◆３０．自動じどう人形にんぎょう

　夕方ゆうがたになったので、村むらまで戻もどってきた。
　タコ地帯ちたいの先さきに何なにがいるかは、まだ公開こうかい情報じょうほうにはない。

　今日きょうもトラニー君くんは優秀ゆうしゅうで全部ぜんぶ売うれたようだ。
　ペンダントの収入しゅうにゅうが大おおきい。９８，０００の売うり上あげで、残金ざんきんは２０３，１５５セシルになった。

　午後ごごの分ぶんの肉にくの加工かこうと、魔物まものの核かくについての情報じょうほうを聞ききたかったので、村長そんちょうに会あいに行いった。

「魔物まものの核かくはじゃ。カンテラの燃料ねんりょうになるのじゃ。他ほかにも魔道まどう具ぐの動力どうりょく源げんになる」
「電池でんちみたいな感かんじですね」
「電池でんちは聞きいたことがないのじゃ。あと、わしは少すこし錬金れんきん術じゅつも使つかえる。それで自動じどう人形にんぎょうのコアにすることができるのじゃ」

　自動じどう人形にんぎょう。オートマタとも言いう。マリオネットに近ちかいものだ。
　生物せいぶつ系けいであればホムンクルスと呼よばれる使役しえきされる人工じんこうのモンスターに相当そうとうする。

　私わたしはヒカリちゃんのマイケルが思おもい浮うかんだ。
　ぬいぐるみだって人形にんぎょうだ。核かくさえあれば、動うごくのではないか。

　今いまは、ゲーム内ない時間じかん十一日にち目めの午後ごご六時じ。現実げんじつ時間じかんでは三日みっか目めの午前ごぜん六時じだ。
　ちょっと早はやいけど、ヒカリちゃんにメッセージを送おくる。

『ミケ：マイケルを自動じどう人形にんぎょうにする気きない？　村長そんちょうができるって言いってるよ』
『ミケ：自動じどう人形にんぎょうはペットみたいに動うごく人形にんぎょうの事ことだよ』

　これでよし。

　そういえば、この前まえポーション作つくるときにツグミ味あじにするの忘わすれてたな。
　群生ぐんせい地ちのツグミがたくさん余あまってる。

　すぐには返事へんじが来こなかったので、村長そんちょうの家いえから撤収てっしゅうして夕食ゆうしょくを摂とる。
　夕食ゆうしょくはもちろん、そこそこの味あじのスープとパンだ。

　この日ひは返信へんしんが来こなかったのでそのまま寝ねた。

　十二日にち目め。朝あさ起おきたら、返信へんしんが来きていた。

『ヒカリ：ぜひお願ねがいします。ゲーム内ないで朝あさご飯はん食たべたら、宿やどまでいきます』

　今日きょうの朝あさご飯はんは、サンドイッチだ。
　クルミが特とくに好すきで私わたしも好このみだった。

　ヒカリちゃんが、おじいさんを連つれてやってきた。
　おじいさんはヒューマンでローブを着きている。ヒゲは生はえていないが、白髪しらがの短髪たんぱつだった。

「皆みなさま、初はじめまして。孫まごがお世話せわになっています。イナホと申もうします」

　まさかのリアルおじいちゃん登場とうじょう。
　もしかしなくても、ゲーム内ない最さい高齢こうれいと最さい年少ねんしょうなんじゃないかな。

「私わたし、マイケルが動うごくようにできると聞きいて、急いそいできたんですよ」

　ヒカリちゃんが飛とびついてきた。

「時間じかん制限せいげんで夜よる遊あそべなくなっちゃうけど、今いまきてしまいました」

　五人にんで朝あさから村長そんちょうさんの所ところへ行いく。
　村長そんちょうはすでに準備じゅんびができていたようで、朝あさからしっかりしていた。

　今回こんかいは、村長そんちょうと私わたしと補助ほじょでヒカリちゃんで、協力きょうりょくして錬金れんきん術じゅつを発動はつどうさせるという。
　私わたし担当たんとうなのは薬師くすしの経験けいけんが錬金れんきん術じゅつにプラス補正ほせいされること。
　魔法まほう使つかいなので魔力まりょくを使つかう作業さぎょうで、おそらく見みれないステータスが私わたしたちの中なかで私わたしが一番いちばん適てきしているだろうとの事ことだった。

　リハーサルを済すませる。

　マイケルを寝ねかせ、すでに背中せなかを一度いちど開ひらいて中なかに「魔物まものの核かく」を入いれてある。
　ワタではなく、プリンの欠片かけらでできているのも、丁度ちょうどいいらしい。

「では、始はじめるぞ。錬金れんきん術じゅつ『クリエイト、オートマタ』」

　村長そんちょうが開始かいし宣言せんげんをして魔法まほうを唱となえる。
　マイケルが発光はっこうしだして、村長そんちょう、私わたし、そしてヒカリちゃんがマイケルに魔力まりょくを注そそぐ。

　魔力まりょくを注そそぐというけれど、これが結構けっこう大変たいへんだった。
　リハーサルで最初さいしょ良よく分わからなくて、うまく魔力まりょくを流ながせなかった。
　村長そんちょうが、私わたしに魔力まりょくを流ながしてくれて、やっと魔力まりょくの流ながれを掴つかみ、なんとなくイメージすれば、魔力まりょくを注そそぐことができるようになった。
　ヒカリちゃんも同様どうようのはずなのに、私わたしより、簡単かんたんに制御せいぎょできるみたいだ。

　発光はっこうが収おさまると、マイケルがぴくぴくしだして、そして、自みずから立たち上あがった。

「おー。すげえー」
「新あたらしい命いのちの誕生たんじょうですわね」
「さすがワシの孫まご、天才てんさいだ」

　ギャラリーがそれぞれ感想かんそうを述のべる。

「僕ぼくはマイケルだったね。よろしくね。ヒカリちゃん。あとそのお友達ともだちの皆みな」

　マイケルがしゃべった。普通ふつうにしゃべった。男おとこの子この声こえだった。

　この辺へんは事前じぜんにキャラクターイメージをヒカリちゃんから教おそわり、それを意識いしきして魔力まりょくを注そそいだ。
　理屈りくつは不明ふめいだけど、魔力まりょくから情報じょうほうを読よみ取とって、インプリンティング、初期しょき化かが行おこなわれるんだそうだ。

「マイケルこれからもよろしくね」

　ヒカリちゃんはマイケルを抱だきしめていた。

　なお私わたしには「魔力まりょく操作そうさ：Ｌｖ１」と「錬金れんきん術じゅつ：Ｌｖ１」が増ふえていた。
　ヒカリちゃんは「魔力まりょく操作そうさ：Ｌｖ２」と「錬金れんきん術じゅつ：Ｌｖ１」「人形にんぎょう制御せいぎょ：Ｌｖ１」が増ふえたと言いっていた。
　なんか最初さいしょからＬｖが違ちがうんですけど、開発かいはつ者しゃ様さま、どうなってるんですか。

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