●7. ポテポテ
町(2)
何があってもいいように、
荷物を
全部持ってきた。ほとんどはピーテの
収納魔法の
中に
収めた。
容量限界や
魔力消費量が
不明だ。プレレの
店の
商品をテストで
色々収納してみたが、
限界が
分からなかった。
収納魔法といえど、
使える
人でも
普通はリュックサック
二つ
分程度が
限界らしい。
食料や
低品質のポーションも
数本買い
足した。
午後からさっそく
平野に
魔物狩りに
出かける。
草原は
背の
高い
草がまばらに
生えているようで、
遠くからは
魔物がいるのが
見えない。とりあえず
畑と
草原の
境目まで
進む。
「はい。臭いか音で、なんとなく分かります。まだ近くにはいません」
獣人恐るべし。
探索は
探索魔法とかなしに
感覚で
分かるという。
目もいいんだよな。ずるいよね。
草原に
入ってまず
見つけたのは、アイアンマイマイという
鉄カタツムリだ。
六十センチほどの
大きさで
殻が
黒い。
「割と美味しいです。一人でも大丈夫だと思います」
とりあえず
後ろを
向いているカタツムリの
貝殻部分に
剣をぶつけてみたが、はじき
返された。
「貝殻は鉄でできてるので硬いです。頭を狙いましょう」
俺は
回り
込んで、
頭のある
方を
狙う。
カタツムリは
触覚を
触手のように
伸ばしてきて、
絡めとろうとしてくる。エイヤーと
掛け
声をかけて、
触手を
横に
斬りつける。あっさりと
切断できた。
「ピギャー」と
口を
開けてカタツムリが
鳴いて、
威圧してくる。
口は
前歯は
平らだが、
隅に
牙が
生えている。
触手は
二本付いているので
残りの
一本で、こっちを
狙ってくる。
鞭のように
横から
伸びてきたところを
迎え
撃って、
剣を
縦に
振って
触手を
切断する。
攻撃手段を
失ったカタツムリの
首を
横なぎで
斬りつけるが、
首が
半分までしか
斬れない。もう
一度、
剣を
振って
同じ
場所を
狙い、
首を
切断できた。
「相手は動きも鈍いですし、楽勝みたいですね」
「触手で掴んでむしゃむしゃします。ちなみに雑食性です。森にもたまにいました」
カタツムリは
身は
食用に、
殻は
鉄製品の
材料になるそうで
全部持って
帰る。
魔物なので
十級魔力結晶が
手に
入った。
全部ピーテの
収納に
入れた。
「収納なしだと二匹が限界ですね」
なお
収納は
真空パックを
魔法瓶に
入れたような
状態になるらしい。
熱い
物は
熱いまま、
冷たい
物は
冷たいままだが、
時間経過はするようだ。
俺たちは
次の
獲物を
探す。
「右前方、ちらっと見えました。スタンダード・グラスホッパー接近です」
「素早いので、二人で掛かりましょう」
まずピーテが
前衛になる。バッタが
跳躍して
突っ
込んできたのを
左に
避けて
剣を
一撃入れる。
長さ
一メートルほどの
巨大バッタだ。
色は
茶色。
剣が
当たったところは
背中の
真ん
中で
固い
部分らしく
少し
傷がついた
程度だ。
俺もピーテに
遅れて
剣を
足の
関節に
叩き
付ける。バッタは
真ん
中の
足が
折れたようだ。
しかしすぐに、バッタはジャンプして
後ろへ
飛んでいった。そして
後ろ
側から
俺に
向かって
飛んでくる。
俺は
回避が
間に
合わない。
左手の
木の
盾を
前面に
出して
踏ん
張る。ドンと
音がして
盾にバッタが
直撃する。バッタは
気を
失ったのか
一瞬動きが
止まる。そこをピーテが
後ろ
足に
一撃入れて、
根元から
跳ね
飛ばす。
バッタはバランスを
失い、
倒れてしまう。
ピーテと
俺は
柔らかいお
腹側を
攻撃して
仕留めた。
バッタはこの
地方では
食べないようだ。しかし、スタンダード(
標準)でこの
大きさなのか。もしかして、ジャイアント・グラスホッパーとかがいて、さらに
大きいのだろうか。
魔力結晶だけ
回収して
後は
捨て
置く。
その
後も、バッタ、バッタ、カタツムリ、バッタと
一匹ずつ
現れてやっつけた。
最後のバッタの
結晶を
回収した
直後だった。
全長八十センチほどの
赤トンボだった。でかい
虫ばっかだな。あれ、
一匹見えたと
思ったら、
二匹、
三匹、
四、
五、
六。
全部で
六匹も
飛んでいる。
ピーテは
大丈夫って
言ったけど、ちょっとやばいかな。
そのうちの
一匹が
急降下してこっちに
飛んでくる。
俺は
盾を
構えつつ
屈んで
身構える。
しかし
俺ではなく
倒したバッタの
残りを
掴んで
飛んでいった。
他のトンボも、バッタのパーツを
掴んでは
飛んでいく。
おれも
掴まれてお
空の
旅、とはならなかった。
「ところで、いままで一匹ずつしか相手にしてないけど、三匹以上出てきたらどう思う?」
あまり
考えずに
二人で
戦闘しているが、
数が
違うと
不利になるのは
目に
見えていた。やばい
状況を
経験してから
対策するより、
先に
分かっているなら
何とかするべきだろう。
俺たちは、いったん
冒険者ギルドに
戻ることにした。
結晶を
換金して、カタツムリの
殻を
引き
取ってもらう。カタツムリの
身は
肉屋が
直接引き
取ると
言われた。だから
近くにある
肉屋に
寄った。
「アイアンマイマイの身、二匹分ね。最近、身まで持って帰ってくる人があまりいなくてね。助かるよ」
二匹で
銀貨四枚になった。
長時間狩るパーティーなどは、
重い
身を
担いで
往復するより、
小さい
割に
高価な
魔力結晶のみを
集めて
回り、
単位時間あたりの
稼ぎを
良くしているという。
あと、お
肉屋と
言いつつ
新鮮な
物より、
肉・
魚の
干物を
中心に
売っているようだ。ポコジャーキーが
売っていた。カエルの
干物も
一匹だけ
置いてあった。
再び
冒険者ギルドに
戻る。
壁のパーティーメンバー
募集の
貼り
紙、といっても
紙じゃなくパピルスだが、を
順に
眺める。
どれもランクC
以上募集とか、ランク
指定なしでも
魔法使い
急募とかそういうのばかりだ。
「あたしもなかなか募集要項に合うのがないにゃ」
隣で
俺たちと
同じように、
募集の
貼り
紙を
見ていた
犬耳の
少女が、
自分に
話しかけられたと
思って
返事をした。
犬耳なのに
語尾が「にゃ」である。どうなってるんだ、
異世界。
「おっと、あたしに話し掛けたのじゃないみたいにゃ。ごめんにゃ」
なんかキラキラ
瞳を
見開いて、
俺たちというか
主に
俺を
上から
下まで
眺めてくる。
「ちなみに、どんな募集をお探しですか?」
「ほぼ新人でも受け入れてくれる、まずは一緒に近場で戦って経験が積めそうなパーティーだにゃ」
「ほうほう。ちなみに、経験はどれくらい?」
「おとっさんに沢山話を聞いたにゃ。魔物の特徴や弱点に詳しいにゃ。実践はおとっさんが休みの日にたまに連れてってくれるだけにゃ」
「はいにゃ。決めたにゃ。あたしは即断即決にゃ。よろしくお願いしますにゃ」
「ここ一か月、要望に会うパーティーに一個も会わなかったにゃ」
なかなか、
世知辛い
世の
中のようだ。しかし、
俺たちは
何故かこれから
王都に
向かって、
召喚のことを
調べたり、
帰る
方法を
探すことになっている。
その
辺で
定住してもいいんだが、
今はプレレの
家に
世話になってるからいいが、いつまでもそう
言う
訳にもいかない。
冒険者続けるにしても、ピーテも
飽きたら
村に
帰るだろうし、やっぱり
異世界で
定住するにはまだ
不安過ぎる。
「俺たちは、暫くしたら王都へ行くつもりなんだ。その後も俺はもっと遠くへ行くかもしれない」
「王都! ちょうどいいにゃ。私も一度行ってみたかったにゃ」
「じゃあ、王都までは、とりあえず一緒に行くってことでオーケー?」
「私ももちろん、それで問題ないです」
名前をまだ
聞いていなかった。
名前はソテレーティア。
通称ソティ。
十八歳。
こうして
行き
当たりばったりだが、
三人パーティーで
旅費を
貯めることになった。