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[総ルビ]【書籍化コミカライズ】元貧乏エルフの錬金術調薬店(web版)

1 めざせ王都だよ
●1 めざせ王都おうとだよ

低級ていきゅうポーションpotionください」
「こっちもポーションpotionくれ」

 王都おうとにきて初日しょにち薬草やくそうい、露店ろてん低級ていきゅうポーションpotion実演じつえん作成さくせいして販売はんばいした。
 きはおもった以上いじょう大盛況だいせいきょうだった。


 ――こんなにれるなんて。王都おうと最高さいこう


 しかし露店ろてんポーションpotionっている錬金術れんきんじゅつほかにいない。
 普通ふつうはおみせかまえているものらしい。
 ほか露店ろてんてみたけど、転売てんばい中古ちゅうことかの低級ていきゅうポーションpotion品質ひんしつはどれもわたしのものよりあきらかにひくかった。さっとかるほどだったのだ。
 いてしまった。王都おうと錬金術れんきんじゅつレベルlevelは、おもった以上いじょうひくいらしい。
 これは、わたしがなんとかするしか、ないんじゃ、ないのかな。
 活躍かつやくできるのはうれしいけど、おもったより、これは大変たいへんだぞ……。



  ◇

 今日きょう ハシユリむらともおわかれだ。
 わたしはずっとあこがれだった王都おうとについに旅立たびだつ。相棒あいぼうスライムslime ポムだけだ。

「おにいちゃん、さようなら、ばいばい」
「おお、達者たっしゃでな!  ミレーユ、ポム」
「きゅきゅぅ」

 ハシユリむら田舎いなか田舎いなか王国おうこく秘境ひきょうにして、最奥さいおうともわれる辺境へんきょう
 両親りょうしんさき他界たかいしており、わたしとおにいちゃんはずっとおばあちゃんにそだてられる。
 おばあちゃんはむら唯一ゆいいつ錬金術れんきんじゅつ生計せいけいてていた。
 そのおばあちゃんも、去年きょねんくなった。
 いまはおにいちゃんがいえいで錬金術れんきんじゅつをしている。そうなると問題もんだいわたしだ。むら二人ふたり錬金術れんきんじゅつ必要ひつようないのだ。
 おにいちゃんは許嫁いいなずけがいて、そのうち結婚けっこんしたら、わたし完全かんぜんようなしだった。

 それならうわさく、おんなならだれでもあこがれる、田舎いなかむらでは伝説でんせつ王都おうとってみたい。

 ということで、わたしいえることになった。

 相棒あいぼうのポムはむかしあるやま薬草やくそう採取さいしゅをしていたところ、さき薬草やくそう群生地ぐんせいちでむしゃむしゃしていたヤツで、仲良なかよくなってわたしあとをついてきて以来いらい、ずっと一緒いっしょにいる。
 なんでわたしられたかはよくからない。
 もちろんポムの大好物だいこうぶつ薬草やくそうだ。それも貴重きちょうヒールheal効果こうかたか薬草やくそうばかりがだいきだった。

 べつ薬草やくそうしかべないかというと、そんなことはなく野菜やさいも、普通ふつう雑草ざっそうべる。
 そのへんこだわりは、しゃべったりしないので、よくからない。

王都おうとたのしみだねー、ポムぅ」
「きゅきゅぅ」

 つぎまちきの馬車ばしゃ一緒いっしょせてもらって、むらからていく。
 ポムは普段ふだんからぽんぽんねて、きゅぅきゅぅくだけだ。
 いますわっているわたしひざうえで、かる上下じょうげするだけで大人おとなしくしている。

 いえ貧乏びんぼうなので、ってこれるものには限界げんかいがあった。
 わたし錬金れんきん収納しゅうのうリュックサックrucksackひとつで、そとには薬効やっこうたか薬草やくそう植木鉢うえきばちをいくつもぶらげてってきている。
 このむらでは別段べつだんめずらしくもなんともない薬草やくそうだけど、んだおばあちゃんのはなしによれば、そとむらではめずらしいものがおおいんだって。
 だから、入手にゅうしゅできないかもしれないとおもって、なるべくおおくのたねといくつかの植木鉢うえきばち持参じさんしたのだ。
 これだけでも、そと世界せかいではそれなりの値段ねだんになる。ただむらではもいいところなので、っていても貧乏びんぼうちがいなかった。
 そもそもむらそとでは、それらの薬草やくそうはけっこうマイナーminorみたいで、りにしても全然ぜんぜんれないらしくて、商人しょうにんっていってくれない。そもそも薬草やくそうだとらないみたいで、ことわられた。

貧乏びんぼう生活せいかつとはおさらばするんだもんねー」
「あはは、じょうちゃん頑張がんばれよ」
「はい」

 商人しょうにんさんから激励げきれいをもらう。

 うちはむらなか細々ほそぼそポーションpotionとか魔道具まどうぐなんかをつくったりして、なんとか生活せいかつしていて貧乏びんぼうなのだ。
 色々いろいろ商品しょうひんつくれても、材料ざいりょうをこのむらまではこんでくると、その輸送ゆそう往復おうふくだいで、かなりの金額きんがくんでいってしまうので、錬金術れんきんじゅつ製品せいひん輸出入ゆしゅつにゅうみたいなこともやっていなかった。

 おにいちゃんにはわるいけど、このせまむらなか頑張がんばってもらおう。

 わたし世界せかいばたいて、王都おうと錬金術れんきんじゅつまたは薬屋くすりやをするのだ。
 それはきっと、すごくキラキラした世界せかいはなやかで、とってもすごいんだとおもうんだ。

 商人しょうにんさんの馬車ばしゃ同乗どうじょうして三日みっか、やっとまち到着とうちゃくした。はじめてのまちだ。ちいさいころ両親りょうしんたことがあるらしいけど、記憶きおくにはないんだよね。

「ありがとうございました」
「ミレーユちゃん、さようなら、よいたびを」

 おれいってなけなしのおかねはらい、立派りっぱなおのぼりさんになってやす宿やど一泊いっぱくする。
 そしてそこからは乗合のりあい馬車ばしゃいで何日なんにち何日なんにちもかかって、やっとのことで、はあ、やっとのことでですよ、王都おうと目前もくぜんまでることができた。

「すごいよポム、ポムて、あのかべ、すごい、おおきい、たかぁーい」

 わたしはついはしゃいでしまう。
 だってそこはまぎれもなく王都おうとかべで、あのなかにはくに一番いちばんおおきいまちひろがっているはずだから。
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