●16. フクベル
迷宮(4)
迷宮探索は
十層まで
来ていた。十
層は
氷ゾーンらしく
通路も
部屋の
壁も
凍っている。
アリスが
魔法を
発動させる。
周囲が
暖かくなって
寒さを
感じなくなった。
「ありがとう、アリス。春のそよ風か。なかなかしゃれたネーミングだな」
「魔法なんでも大辞典に載っていた魔法でウサ。学院で研究も結構したウサ」
「季節の説明は馬車の旅でしてやっただろ」
やれやれ。ソティはご
飯の
話以外は
食いつきが
悪く、たまに
居眠りもしていたからな。ピーテも
感心しているようで、
内容はよく
分かっていないようだった。
話のし
甲斐のない
子たちだ。
しばらく
進むと
白い
巨大芋虫が
出てきた。
一メートルほどの
背丈で
長さは
二メートルぐらいだ。
「食べたければどうぞ。意外と美味しいらしいウサ」
食べられるかよりも、
戦闘に
有利な
情報優先にしてほしい。
白芋虫は
伸びたり
縮んだりして
前に
進む。
ソティが
正面で
俺が
横から
斬りかかる。しかし
皮が
厚いのか
弾き
返される。
「火魔法を剣の周りに発生させて、魔法で斬りつけるウサ。きっとできるウサ」
そんな、いきなり
本番で
言われても
難しい。
俺は
集中して
火が
剣の
周りを
覆うのをイメージして
魔力を
集める。
妄想は
得意だ。
頑張れ
俺のイメージ
力。
火が
出るというか、ぼやっとした
半透明の
赤い
色が
剣を
覆った。
俺は
気合を
入れて、
右手の
剣を
白芋虫の
首らへんに
縦に
斬りつける。
白芋虫は
首が
取れて
動かなくなった。
「アローだと穴は空くけど胴体だと平気な顔して生きてるウサ」
「ファイヤー・ソードとかの魔法だけの剣で斬ることは可能ウサ」
また
歩いていると、
今度は
白芋虫が
二匹現れた。
アリスが
左手に
杖を
持ち
替えて
右手に
炎の
魔力剣を
形成する。
俺はもう
一匹の
相手をするべく、
炎を
出すため
集中を
始める。
白芋虫が
俺に
向かって
糸を
飛ばしてきた。
俺はもろに
当たり
糸が
絡んだ。
ソティが
俺の
代わりに
芋虫の
相手をしてくれる。ピーテは
剣を
使い
糸を
切ってくれている。
俺としたことがかっこ
悪い
所を
見せてしまった。
結局、
一匹目の
相手を
倒したアリスがもう
一匹も
首をちょん
切ってやっつけてくれた。
おれはまだ
絡まったままだ。
しばらく
女子三人が
俺をネタに
盛り
上がっていた。
今度は
氷でできた
巨人が
現れた。
「アイス・ゴーレムでウサ。この辺りの中ボス格でウサ」
ゴーレムは
動きはゆっくりだが
二メートル
弱ある。
腕を
振り
下ろされるだけでも
脅威だ。
剣士三人で
囲んで
斬りつけるが、
腕だけでなく
蹴りも
飛んでくる。
ソティが
蹴りを
食らい
吹き
飛んだ。
ソティは
飛ばされたが
生きているようだ。
何かうめいている。
アリスがそれを
横目で
見つつ
魔力を
集中させ
魔法を
使う。
ゴーレムの
両足を
氷の
塊で
縫い
止める。
俺たちは
剣士二人で
囲んで
剣で
斬りつける。
斬ると
氷でできた
体がわずかに
削れる。
俺は
後ろ
側を
取ると、
背中を
攻撃する。
あんまり
効いていない
気がする。
そのうちアリスがソティにヒールを
使い、ソティが
攻撃に
加わる。しかし
二人が
三人になってもあまり
効いているとは
言えない。
らちが
明かないので
火魔法剣がこいつにも
有効かもしれないからダメ
元でやってみることにした。
結果は、そりゃあもう
有効だった。ゴーレムも
火の
剣で
真っ
二つになり
倒れた。
魔力結晶を
取る
作業はナイフに
火魔法剣を
使って
俺がやった。
難航したがなんとか
取り
出せた。いままで
見た
中で
一番大きくて
透明度の
高い
水色の
結晶だった。
結構高く
売れそうだ。
ところでこの
火魔法剣、
俺のイメージ
力が
低いためか
魔力効率が
悪いようで、かなり
魔力を
消費する。
長期戦は
遠慮したい。
「魔法戦士はあまりいないウサ。魔法が使えるなら魔法使いになったほうがお得だからウサ」
その
後もいくらか
敵を
倒してから
地上に
帰る。
「火魔法剣の効率が悪いんだが、どうにかならない?」
「そうウサな、もっと魔力と相性の良いミスリルなどにすればよいウサ」
冒険者ギルドで
魔力結晶を
換金する。あのアイス・ゴーレムの
結晶は
金貨五枚になった。
「アイス・ゴーレムばかり狩ればあっという間に大金が手に入るな」
うやっほー。
大金だぜ。
俺は
心の
中でこぶしを
上げる。
夢が
広がりんぐ。
「残念だがアイス・ゴーレムはごくたまにしか発生しないのウサ」
「そうさな、一月に一回程度ウサ」
俺たちは
帰り
道でポコ
肉の
串焼きを
買って
食べる。
ソティはそればっかりだな。でも
可愛いから
許しちゃう。
さらにこの
前に
盾を
買ったお
店に
寄っていく。
俺用の
剣と
余裕があれば
防具を
新調したい。いつまでもボロを
着けているのも
気になる。
店に
入ると
前回の
店員が
出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、ホクトさま。今店長をお呼びします」
すぐに
店長が
奥から
出てくる。
「魔法剣用の剣を頼みます。金貨二枚程度で」
店長が
片手剣コーナーに
行きすぐに
物を
取り
出してくれる。
「このミスリル製のスタンダード・ソードはいかがでしょう。長さも長過ぎず短過ぎず。色々な属性の魔法剣とも相性が良いです」
店長のおすすめはピンポイントを
突いてくる。しかし、
俺は
欲張りなので
他も
確認する。
「それではこのミスリル合金の剣はいかがでしょう。先ほどの物より威力は劣りますが、お買い得です。先ほどのが金貨三枚。これが金貨一枚でございます」
俺は
振ってみたり、
許可を
得て
魔力を
通してみたりする。
ミスリル
製のほうはすごく
楽に
魔力剣にでき、
魔力の
消費も
少なかった。
合金製のほうはそこまでではないが
今の
鉄の
剣よりはましという
感じだ。
女子三人にも
聞いてみる。しかしホクトの
気に
入ったもので
良いと
言われた。
あと
金貨が
二枚残っている。
「後、金貨二枚でアリス以外の防具を新しくしたい。金額はこれ以上出せない」
「承りました。そうですな、ミスリル合金製のライトプレートはいかがですかな。サイズも取り揃えております」
試着してみると、なかなかよさそうだ。
前の
物より
全体的に
動きやすい。これも
購入することにした。
ついでにピーテとソティの
剣も
新しい
鉄合金製に
新調した。
金貨五枚と
銀貨を
二十枚払ってお
店を
出る。
「せっかくの臨時収入が全部なくなってしまいましたね」
「まあしょうがないさ。武器と防具は仕事道具だからね」
ピーテが
残念がる。ここ
数日間に
普通に
稼いだ
分はほとんど
残してあるから
大丈夫だ。