●２３ 弟子でし選抜せんばつ試験しけんだよ

「――ということで、よろしくおねがいします」
「はい。大切たいせつにお預あずかりします」

　メホリック商業しょうぎょうギルドguildのナンバーnumberスリーthree、ボロラン・ロッドギンさんが来きていた。
　簡単かんたんに説明せつめいするなら弟子でし選抜せんばつ試験しけんだった。
　メホリック内ないで揉もめに揉もめ、ついに三人さんにんまでには絞しぼられたのだけど、誰だれにするかは決きめられなかった。
　そして、その決定けってい権けんが私わたし、ミレーユに回まわって来きたのだ。

「　▼アンナ・ウィルソンです」
「　▼サマンサ・ジャクソンです」
「　▼シャーロット・マーシャルです」

　なるほど、アンナちゃんとサマンサちゃんとシャーロットちゃんね。

「では、みんな錬金れんきんの基礎きそはできてるんだよね」
「「「はいっ！」」」
「いい返事へんじだね。じゃあ低級ていきゅうポーションpotion耐久たいきゅう試験しけん、いってみよう」
「耐久たいきゅう試験しけん！？」
「そうだよ。どれくらいポーションpotion作つくり続つづけられるか見みてみたいです」
「分わかりました」
「は、はい。頑張がんばります」
「うひゃんっ。そ、そんな」

　反応はんのうは三さん者しゃ三さん様ようだった。

　アンナちゃんは普通ふつうに受うけ入いれる姿勢しせい。童顔どうがん、猫ねこ耳みみ、おっぱいぼいんの十五じゅうご歳さいだ。
　サマンサちゃんはなんとか頑張がんばるらしい。お姉ねえさん顔がおのすらっとした美人びじんさん。十四じゅうよん歳さい。
　それから戸惑とまどい気味ぎみのシャーロットちゃん。目立めだつのはピンクpink髪がみのふわふわツインテールtwin-tailの可愛かわいい感かんじの子こ。十三じゅうさん歳さい。

　どうでもいいかもしれないが、三人さんにんともボロランさんが大好だいすきなミニminiスカ[skirt]メイドmaid服ふくを着きている。
　誰だれの入いれ知恵ぢえか、言いわなくても分わかると思おもう。
　もしかして私わたしもメイドmaid服ふく好ずきだと思おもわれてしまっているかもしれない。

　さて誰だれが勝かち抜ぬくのか。

「全員ぜんいん、錬金れんきん釜がまは持もってるかな」
「はい、あります」
「持もってきています」
「実家じっかから持もってきました」
「よろしい」

　錬金れんきん釜がまをみんなで並ならべる。

「ではスタートstart」

　あ、ナイフknifeとかもいるけど、大丈夫だいじょうぶみたいだ。一応いちおう、本業ほんぎょうの端はしくれなんだろう。道具どうぐ一式いっしきは持もってきているようだ。

　みんなナイフknifeでモリス草そうを刻きざんでいく。
　うん、まあ全員ぜんいん普通ふつう。アンナちゃんはちょっと雑ざつかな、でも許容きょよう範囲はんいだ。

　あまりにも雑ざつだと困こまるけど、薬効やっこうが落おちない程度ていどに手抜てぬきをすることは、間違まちがいではない。
　そうじゃないと、ずっと錬成れんせいしていたら大変たいへんだもんね。

　錬金れんきん釜がまで一度いちどにできる容量ようりょうぐらいを刻きざんだら、錬金れんきん釜がまへ入いれてそれに水みずを注そそぐ。
　そして混まぜながら温あたためる。
　まずここで魔力まりょくをけっこう使つかう。

　それが終おわったら発光はっこうする癒いやしの力ちからを注そそぐ作業さぎょうだ。
　これもけっこう魔力まりょくを使つかうんだよね。

　ポーションpotionは意外いがいと魔力まりょく食くいだ。

　だからこそ、錬成れんせいし続つづけることができる量りょうに限界げんかいがある。
　ということで、新米しんまいにはちょうどいいぐらいの試験しけんではなかろうか。

　我わがながらいい試験しけんだと思おもうよ。錬金術れんきんじゅつ師しらしいし。

　実じつはこんなことしなくても、魔力まりょく計けいというのをギルドguildに行いったら置おいてあるので、測はかってくることができる。

「一回いっかい目め終おわりました」

　早はやかったのは、ちょっと雑ざつっぽいアンナちゃん。早はやいのは優秀ゆうしゅうな証あかしでもある。
　後あとの二人ふたりはそれからちょっとだけ遅おくれたけど、普通ふつうの範囲はんいだった。

「二回にかい目め終おわりました」

　まだアンナちゃんが若干じゃっかん早はやいけど差さはちょっと縮ちぢまっていた。

「三回さんかい目め終おわりました」

　三回さんかい目め終了しゅうりょう時点じてんでトップtopを走はしるのはシャーロットちゃん。
　けっきょくアンナちゃんは集中しゅうちゅう力りょくがもう切きれちゃったみたいで、ちょっと作業さぎょうに遅おくれが出で始はじめた。
　うん、そうなんだ。魔力まりょくを使つかうには、集中しゅうちゅう力りょくを消費しょうひしてしまう。単純たんじゅんに魔力まりょくが高たかいだけではだめだったりする。

「はいどうも。じゃあ四回よんかい目め行いってみよう」
「あの、どこまで続つづけるんでしょうか」
「えっとね、二人ふたりが脱落だつらくするまでだよ」
「ひえぇっ、は、はい。では四回よんかい目め行いきます」

　シャーロットちゃんは怯おびえつつも、四回よんかい目めを始はじめた。アンナちゃんは再度さいど気合きあいを入いれなおして頑張がんばっている。
　普通ふつうに作業さぎょうしてるのは、サマンサちゃん。ちょっと影かげが薄うすい。

　こうしてトップtopが五回ごかい目めを終おえるころに、サマンサちゃんがギブアップgive upした。

「アンナはもう少すこし、頑張がんばれます」
「シャーロットは、はい。まだ大丈夫だいじょうぶです」

　両者りょうしゃともにまだいけそうだ。大変たいへんだから長ながい戦たたかいにならないといいけど。
　でも長ながい戦たたかいになるほうが、錬金術れんきんじゅつ師しの腕うでがいいということになる。

「八回はっかい目めできました」

　淡々たんたんと報告ほうこくしたのは、結局けっきょくシャーロットちゃんだった。
　序盤じょばんから早はやかったけど、そのペースpaceを保たもち続つづけて、集中しゅうちゅう力りょくも続つづいていた。

「八回はっかい目めできました、もう、げふ。無理むりです」

　ギブアップgive upしたのは遅おくれて八回はっかい目めをこなしたアンナちゃんだ。
　この戦たたかいを勝利しょうりしたのはシャーロットちゃんだった。
　彼女かのじょは普通ふつうに九回きゅうかい目めを作つくっている。

「九回きゅうかい目めできました」

　そのまま完成かんせいさせた。

「はい、終了しゅうりょうです。勝者しょうしゃ、シャーロットちゃんです」

　うん。この勝負しょうぶ、実じつは早はやさ勝負しょうぶではないのだ。どれだけ時間じかん内ないにできるか、という勝負しょうぶだったりする。
　ペースpaceを乱みだされて、波なみがあったアンナちゃんは実力じつりょくを発揮はっきできていないかもしれない。
　しかし錬金術れんきんじゅつ師しには、そういういざというときの冷静れいせいさとか『淡々たんたんとこなす』という力ちからはとても重要じゅうようなのだ。

「出来できとかもチェックcheckしたけど、シャーロットちゃんは安定あんていしてたんだよ」
「はい、ありがとうございます」
「そういうの全部ぜんぶひっくるめて見みても、やっぱりシャーロットちゃんを弟子でしにしたいと思おもいます」

　ぱちぱちぱち。

　健闘けんとうをたたえ合あう。みんな仲良なかよくできてえらいね。妬ねたみみたいなのもありそうなのに、いい笑顔えがおだった。

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