●１１ ホーランド商業しょうぎょうギルドguildだよ

　南みなみ大通おおどおりをまっすぐ行いって、途中とちゅうにある広場ひろば、南みなみ中央ちゅうおう広場ひろばで立たち止どまる。
　確たしかこの真正面ましょうめんにあるはずだけど、と見回みまわしてみたら、ホーランドと看板かんばんが出でている新あたらしい建物たてものがあった。

　石組いしぐみで二階にかい建だてだ。そして屋根やねの上うえに草くさが生はえている。よく見みると全部ぜんぶ薬草やくそうだ。

「すごいね」
「きゅっきゅっ」

　ポムも薬草やくそうには興味きょうみがありそうだ。上うえを眺ながめていた。

「よし、頑張がんばるぞい。いざ、まいりませ。ホーランド商業しょうぎょうギルドguildへ」
「きゅきゅっきゅ」

　ポムまで気合きあい十分じゅうぶんのようだ。
　正面しょうめん入いり口ぐちの前まえまで行いき、外そとで立たっている御用聞ごようききの人ひとを見上みあげる。

「あのぅ、す、すみません……」
「なんだいお嬢じょうさん？　お使つかいかい？」
「いえ、メイラ・ホーランドさんにお話はなしを伺うかがいたくて、私わたしはえっと、ミレーユ・バリスタットで、ですぅ」
「ああぁ、あなたが。錬金術れんきんじゅつ師しの。伺うかがっております。アポ[appo-イントintment]はありますか？」
「いえ、そっか予約よやくが必要ひつようなんですね」
「はい。ですが予約よやくを取とるために予約よやくが必要ひつようだと困こまってしまいますから、空あき時間じかんは大丈夫だいじょうぶでございますよ。今いま、確認かくにんしてまいりましょう」

　店番みせばんのお兄にいさんは笑顔えがおで中なかに確認かくにんしてくれる。
　すぐにメイラさんが飛とんできた。

「やあやあ、こんにちはミレーユちゃん。まさか今日きょう中じゅうに会あいに来きてくれるとは、私わたしは好すかれているのかな」
「あえ、あの、早はやいほうがいいかなって思おもって。ました」
「そんなに緊張きんちょうしなくても取とって食たべたりしないから、大丈夫だいじょうぶだよ」
「はいっ」

　中なかに案内あんないしてくれた。
　商業しょうぎょうギルドguildの正面しょうめんは色々いろいろな商品しょうひんが置おかれていた。ここはただの商業しょうぎょうギルドguildではなく、ホーランド商会しょうかいを兼かねているらしい。
　奥おくに入はいっていき、階段かいだんを上のぼり、二階にかいの応接室おうせつしつに到着とうちゃくした。
　高たかそうな絨毯【じゅうたん】。調度品ちょうどひん。よく分わからない壁かべの絵え。
　テーブルtableを挟はさんで豪華ごうかなふわふわソファーsofaに座すわる。

「ちょっと待まっててね。今いま、東国産とうごくさんの紅茶こうちゃというものを出だすから」
「は、はいっひっ」

　ああ、ひって言いっちゃった。

　あ、め、めめ、メイドmaidさんだ。初はじめて見みるけど、なんかふりふりの可愛かわいい服ふくにエプロンapronドレスdressだった。
　大おおきなおっぱいを強調きょうちょうするみたいな変かわった服ふくを着きている。
　手てにはトレイtrayの上うえにカップcupとソーサーsaucer、ティーポットtea potを持もってきている。

「きゅっきゅっ」

　ポムが反応はんのうしている。メイドmaidさんが好すきなのかな。
　私わたし、ポム、そしてメイラさんの前まえにカップcupを置おくとポットpotから紅茶こうちゃを注そそいで回まわる。
　紅茶こうちゃというものからすごくいい匂においが部屋へやに漂ただよっている。

「紅茶こうちゃは初はじめて？　お砂糖さとうとミルクmilkがあるからお好このみでどうぞ。まずはそのまま飲のんでみてもいいと思おもうわ。あ、熱あついから気きをつけて」
「ひゃい」

　少すこし冷さめるまで、待まとう。別べつに猫ねこ舌じたじゃないけど、湯気ゆげが立たってるし、熱あつそうだ。
　メイラさんはカップcupを持もち上あげて匂においだけ嗅かいでいたので、真似まねをしてみる。

　ああ、紅茶こうちゃ、いい匂におい。

　これはポーションpotionにも応用おうようが利ききそうだ。例たとえば入浴剤にゅうよくざいにしたり、芳香剤ほうこうざいなんかにしてもいいと思おもう。

「この紅茶こうちゃの商品しょうひんの応用おうようがなかなか難儀なんぎしていてね」
「ははぁ」
「こうして飲のむだけというのも芸げいがないだろう」
「そうですね」
「何なにかアイディアideaはあるかい？」
「はい。お風呂おろに入いれる。芳香剤ほうこうざいにする。それからパン[bread]に練ねり込こんだりするといいかなって、思おもいます」
「なるほど。お風呂ふろはあまり需要じゅようがないが貴族きぞく連中れんちゅうは好すきそうだ。いいねパン[bread]。今度こんど作つくらせてみよう」
「あ、どうも」

　紅茶こうちゃの話はなしは一応いちおう、雑談ざつだんだったようで本題ほんだいに入はいった。

　ギルドguildへの加入かにゅうへの特約とくやくは、前まえ話はなした通とおり、本来ほんらい必要ひつような前金まえきん一切いっさいなし、家賃やちん後払あとばらいでお店みせを貸かしてくれる。

「それでお願ねがいなんですけど、できれば王都おうと内ないで持もってきた種たねとかで薬草やくそう園えんをしたいんです」
「ほほう、それで何なんという薬草やくそうかな」

　持もってきた薬草やくそうの名前なまえを言いっていく。

「んー。あはは。知しらない薬草やくそうばかりだな。まいったまいった。これでも錬金術れんきんじゅつ師し並なみに関連かんれん商品しょうひんには詳くわしい自信じしんがあったのにお手上てあげだよ、まったく」
「なんか、すみません」
「何なにを謝あやまっているんだい。ミレーユちゃんは何なにも悪わるくないではないか」
「そ、そうですね」
「謙遜けんそんなのは美徳びとくではあるけど、商談しょうだんでは負まけを認みとめたことになるから、不要ふようなときは謝あやまらないほうがいいよ」
「そうなんですね」
「ああ。それで薬草やくそう園えんか前向まえむきに探さがしてみるよ」
「ここの上うえにもありますよね」
「ああ、城壁じょうへき内ないは狭せまいといっても畑はたけくらいはあるんだけど、まあ親父おやじの趣味しゅみだね、ここの上うえのは」
「なるほど。見みせてもらってもいいですか？」
「もちろん」

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