●５３ 錬金れんきん炉ろで鏡かがみだよ

　賞金しょうきんも貰もらってお金かねも貯たまって、発注はっちゅうしていた錬金れんきん炉ろが出来上できあがった。

「見みて見みて錬金れんきん炉ろだよ」
「おおぉお」

　シャロちゃんも関心かんしんがあるみたいで、興味深きょうみぶかく見みていた。
　購入こうにゅうしたのは携帯けいたい用よう錬金れんきん炉ろだ。炉ろの中なかでは一番いちばん小ちいさい。だから作つくれるもののサイズsizeも大おおきくはないんだけど、なんとか実用じつようの範囲はんい内ないだ。

　大おおきければ大剣たいけんとかハルバードhalberdとかも作つくれる。

「そしてお金かねにモノを言いわせて銀ぎんを買かい集あつめました」
「おぉおぉ」

　銀貨ぎんかでおなじみの銀ぎんだけど、銀貨ぎんかは実じつは含有がんゆう量りょうが少すくなくて、それで安価あんかになっているという事情じじょうがある。
　ここにある銀ぎんは高こう純度じゅんどの値段ねだんが高たかいやつだ。

　錬金れんきん炉ろは錬金れんきん釜がまとは違ちがう。錬金れんきん釜がまは主おもに液体えきたいの水みずっぽいものを扱あつかうことが多おおい。それに対たいして錬金れんきん炉ろは液体えきたいの金属きんぞくを扱あつかう。高温こうおんに耐たえるようにできている。

「ふふふ、ではさっそく」

　炉ろに銀ぎんを投入とうにゅうして、魔石ませきも入いれて温度おんどを上あげるためのエネルギー[energy]にする。
　魔力まりょくを少すこし使つかって制御せいぎょしながら温度おんどを上あげていく。

　そうして型かたに入いれてできたのが、綺麗きれいな平面へいめんをしている銀ぎんの円盤えんばん。
　裏側うらがわは花はなびら模様もようになっている。
　表側おもてがわはただの銀ぎん。真まっ平たいらだ。これだけ平たいらにするのはかなりの技術ぎじゅつが必要ひつようなのだ。えっへん。

「すごいです、すごい」
「えへへ」

　私わたしもシャロちゃんに褒ほめられるとちょっとうれしい。
　こうして最さい高級こうきゅう品質ひんしつの、銀ぎんの鏡かがみができた。
　普通ふつうの鍛冶かじではここまでの平面へいめんはできなくて、錬金術れんきんじゅつが優勢ゆうせいを誇ほこっている。
　そして、これは非常ひじょうに技術ぎじゅつが必要ひつようなので、値段ねだんが高たかい。



　完成かんせいしたので、午前ごぜん中ちゅうが終おわるちょっと前まえにメイラさんに見みせに行いく。

「どうもこんにちは」
「こんにちは。今日きょうは何なにを見みせてくれるの？」
「えっとですね。銀ぎんの鏡かがみです」

　炉ろは一度いちど温度おんどを上あげると、連続れんぞくして作つくったほうが燃費ねんぴがいいので、十じゅっ個こぐらい作つくってきた。

「銀ぎんの鏡かがみ……」
「はいどうぞ」
「ええ、すごくよく見みえるわね」
「でしょう、自信じしん作さくなんです」
「ポーションpotionが専門せんもんなのかと思おもってたけど、そういえば魔法まほう袋ぶくろとかも作つくっていたっけ」
「そうですよ」

　メイラさんは鏡かがみを見みて、自分じぶんの顔かおをじっくり観察かんさつしている。
　次つぎにはひっくり返かえして裏うらの模様もようとかも見みていた。

「なるほど。裏うらも可愛かわいいじゃない」
「ですよね」

　この裏うらの花はなびらの型かたは、実家じっかで作つくって持もってきたものだ。
　金属きんぞく用ようの鋳型【いがた】は作つくるのにも結構けっこう値段ねだんがする。
　ちょっとやそっとで溶とけないように鉄てつとミスリルMithrilの合金ごうきん製せいだ。

「ただ、ちょっと小ちいさいわね」
「そうなんですよね。でも小ちいさいほうが持もち運はこびには便利べんりで」
「そういえばそうね。家いえで使つかうだけでなくて、持もって歩あるくという発想はっそうが無なかったわ」
「まあ、そうかもしれません」
「鏡かがみは高たかいからね」

　そうなのだ。鏡かがみは高たかいのが常識じょうしきだから、朝あさお化粧けしょうとかするときに使つかうだけで、家いえにしまってあることが多おおい。
　でも、これなら持もち運はこびも便利べんりだから、そうしてほしい。

「小ちいさいほうが値段ねだんも抑おさえられて、それでこれだけ綺麗きれいに見みえる鏡かがみはなかなかないですよね？」
「そうね。王都おうと中じゅう探さがしても、無ないね」
「ですよね、どうです？」
「いいじゃない」

　メイラさんのお墨すみ付つきをもらった。
　まずは半数はんすうをメイラさんに納おさめて売うってもらう。
　もう半分はんぶんはうちの店みせでせこせこ売うることになった。



　お店みせで実際じっさいに売うってみる。

「すごい、この鏡かがみ、真まっ平たいら」
「おお、こんな綺麗きれいな鏡かがみは初はじめて見みるな」
「お値段ねだんも小ちいさいからか、そこまで高たかくないわ」

　お客きゃくさんにも上々じょうじょうの評判ひょうばんだった。
　高たかいけれど、女性じょせいには人気にんきで、売うれていく。
　初日しょにちに置おいたのは五ご個こだったんだけど、すぐに売うれてしまった。

　次つぎの日ひは倍ばいにしてみたけど、やっぱり売うれてしまった。そうしてかなりの数かずの鏡かがみが売うれた。
　儲もうかった。儲もうかった。

　こうしてお店みせの定番ていばん商品しょうひんに銀ぎんの手鏡てかがみ、ポケットpocketミラーmirrorが増ふえたのだった。

　シャロちゃんとマリーちゃん、それからメイラさんも欲ほしがったので、プレゼントpresentした。
　みんなよろこんでくれて、錬金術れんきんじゅつ冥利【みょうり】に尽つきるというものですよ。
　持もってきた手鏡てかがみが三さん枚まいあるんだけど先さきにあげればよかったね。

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