●13. フクベル
迷宮(2)
今日も
朝から
迷宮探索だ。
昨日の
探索で
俺たちは
全員がギルドランクCになった。アリスは
元からCだったがまだそのままのようだ。
迷宮に
入るなりアリスが
提案してくる。
「今日は二層のポコ牧場に行ってみようウサ」
一層を
軽く
数戦して
二層にたどり
着いた。ピーテの
感覚とアリスの
正確なマッピングであまり
戦わずに
進める。
二層は
大部屋だった。
一層と
同じで
天井が
明るく、
地面に
背の
低い
草がまんべんなく
生えている。
羊が
所々でその
草を
食んでいた。
「あれが魔物ポコよ。近づくと立って襲ってくるウサ」
ポコは
羊だった。
羊のうち
半分には
湾曲した
角が
一対ついている。きっとオスなのだろう。ジャーキーとかいくつかの
料理を
食べてきたが
日本で
羊を
食べたことがなかったので
分からなかったのだ。まあ
味も
同じとは
限らないが。
普通の
羊は
群れるが、ここのポコはバラバラに
食事中だ。とりあえず
一匹だけ
離れているオスのポコに
近づく。
二本足で
立ちあがって
鳴きながら
走ってきた。ほう。
二本足で
走れるのか。
そのまま
突っ
込んできて、
俺にパンチを
食らわそうとする。とりあえず
盾で
防ぐ。
手も
蹄なので、
鈍い
音がしてぶつかった。
ポコはまるでカンガルー・ボクサーのようだった。パンチを
左右交互にお
見舞いしてくる。
俺はまだ
盾で
防いで
様子を
見る。
「弱点は足ウサ。魔法はなぜかあまり効かないウサ」
ソティが
長剣でポコの
足を
狙う。ポコは
一撃目はジャンプして
避けたが、二
撃目を
受けて
一鳴きして
倒れた。のっそり
四本足で
起き
上がったが
後ろ
足を
引きずっている。
ポコは
頭を
下げて、
角による
攻撃に
切り
替えてきた。
角の
攻撃は
衝撃がすごそうなので、
俺は
左に
避けた。
俺は
避けたので、ピーテとアリスの
方へポコが
向かった。アリスが
慌てて
杖でポコの
頭をポコポコ
殴る。
アリスは
四撃目に
力いっぱい
殴りつけた。ポコは
倒れる。そこをピーテが
首を
斬りつけて
終わらせた。
「一匹ずつなら楽ウサ。いっぱいいると囲まれて困るウサ」
俺はピーテとソティの
解体作業を
眺めながら
考える。
どうしたものだろうか。
俺はゲーム
的考えのもと
一つの
提案をした。それはまず
小石を
拾い、ポコに
当てる。
怒ったポコは
一匹でこちらに
向かってくるので、そこを
迎え
撃つという
戦法だ。
解体が
終わった。
毛、
皮、
肉、
魔力結晶、
骨などのガラを
分けてピーテが
収納する。
さっそく
実践しよう。しかし
小石が
見当たらない。
俺は
魔法で
氷を
作ってそれを
投げる
改良案を
思いついた。
さっそく
試してみる。
氷生成、
投擲。
群れだったので
俺が
狙ったのとは
違う
奴に
当たった。また
角が
付いているオスだ。
今度はソティが
正面で
相手をしている
間にピーテが
横腹に
一撃入れた。ポコは
痛がって
倒れてしまった。さらにピーテが
追い
打ちをかけて
急所を
斬り
裂いて
絶命させる。
また
氷を
生成して
投擲する。
外れた。
再度氷を
作る。これ
手が
冷たいという
欠点があるな。
とりあえず
流れ
作業のように、
十二匹を
仕留めていったん
終わる。
大量に
持ち
込んでもポコを
買い
取ってもらえない
懸念があるからだ。
二匹分のお
肉はお
城へ
持ち
帰ろう。きっとうまい
料理にしてくれる。
そのまま
草原を
横断して
次の
階層に
進んだ。ゆっくり
移動するとポコたちは
襲ってくるということはなく、
微妙に
距離を
取って
遠巻きに
見てくる。
次の
三階層はキノコの
楽園だった。
広葉樹の
森がありその
地面に
一センチから
五十センチまでのキノコが
至る
所に
生えている。
「キノコはたくさんあるウサが、どれが食べられるか私は知らないウサ」
色も
白、
黄色、
赤、
茶色などがある。
形も
傘があるもの、エリンギ
風のもの、その
他変な
形のものがある。
魔物もキノコだった。まずはブラウン・マッシュルーム。
形はシイタケ
風。
一メートル
半の
大きさ。こいつは
上下にバウンドしながら
移動してくる。
茎で
立つのは
不安定だと
思うのだがファンタジーなので
関係ないようだ。
手と
目と
口も
付いている。
「頭を叩かないでくださいウサ。胞子が飛び散るウサ」
俺は
横斬りで
胴体を
狙う。
一発で
切れてしまった。
落ちた
頭から
少し
胞子が
飛ぶ。
結晶だけ
取り
出して
後は
捨てる。
その
後も
茶キノコが
一匹、
五匹、
三匹、
二匹と
団体で
出てきたが、
剣士の
三人ですべて
斬り
捨てた。
「このフロアには他の魔物はいないのか?」
「茶色以外に上位種の白とピンクがいるウサ。ピンクはレアじゃが睡眠使いウサ」
さらに
茶キノコ
四匹を
倒した
後、
白が
二匹でピンクが
一匹が
同時に
現れた。
「ここは魔法で一撃にしよう。アリス頼んだ」
後方のアリスが
火矢の
魔法を
三つ
同時に
発射して
三匹に
命中してやっつけたようだ。
しかし
何だか
眠くなってきた。
意識を
保っていられない。おやすみなさい。
俺はやっと
目が
覚めた。
剣士三人はそろって
眠りこけてしまっていた。ピンクまじ
恐ろしい。
「半時ほどじゃウサ。そりゃもうぐうぐうとウサ。よだれまで垂らしてウサ」
「私は起きてたので一人で護衛をしていたウサ」
「皆もう眠ったまま二度と起きないかと思って心配したウサ」
アリスはちょっと
涙目になっている。
俺はよしよしと
頭を
撫でてやる。アリスは
俺にすり
寄ってきた。
周りには
放置された
茶キノコが
五匹転がっている。
眠っている
間にアリスが
一人で
倒したのだろう。
全員眠っていたら
大変なことになっていた。
アリスによると
兎人族は
魔法だけでなく
魔法耐性も
強く、
状態異常になりにくいのだそうだ。
皆でキノコの
結晶を
回収する。
「この残ったキノコの残骸とかどうなるんだろう」
「他の魔物が来て食べるという噂ウサ。でも目撃したという話は聞かないウサ」
ポコの
解体と
睡眠で
結構な
時間がかかったようなので、この
日の
探索はこれで
引きあげるようにした。
帰りは
迎えの
馬車などないので
歩いて
帰る。
途中で
中央広場を
通過する。
そこでは
一匹の
灰色の
兎人族の
男が
棒の
先が
膨らんでいるタイプのジャグリングをしていた。
周りには
俺たちしかいない。
「異国の人族のお兄さん一行、見ていってよ」
「兎人族のピエロなど珍しいと思えば、エイマンではないかウサ」
「私をご存知かな、フードのお嬢さん」
アリスが、フードを
少し
上げて
顔だけ
見せる。どうやら
知り
合いのようだ。
小声でピエロをしている
訳を
教えてくれた。エイマンは
王宮勤務で
最近きな
臭い
噂がいくつかあるようで、
公園で
情報収集をしているという。
姫様も
気を
付けるように
言われた。どんな
噂かは
話さなかった。
王宮に
戻ると、
王から
手紙が
届いていた。
内容は
以下の
通りだ。
ポテトチップスはうまかった。フライドポテトもうまかった。
今度は
王宮の
料理人に
作ってもらう。ホクトには
他の
味や
違う
料理をぜひ
教えてほしい。
やっぱり
王様は
食い
意地が
張っていた。でも
会いに
来ないで
手紙にする
所が、
忙しさを
物語っていて
切ない。
てっきり、きな
臭い
話かと
思ったが
拍子抜けだった。
俺はこの
日、サンダー・ボルトを
習得した。これで
火水氷土風の
基礎魔法を
習得したことになる。
色々な
属性をまんべんなく
使える
人は
稀らしい。でも
師匠であるアリスもちゃっかり
使えるのですごい。
ピーテは
生活魔法の
他に
湯沸かしができていたが
追加でヒールを
覚えた。
ソティは
祝福をしてもらっていないので、
生活魔法も
使えない。
他の
魔法もからきしダメだ。
「あたし魔法の才能ないにゃ。もっとカニを食べる必要があるにゃ」
ソティはなんだか
分からない
理由でカニの
催促をしていた。
明日は
王都の
神殿で
祝福をしてもらって
来ようと
思う。