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[総ルビ]【書籍化コミカライズ】元貧乏エルフの錬金術調薬店(web版)

55 赤紋病が流行中だよ
●55 赤紋病〔せきもんびょう〕流行りゅうこうちゅうだよ

 特級とっきゅうポーションpotionくことは証明しょうめいされた。
 しかしユグドラシルYggdrasilっぱはもう手元てもとからすわけにはいかない。

「ボロランさん、っぱを」
「ああ、いいぞ」

 もちろん、メホリックのボロランさんにおねがいする。
 要望ようぼうはすんなりれられた。
 以前いぜんはなしたとおりだ。

 メホリック商業しょうぎょうギルドguild裏庭うらにわ移動いどうした。
 そこにはメホリックのユグドラシルYggdrasilえている。

 黙礼もくれいし、いのりを【ささ】げる。

ユグドラシルYggdrasil伝染病でんせんびょう対策たいさくポーションpotion作成さくせいのため、っぱをいただきます」

 っぱをいま必要ひつようぶんだける。
 ポーションpotionよんじゅっぽんぶんくらいだろうか。

「よし、さっそくつくりにかえります」
「ここでつくってもいいぞ?」
「いえ、使つかれた道具どうぐ場所ばしょのほうが、やりやすいので」
「そうか、では護衛ごえいける」
護衛ごえいですか?」
「そうだ」
かりました。よろしくおねがいします」

 メホリックの護衛ごえいひとなんにんわたしについてくる。
 たしかにいま、この都市とし一番いちばん重要じゅうようなものを輸送ゆそうしている。

 わたし無事ぶじもどってきて、ポーションpotion量産りょうさんいそいだ。
 その任務にんむ完了かんりょうして、いまいる患者かんじゃさんたちにもポーションpotionとどいたはずだ。

 そして翌日よくじつ
 今日きょうぶんうかがいをてに、メホリックにった。

 しかしボロランさんの発言はつげん意外いがいだった。

「すまない。ミレーユじょう。これ以上いじょう、メホリックのユグドラシルYggdrasilっぱは採取さいしゅできなくなった。本当ほんとうにすまない」

 あのボロランさんが、わたしふかあたまげる。
 にはなみだそうなほど、かなしみがえる。
 かれ本意ほんいではない、とうったえている。

「ワシはね。メホリックのナンバーnumberスリーthreeなんだ」
「あぁつまり、ワンoneツーtwoが」
「そういうことだ。うえからの命令めいれいだ。それも最高さいこうランクrank命令めいれいだった。メホリックのユグドラシルYggdrasilをホーランドの錬金術れんきんじゅつ使つかわせるわけにはいかない、そうだ」
「そんな、こと」

 そんなギルドguild派閥はばつがどうとか、っている場合ばあいではないはずなのに。
 まだ感染かんせん爆発ばくはつまでっていない。
 しかし患者かんじゃすう右肩みぎかたがりだった。
 このままでは『パンデミックpandemic』になってしまう。

 くすり大量たいりょうにいるはずなのに、材料ざいりょうっぱがなければ、錬金術れんきんじゅつ無力むりょくだ。

わたし聖女せいじょさまだったら、自分じぶん魔力まりょくだけで、回復かいふくできたかもしれないのに」
「そんなことをってはいけません。あなたはすでに聖女せいじょのそれに匹敵ひってきする仕事しごとをしています。錬金術れんきんじゅつとして」
「でも、このままでは」
「そうですね。さらに死人しにんます」

 わたしとボロランさんはホーランド商業しょうぎょうギルドguildかった。
 救援きゅうえん要請ようせい相談そうだんだった。
 メホリックのうえはもはや使つかものにならない。

「メイラさん、メイラさん、メイラさん」

 わたしいそいでメイラさんをす。

「どうした? ってこの状況じょうきょうでは仕方しかたないか」
「はい」

 メイラさんは真剣しんけんかおで、状況じょうきょういてくる。

「――つまり、伝染でんせんびょう治療ちりょうのためユグドラシルYggdrasilっぱがいますぐ大量たいりょう必要ひつようだと」
「そうです、そういうことです。理解りかいはやくてたすかります」
「しかしユグドラシルYggdrasil自体じたいが、そのへんえていない」
「そうなんです」
「あとは、王宮おうきゅう世界せかいじゅくらいかって、そうか『世界せかいじゅ』か」
「あっ、そうですね。そうですよ、王宮おうきゅう世界せかいじゅ!」

 わすれていた。
 王宮おうきゅう世界せかいじゅは、うちとメホリックのおやで、ユグドラシルYggdrasilのご先祖せんぞさまだった。
 あのなら、ものすごくおおきいから、放題ほうだいとはわなくても、必要ひつよう枚数まいすう確保かくほできるはず。

「では、王様おうさま直談判じかだんぱんというやつですね」
「えっ、あ、はい」
馬車ばしゃ用意よういしますよ」

 メイラさんボロランさんわたしで、王宮おうきゅう馬車ばしゃばす。
 普通ふつう手紙てがみなどをさきしてにちを調整ちょうせいして、予約よやく必要ひつようだけど、一刻いっこくあらそう。
 いまこの瞬間しゅんかんにも、ポーションpotion必要ひつようなのだ。

 馬車ばしゃ王都おうとうちばし、王宮おうきゅう門前もんぜん到着とうちゃくした。
 王宮おうきゅう門番もんばんはなしをする。

「――ということでして」
かりました。すぐ連絡れんらくします」

 わたしたちは、王様おうさまうことができそうだった。
 さて王様おうさまはどんなひとなのか。
 頑固がんこじじいで「ゆるさん、ユグドラシルYggdrasilっぱをることはできん」とっぱねられたらどうしよう。

 なかれてもらい、待合室まちあいしつとおされた。

 おちゃてくるけど、そんなものをのんびりんでいる雰囲気ふんいきではない。
 ずずずっ。

「あっ、このおちゃ、おいしい」
「ふむ。これは?」
「これはわたしたちホーランドのあたらしく仕入しいれた東方とうほうさい高級こうきゅう紅茶こうちゃですね」

 なるほど。
 ちょっとボロランさんがしぶかおをする。ライバルrival意識いしきか。
 王宮おうきゅうでの接待せったいようのおちゃ、ホーランドのち。
 っていまけをきそっている場合ばあいじゃないのに。

いまは、そういうのなしでおねがいします」
「ああ」
「すまん」

 ふたりとも理解りかいはしてくれた。

 待合室まちあいしつ執事しつじはいってくる。

「おきゃくさま。王様おうさまがおいになるそうです」

 やった、希望きぼうつながった。
 さて、最後さいご頑固がんこじじいでないことにかっている。

 いのるように謁見えっけん移動いどうした。

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