●３４ お祓【はら】いとペンダントpendantだよ

　聖せいラファリエル神殿しんでんは白亜はくあの巨塔きょとうという感かんじ。
　石いしというかコンクリートconcreteでできていて、丈夫じょうぶそうだった。

　観光かんこう地ちと化かしているといっても、来くるのはみんな信者しんじゃさんだから、すごく静しずかだ。

「お邪魔じゃまします」

　小ちいさい声こえで言いって、中なかに入はいる。
　礼拝れいはい堂どうかな。中なかは天井てんじょうが高たかい建物たてものになっていて、上うえのほうには彫刻ちょうこくとかが飾かざってある。
　一番いちばん奥おくの突つき当あたりには、神父しんぷさんの壇だんがあって、その向むこうに聖印せいいんと一いち枚まいの絵えが飾かざられている。
　一番いちばん奥おくの右側みぎがわの部屋へやに入はいる。

　案内あんないに従したがって来きたこのお部屋へやは、お買かい物ものをする場所ばしょらしい。

「銀ぎんのペンダントpendant、銀貨ぎんか十じゅう枚まい」

　まあ銀ぎんだから相応そうおうの銀貨ぎんかは必要ひつようだろうな、という代物しろものだった。

「じゃあ、このペンダントpendant三みっつください」
「あ、買かってくれるんですね。ありがとうございます」
「ありがとうございます」

　マリーちゃんとシャロちゃんにも一ひとつずつ渡わたすことにした。
　これは必要ひつよう経費けいひだ。

　このペンダントpendantは、お祓はらいのペンダントpendant。
　悪霊あくりょうや呪のろいから守まもってくれるとされるものだ。

　私わたしは錬金術れんきんじゅつ師しだから神様かみさまとかそこまで信奉しんぽうしてはいないんだけど、呪のろいやお祓はらいがこの世よに存在そんざいしていることは、疑うたがう余地よちがない。
　ただ神様かみさまが本当ほんとうにいるかどうかは、見みたことがないから、信用しんようならないだけで。
　ということで、こういう解呪かいじゅ系けいのアイテムitemは、錬金術れんきんじゅつで自作じさくしてもいいけど、思おもったよりも安やすくて手てごろな神殿しんでんで買かうといいということは、把握はあくしている。
　ある意味いみ、商売敵しょうばいがたきだけど、お互たがい利用りようし合あおうね。そのほうが絶対ぜったい楽たのしいよ。

　三さん人にんでペンダントpendantを受うけ取とる。
　神殿しんでんのお姉ねえさんにお祈いのりをしてもらう。

「神かみに祈いのりを……」

　このお祈いのりが重要じゅうようなのだ。宗教しゅうきょう儀式ぎしきも侮あなどれない。

「アンナ、メハイヤ、トラクリス、インゲム、ムハランジャ！！」

　まったく意味いみは分わからないんだけど、古代こだい語ごだろうか。呪文じゅもんを唱となえて必死ひっしにお祈いのりをしてくれる巫女みこさまを神妙しんみょうな顔かおで見みる。
　自分じぶんも目めをつぶって、お祈いのりをする。

『呪のろいとかになりませんように』

　商売敵しょうばいがたきそのものも怖こわいけど、彼かれらによる呪のろいはもっと怖こわい。

「はい。神様かみさまはいつでもあなたたちを見守みまもってくれていますよ」
「「「ありがとうございます」」」

　神かみと巫女みこさんに感謝かんしゃを捧ささげて、部屋へやを戻もどる。

　大だい聖堂せいどうの礼拝れいはい堂どうでもう一度いちど、神かみに感謝かんしゃをする。

「神かみに祈いのりを……」

　三さん人にんで神殿しんでんを後あとにする。

「はあ、緊張きんちょうしちゃいました」

　マリーちゃんが緊張きんちょうから解放かいほうされてさわやかな笑顔えがおを向むけてくる。

「神かみさまは私わたしたちを導みちびいてくれるでしょうか」

　まだ神妙しんみょうな顔かおなのがシャロちゃんだった。
　シャロちゃんちょっとそういうところあるよね。なんというかお嬢じょう様さまだから神様かみさまとか行儀ぎょうぎ作法さほうとか詳くわしくて、ちょっとうるさいの。

「二人ふたりとも、このペンダントpendantはいつも持もち歩あるいて、肌身はだみ離はなさずお願ねがいします」
「先生せんせい！」
「はい、シャロちゃん」
「肌身はだみ離はなさずってことはお風呂ふろとかでもですか」
「もちろんですよ」
「きゃっきゃ。そうなんだ。なんだか三さん人にんの絆きずなみたいで、恥はずかしいですね」
「茶化ちゃかさないでください、マリーちゃん」
「ごめーん」

　マリーちゃんはあんまり神かみさま信しんじてなさそう。

「でも呪のろいは本当ほんとうにあるから、気きを付つけようね」
「「はーい」」

　神殿しんでん観光かんこうになっちゃったけど、まあいいか。
　こちらには、それほど中級ちゅうきゅうポーションpotionの影響えいきょうとか来きていないみたいで安心あんしんだ。
　取とり付つけ騒さわぎみたいになったら困こまるなと思おもっていたので。

　いやあ、どこ見みてもお店みせがやっていない。
　ハシユリ村むらではそうでもなかったんだけどね。さすが王都おうと。宗教しゅうきょうがしっかり根付ねづいている。
　ルーセント教きょうでは、日曜日にちようびはお休やすみの日ひに指定していされていて、半なかば強制きょうせい的てきにお休やすみの日ひなのだ。
　村むらでは忙いそがしいときとか、けっこう働はたらいている人ひともいたんだけど、王都おうとでは全然ぜんぜん見みない。
　もちろん神殿しんでんに行いく日ひでもあるので、神殿しんでん関連かんれんやあとお医者いしゃさんはやっているんだけど、他ほかはどこのお店みせもまったくやっていない。
　人ひとはいないわけではないけど、働はたらかない日ひなので、日光浴にっこうよくしてのんびりしていたりする。

　ご飯はんも外そとで食たべられないので、ちょっと面倒めんどうだなと信仰しんこう心しんがちょっと弱よわい私わたしなんかは正直しょうじき思おもうんだけど、しょうがないよね。

「あーあ。日曜日にちようびにやってる美味おいしいお昼ひるご飯はんのお店みせとかないかなぁ」
「ちょっと。ミレーユさん。そんな罰当ばちあたりなこと言いわないでください」
「でも、そう思おもわない？　ね、マリーちゃん」
「は、はいっ、ちょっと思おもいます」
「もうマリーちゃんまでぇ」

　まあ私わたしたちは本気ほんきで言いってるわけではないので、おうちに帰かえって大人おとなしくご飯はんを食たべました。
　シャロちゃんのお昼ひるご飯はんは美味おいしかったです。

　普通ふつうのお食事しょくじ処どころはやってないけど、宿屋やどやは年中ねんじゅう無休むきゅうだよ。大変たいへんだね。

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