■第だい２３話わ　エルフちゃんと山やまキャンプ

　夏休なつやすみはまだまだ続つづく。
　今度こんどは山やまでキャンプをしようということになっている。
　今回こんかいは泊とまりがけだがアキラはお休やすみだ。女おんなの子こと泊とまりがけなど絶対ぜったいに許ゆるされないらしい。アキラはどちらかというとちゃらんぽらんな性格せいかくなのだが家いえは厳格げんかくだったりする。

　参加者さんかしゃは俺おれとハルカとララちゃん。それからハルカのお父とうさん、源二げんじさん。
　夏休なつやすみを貰もらったそうなので、車くるまの運転うんてんを買かって出でてくれた。
　正直しょうじきキャンプ道具どうぐを持もって電車でんしゃとか無理むりっぽいので大変たいへん助たすかる。
　車くるまはゲンジさん所有しょゆうの三さんナンバーのワゴン車しゃだ。

　向むかう先さきは前まえの予定よていの通とおり、俺おれのおじいちゃん家いえのすぐ近ちかくとなっている。
　普通ふつうなら駐車場ちゅうしゃじょうがすぐ満車まんしゃになって無理むりなのだが、近所きんじょであるおじいちゃん家いえに車くるまだけ停とめて荷物にもつを河川敷かせんしきへ持もっていけば利用りようできるという特別とくべつ待遇たいぐうだった。

「おじいちゃん、おばあちゃん、きたよー」
「おおぉケートよくきたなぁ」
「ケート、早はやくあがりなさい」
「「「おじゃまします」」」

　おばあちゃんとおじいちゃんがニコニコ笑顔えがおで迎むかえてくれた。

「すみません、娘むすめともどもお世話せわになります」
「なぁに、ハルカちゃんのお父とうさんならもう親戚しんせきみたいなものだよぉ」
「そうですね、よろしくお願ねがいします」
「ご丁寧ていねいにどうもぉ」
「ララちゃんだっけぇ、外国人がいこくじんさんは金髪きんぱつに青あおい目め、すごい美人びじんだぁ。よくきたねぇ」
「あはは、お世話せわになりますぅ」

　ララちゃんが頭あたまを下さげた後あとも、ゲンジさんとおじいちゃんとおばあさんがぺこぺこしあっている。
　こういうところはどちらも大人おとなだ。
　そっか親戚しんせきか。もう結婚けっこんするつもりでいるんだ。気きが早はやいが俺おれも考かんがえたことがあるので、なんともいえない気分きぶんだ。
　というか、なんだかなまりのある祖父母そふぼとララちゃんが会話かいわしてると妙みょうな異世界いせかい感かんがある。
　これはこれで眺ながめているぶんには興味深きょうみぶかくて面白おもしろい。
　よく冷ひえた麦茶むぎちゃとトマトを御馳走ごちそうになり、一休ひとやすみしたところで川かわへ向むかった。

　設置せっちの仕方しかたとかはゲンジさんが詳くわしいので助たすかった。協力きょうりょくしてテントを張はる。
　二人ふたりで一ひとつなのでゲンジさんとハルカ。俺おれとララちゃんになった。
　男女だんじょ別べつという手てもあったが、女子じょしだけよりはどちらのテントにも男子だんしがいたほうが安全あんぜんだろうという判断はんだんらしい。
　娘むすめはまだやらん、という意味いみかもしれないが。

　夜よるご飯はんは鉄板焼てっぱんやきで焼肉やきにくを御馳走ごちそうになる。出資しゅっしはゲンジさん。助たすかりますありがとうございます。
　川かわへ入はいるのは色々いろいろ面倒めんどうなので明日あしたということに。

「それじゃあ、ちょっと早はやいけど、おやすみなさい」
「おやすみなさい、ケート君くん」
「あ、ああ」

　ドキドキする、としか言いいようがない。
　真横まよこにおっぱいがある。
　それから半分はんぶん開ひらいたつやつやの唇くちびる。整ととのった顔かお。綺麗きれいなまつ毛げ。エルフ耳みみ。
　エルフ耳みみだけは他ほかの人ひとは体験たいけんしたことがないだろう。
　こうして見みているとたまに耳みみがぴくぴく動うごく。
　人間にんげんの中なかにも耳みみを動うごかせる人ひとはいるらしいが、エルフちゃんのははっきり動うごく。
　それからなんだか女おんなの子この甘あまい匂におい。

「んんっ、んっ、どうしました？　眠ねむれませんか？」
「あ、うん。ララちゃんは？」
「私わたしも暑苦あつくるしくて。エルフの里さとは夏なつでもそれほど暑あつくなかったので」
「そっか、思おもったより蒸むし暑あついよな」
「はい」

　なんだかララちゃんと心こころが通つうじたみたいでうれしい。
　ララちゃんが目めの前まえにいる。数すう十じゅっセンチ前まえに一緒いっしょに寝ねている。
　俺おれは緊張きんちょうしまくりんぐ。
　寝袋ねぶくろだから大丈夫だいじょうぶだけど、ララちゃんが寝返ねがえりなんてうってこっちに転ころがってきたら、俺おれはララちゃんの胸むねにぎゅっと押おしつぶされてしまう。

「少すこし話はなしましょうかぁ」
「うん」
「ふふふ、なんだかテントだと一緒いっしょに冒険者ぼうけんしゃをしているみたいですねぇ」
「そうだね」
「私わたしが前衛ぜんえいで攻撃こうげき、ケート君くんが後衛こうえいで補助ほじょと支援しえんでしょうか」
「逆ぎゃくじゃないの？」
「あ、そうなんですか。ケート君くんの戦闘せんとうスタイルを知しらないので」
「俺おれも戦闘せんとうしたことないから分わからないけど」
「そうですよねぇ」
「まあ補助ほじょかもしれん、うん」

　うふふとララちゃんが微笑ほほえむ。
　携帯けいたいランプの明あかりに照てらされた顔かおはめっちゃかわいい。

「あの日ひ。私わたしとロイヤのペアは古代こだい遺跡いせきの探検たんけんをしていたんです」
「あ、うん」

　突然とつぜん、昔話むかしばなしになった。俺おれは緊張きんちょうしつつも話はなしを聞きく体勢たいせいになる。
　冷ひや汗あせが首筋くびすじを流ながれていく。

「調査ちょうさ済ずみの部屋へやだったのですが、未み発見はっけんのギミックがあったのです。私わたしたちはそれを偶然ぐうぜん発見はっけんし、そして起動きどうさせてしまいました」
「あ、それが」
「はい。転移てんいゲートでした。気きが付ついた時ときにはすでに起動きどう術式じゅつしきが完成かんせいしていて、なんとかギリギリ魔法陣まほうじんの圏外けんがいだったロイヤを残のこして私わたしはたった一人ひとり地球ちきゅうへ……こうして飛とばされてきたんです」
「そっか、そんなことが」
「春はるの終おわりごろだったので季節きせつは連動れんどうしているようですね。カレンダーもそっくりそのまま二ふたつの世界せかいは表裏一体ひょうりいったいのように似にているところが多おおいです」
「なるほど」
「いまごろは向むこうでもロイヤが調査ちょうさをしてくれていると思おもいます。もしかしたら再ふたたびゲートが起動きどうして、ロイヤも飛とばされてきたりなんて」
「そうしたらうちの居候いそうろうは二人ふたりになっちゃうね」
「うふふ、そうですね。両手りょうてに花はなでいいじゃないですか」
「ハルカも入いれると花はなで囲かこまれちゃうよ」
「もう、何人なんにん囲かこうつもりなんですかぁ、悪わるい子こですぅ」
「いやはや、面目めんぼくない」

　それからとりとめもない話はなしをいくつかしているうちにララちゃんがこっくりこっくりするようになったので携帯けいたいランプの明あかりを消けす。

「おやすみ、ララちゃん……」
「ケート君くん……好すきですぅ」
「うおぃ、って寝言ねごとか」
「みゃむにゃむ」

　翌日よくじつ、またメロンの水着みずぎを着きたララちゃんたちと透明とうめいな川かわで泳およいで遊あそんだ。
　川かわは思おもった以上いじょうに水質すいしつも綺麗きれいで最高さいこうだった。
　魚さかなもたくさん泳およいでいてララちゃんも大興奮だいこうふんでご満足まんぞくいただけたようだ。

　セミの声こえが川辺かわべに響ひびく。とても長閑のどかで空気くうきもよくて、またみんなで来きたいと思おもった。

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