●４６ 夏なつ祭まつりだよ

　八月はちがつの第だい二に日曜日にちようび。今日きょうはお祭まつりなんだよ。
　王都おうとでの主催しゅさいは国王こくおうだけど、一応いちおうルーセント教きょうのお祭まつりなんだ。
　要ようするにルーセント教きょうが国教こっきょうになっていて、宗教しゅうきょうにも国くにの影響えいきょうがあるんだ。
　世界せかい的てきにも各地かくちで大小だいしょうのお祭まつりが開ひらかれるんだそうだよ。

　お祭まつりの名前なまえは聖せい　▼ヘクトリーナデーdayといって、聖せいヘクトリーナ様さまが聖人せいじんに認定にんていされた日ひなんだって。
　三さん百びゃく年ねんくらい前まえ、ただの田舎いなかの町まち娘むすめだったヘクトリーナ様さまは天啓てんけいを受うけ、聖せい魔法まほうに目覚めざめたそうだ。そして人々ひとびとを癒いやし続つづけ、教会きょうかいに所属しょぞくし、町まちから領都りょうと、そして王都おうとへと移動いどうになり、ついに王様おうさままでもお世話せわになった。
　その見返みかえりに、生いきているうちに、聖人せいじんの称号しょうごうを教会きょうかいから与あたえられたのが、八月はちがつの第だい二に日曜日にちようびなんだってさ。

　なんでも聖せいヘクトリーナ様さまは大層たいそうな美少女びしょうじょで、毎日まいにちのように告白こくはくされていたとか。
　それにあやかり、愛あいの告白こくはくをするといい日びとされてるんだよ。きゃあ。

　うーん。今いまの所ところ、男おとこの人ひとには、特とくに興味きょうみはないかな。
　この前まえもイケメンに騙【だま】されたばかりだし。
　顔かおだけじゃだめだよね。もっと経済けいざい力りょくとか、いろいろ理解りかいしてくれる優やさしい人ひとじゃないと。

　それともうひとつ特徴とくちょうがあって、地域ちいきにもよるんだけど、お魚さかなを食たべる日ひなんだよ。
　お魚さかながどうしても手てに入はいらない地域ちいきは、お肉にくの日ひみたいだけど。

　実家じっかの田舎いなか村むらでもやっぱりお魚さかなの日ひで、普段ふだんあんまり食たべない川かわ魚ざかな、あとは干物ひものの海うみの魚さかなが運はこばれてくるんだよ。

「お魚さかなの日ひだね、どうしよっか」
「お魚さかなもなんでも好すきですよ」
「さすが食くいしん坊ぼうのマリーちゃん」
「えへへ」
「シャロちゃんは？」
「私わたしはいつもは　▼イカリナですね」

　イカリナは湖みずうみで取とれる小型こがたの魚さかなでとっても美味おいしい。そのぶんちょっとお値段ねだん高たかめだ。
　この辺へんではお魚さかなの日ひといえば、イカリナなんだそうだ。もちろん富裕ふゆう層そうの話はなしだと思おもう。

「よし、決きめた。イカリナにしよう。マリーちゃん買かってきて」
「了解りょうかいしました」

　マリーちゃんしくよろ。
　あ、日曜日にちようびで普通ふつうのお店みせはやってないけど、今日きょうはお祭まつりだから特別とくべつにやっている店みせが多おおいんだ。
　なおうちはお休やすみです。

「シャロちゃんは錬金術れんきんじゅつの練習れんしゅうだあああ」
「え、あ、はい」
「下級かきゅう、中級ちゅうきゅうと出来できたからね、上級じょうきゅうは高たかいから飛とばして、特級とっきゅうの訓練くんれんしてもらおうかね」
「は、はい」

　訓練くんれんと言いってもポーションpotionを作つくるとかではない。魔力まりょくを練ねる練習れんしゅうだ。
　こう両手りょうてをかざして魔力まりょくを手てに循環じゅんかんさせる。もっともっとだ。特級とっきゅうの込こめる魔力まりょくはそんなもんじゃない。いっぱい魔力まりょく使つかう練習れんしゅうしないと、出来できないよ。

「ねーるねるねる、ねるねるね、はいっ」
「えっと、ねーるねるねる、ねるねるね」
「いいよいいよ、もう一回いっかい」
「ねーるねるねる、ねるねるね」
「そうだよ、もっとあと十回じゅっかい」
「ねーるねるねる、ねるねるね……」

　はあ、けっこう魔力まりょくを練ねったね。頑張がんばった、頑張がんばった。集中しゅうちゅう力りょくいるから大変たいへんだよね。
　はあっと手てを放はなすと、あれだけ集あつまっていた魔力まりょくもどんどん飛とんで行いって霧散むさんしてしまう。不思議ふしぎな光景こうけいだ。

　恋人こいびとたちが告白こくはくする日ひだからと、お外そとでデートdateしたり、日曜にちようだけど特別とくべつにやってるレストランrestaurantで食事しょくじしたり、と甘あまい時間じかんを過すごすみたいだけど、我々われわれには関係かんけいないのだ。のだあぁあ。

　子供こどもたちにとっては、この日ひはというと、お魚さかなクッキーcookieという魚さかなの形かたちのクッキーcookieを貰もらえる日ひということになっている。
　ただし、お店みせもやっていないので、親おやから貰もらえる子こもいるというだけだ。
　もちろん貧困ひんこん街がいとかではこういう風習ふうしゅうもないと思おもう。

　明日あした朝あさにお魚さかなクッキーcookieを作つくって持もっていこう。一いち日にち遅おくれだけどまあ許ゆるしてもらおう。

　うちではマリーちゃんが帰かえってきて、イカリナを素す揚あげにした。

「いただきます」
「「いただきます」」

　さっそくイカリナを食たべる。

「ん、美味おいしい。塩加減しおかげんもちょうどいい」
「あ、美味おいしいですね」
「でしょ、美味おいしいですよこれ」

　みんなでイカリナを食たべた。
　知しっている魚さかなでいうとワカサギみたいな感かんじだね。小ちいさいから骨ほねまで食たべられる。サクッとしてるし、お魚さかなの旨味うまみもある。
　美味おいしかったです。

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