね」
「「「はーい」」」

　ララちゃんもハルカも両手りょうてを女おんなの子こと手てをつないでいる。
　バスの中なかからすでに仲良なかよくなっていた。
　俺おれたちも残のこった男児だんじたちを両手りょうてに連つれて山やまを登のぼる。
　登のぼると言いっても幼稚園児ようちえんじがいける程度ていどの距離きょりだ。

　そうして国有林こくゆうりんなのか森もりのような場所ばしょに到着とうちゃくした。
　一面いちめんナラやブナのような広葉樹こうようじゅが植うえられている。もしくは自生じせいしていた。

「ドングリを探さがすぞ！」
「「「おおぉおお」」」

　みんなドングリは大好だいすきみたいで、地面じめんに落おちているドングリを必死ひっしに集あつめている。
　大おおきくて丸まるいの、小ちいさくて細長ほそながいのなど、いろいろな種類しゅるいがある。

「これ虫むしの穴あなあいてる」
「どれどれ」
「これって中なかに芋虫いもむしみたいのが入はいってるんだよね」
「きゃああ」

　ララちゃんがちょっと顔かおを青あおざめて逃にげていく。
　青虫あおむしは嫌きらいなのか。ふむ。

　女おんなの子こたちは落おち葉ばを集あつめて、おままごとを始はじめた。
　赤あかやオレンジの葉はっぱはとても綺麗きれいだ。

「こちらの葉はっぱのほうが赤あかくて価値かちが高たかいのかしら」
「そうね、こちらの葉はっぱは綺麗きれいな形かたちをしていて高たかそうよ」

　なんでかお嬢様じょうさま言葉ことばだ。よく覚おぼえてくるものだ。
　テレビとか見みているとこういうのも覚おぼえるんだな。
　そうして落おち葉ば品評会ひんぴょうかいでどれが値段ねだんが高たかいかという話はなしをしている。
　なるほど。現金げんきんなものというか、最近さいきんの子供こどもは面白おもしろい。

「見みてこれ、デカい」
「ほんとだ」
「すげーぞ」
「おい、これ見みてみーー」

　男児だんじたちが集あつまっていた。
　どうもすごく大おおきいドングリを見みつけたらしい。
　見みつけた子こはヒーローのようだった。

「見みてみて僕ぼくも大おおきいドングリ見みつけた！」

　そういってララちゃんのおっぱいを指ゆびさす。

「そりゃ敵かなわないな、あはは」
「ずりーぞ。ララちゃんママのおっぱいはみんなのものだぞ」
「そーだそーだ」

　だそうですララちゃん。
　ララちゃんのおっぱいは共有物きょうゆうぶつとされ大切たいせつにされているらしい。
　俺おれでさえ知しらなかった。

　騒さわがしいドングリ探さがしは一時間じかんくらいだろうか。
　それでもみんなだいぶお疲つかれのようで帰かえりのバスでは舟ふねを漕こいでいた。


　　◇

　俺おれたち高校生こうこうせい組ぐみはというと、帰かえりにカラオケで打うち上あげをしていた。

「はい次つぎ、ララちゃん」
「ララ、『あの青あおい空そらの果はて』歌うたいますぅ」
「「おぉおお」」

　打うち上あげと言いっても、この部屋へやは俺おれとアキラとララちゃんとハルカ、いつものメンバーだけだ。
　もちろん禁煙きんえん室しつで酒さけはタブーとなっている。

　ララちゃんが一曲いっきょく歌うたう。人気にんきアニメのオープニング曲きょくだ。
　俺おれたちはなんとなく聞きいたことがある。
　ネットで日本にほん文化ぶんかを見聞みききしたララちゃんはこういうモノに詳くわしい。

「ジュース持もってきますぅ」
「わたしも」

　ララちゃんとハルカが部屋へやを出でていく。
　ドリンクは飲のみ放題ほうだいだけどドリンクバーなのでセルフサービスとなっていた。

「これ、シュワシュワしますぅ、面白おもしろいですぅ」
「炭酸たんさん飲料いんりょうだね」
「はじめて飲のみますぅ。家いえではお茶ちゃかコーヒーなのですぅ」

　そうそう。うちでは主おもにコーヒーか紅茶こうちゃ、あとララちゃん特選とくせんハーブティーが多おおい。
　今いままでそういえば意識いしきしていなかったけどペットボトルの炭酸たんさん飲料いんりょうは買かってきたことがない。
　ララちゃん、炭酸たんさん飲料いんりょう、初体験はつたいけん。
　ララちゃんがソーダを一口ひとくち飲のむ。

「わわ、パチパチしますぅ、なんだこれぇ」

　驚おどろいてくれてうれしい。そっかエルフの里さとにはなかったか。

　ハルカとララちゃんがロボットアニメのダブルヒロインのデュエット曲きょくを歌うたっている。

「愛あいしてる～」
「愛あいしてる～」
「天てんの彼方かなたまで～」
「ずっとずっと～」
「「永遠えいえんに～～」」

　こういうのは俺おれたち男同士おとこどうしよりかわいらしいので、かなり盛もり上あがった。
　もちろん俺おれたちも歌うたうことはあるが男おとこは男おとこなので、こんなにうまくはない。
　ララちゃん、アイドル活動かつどうとかしたらめちゃくちゃヒットしそう。
　俺おれはそれを想像そうぞうしてちょっと怖こわくなった。自分じぶんたちだけのララちゃんにしたいなと独占欲どくせんよくを感かんじたからだ。
　日本語にほんごの歌うたもうまいララちゃん。今後こんごの活躍かつやくにも期待きたいしたい。

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