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[総ルビ][中編]ウォーロック

5.エンチャンター(1)
●3.エンチャンターenchanter

 エルフelf美少女びしょうじょラティアLatiaじょうクラスclassエンチャンターenchanterだった。
 付与ふよじゅつというやつだが、身体的しんたいてき接触せっしょくをしていないと、効果こうか発揮はっきできないという、クソ要素ようそがある。

 前衛ぜんえいちまわって戦闘せんとうしているときに、いちいちくっついていられたら邪魔じゃま以外いがい何物なにものでもない。
 だからクラスclassのうち『もっと役立やくたたずのエンチャンターenchanter』と呼称こしょうされている。

 これは事実じじつだが、おれには関係かんけいがない。

 おれウォーロックwarlockだ。
 そして範囲はんい魔法まほう得意とくいとする。
 この範囲はんい魔法まほうぜん方向ほうこうで、おれ中心ちゅうしん発動はつどうするため、おれ至近しきん距離きょりにいないと、味方みかただろうがぬ。
 ぎゃくえば、おれ至近しきん距離きょりにさえいれば、安全あんぜんなのだ。

 魔力まりょくおれからているが、たまおれからだから直接ちょくせつんでいくわけではないので。
 放出ほうしゅつされた魔力まりょく一定いってい距離きょりはなれると、物質ぶっしつしてほのおになるらしい。

 おれ背中せなかいて、おれ大幅おおはば強化きょうかしてくれるエンチャンターenchanterは、相性あいしょう非常ひじょうにいい。
 他職たしょくにはたからぐされだが、おれ個人こじんには、絶大ぜつだい効果こうか見込みこめる。

「というわけで、ラティアLatiaじょうは、おれ相性あいしょう非常ひじょうにいい」

「はいっ、そうみたいですね。でも範囲はんい魔法まほうなんて実在じつざいしていたんですか、おとぎばなしですよね?」

バラエルBaraelはなしか? 実話じつわなのだろう」

実話じつわ、なんですか、にわかにはしんじがたいです。すごいです」

「まあな」

「それにしても、相性あいしょうがいいとか、なんかずかしい台詞せりふですね」

「そうだな」

「その、あの、からだ相性あいしょうみたいで」


 ほほめて、らすラティアLatiaじょう
 おい聖女せいじょだろ。なんだよエッチの相性あいしょうとか想像そうぞうしてるのか。
 むっつり助平すけべいだろ絶対ぜったい

 ちなみにエンチャンターenchanterているが全然ぜんぜんちが職業しょくぎょうバッファーbufferというのがある。
 補助ほじょ魔法まほう使つか魔法使まほうつかいだ。
 身体しんたい強化きょうか魔法まほう攻撃力こうげきりょく強化きょうか魔法まほうなどを相手あいてけることができるが、その倍率ばいりつひくい。
 たしかに身体的しんたいてき接触せっしょくもちいず、ヒールhealのようにバフbuff魔法まほうをするだけで、お手軽てがるなので重宝ちょうほうするが、その効果こうか限定的げんていてきだ。

 それにたいしてエンチャンターenchanter強化きょうかは、ばいちかいといううわさがある。
 ばい攻撃力こうげきりょくとか、想像そうぞうぜっする。

 そして「からだ相性あいしょうがいい」相手あいてとは、さらにばいドンで強力きょうりょくになるという、これまたもない、エッチなうわさがある。
 だからエンチャンターenchanter性的せいてき噂話うわさばなしえない。

 彼女かのじょすくなからず、そういうはなしいたことがあるのだろう。

 まったく純真じゅんしんおれ聖女せいじょなにんでるんだか。

からだ相性あいしょう……た、たしかめてみますか? はじめてなので本当ほんとうからないんです」


 もう夕方ゆうがた。これから時間じかんだ。

 うるませている。
 夕日ゆうひひかりはややあかいが、ラティアLatiaじょうかおはそのなかでもさらになのがかる。
 なんだか、おれラティアLatiaじょういまからしけむみたいじゃないか。

「あの、宿屋やどやまで、一緒いっしょってください」

金貨きんかやったろ、一人ひとりけないのか?」

「あの、一人ひとり宿屋やどやくと、まれそうになったことがあって、こわいんです」


 おれうですそをギュっとつよにぎってくる。
 そのはわずかにふるえていた。
 くちびるもきゅっとむすんで、なにかにえるような表情ひょうじょうをしている。

 どこにもクソ野郎やろうはいる。
 なるほど、これほどの美少女びしょうじょ一人ひとり宿屋やどやれば、一発いっぱつヤッてやろうという不届ふとどしゃがいてもおかしくはない。

「それから、これはおねがいなんですけど」

「なんだ」

一緒いっしょ部屋へやに、その、まってしいです。も、もちろんダブルdoubleベッドbedで」

「そんなに宿屋やどやこわいのか?」

「はい」


 なるほど、これは問題もんだいだな。
 おれのことはこわくないのだろうか。
 一番いちばんわるいことをしそうな格好かっこうをしているくろずくめなのだが。

 宿やどうら路地ろじのヤバそうなところはけた。
 おじょうさんをれていけるような宿やどではない。もちろん一発いっぱつヤるだけならべつだ。

 一本いっぽん裏通うらどおりにある、ひとかんじの比較的ひかくてき綺麗きれいだが値段ねだんごろな宿屋やどやつける。

「よし、ここにするか、いいな?」

「はい」


 ラティアLatiaじょうはまだおれふくすそをギュっとにぎってはなさない。
 よほどこわおもいをしたとえる。

 ドアdoorけ、受付うけつけませる。
 宿屋やどや主人しゅじんは、おれをしっかりあとラティアLatiaじょうをさっとていぶかしむが、りをして、なにわぬ「おれなにらないですよ」というかおかぎわたしてくる。

「くれぐれもトラブルtroubleはご遠慮えんりょください」

かってるって」


 おれはできそこないの笑顔えがおけて、それにおうじる。
 ラティアLatiaじょうこわがりながらも笑顔えがおかべて店主てんしゅあたまげる。
 店主てんしゅはそのときはじめてラティアLatiaじょうかおをはっきりとたのだろう。
 はなしたばして店主てんしゅ一言ひとこと

「いくらだ?」

「は?」


 おれ一瞬いっしゅん意味いみからなかった。宿やどだいはらったのはこちらだ。

「その、いくらだったの? あとおれにもしてくれる? それでいくら?」

「は?」

奴隷どれいでしょ? いくらでってきたんだい? それとも化粧けしょうもしてないけど娼婦しょうふなの?」

「どっちでもない。知人ちじんだ」

「うそん」

本当ほんとう


 おれ店主てんしゅをにらみつけるが、平気へいきかおをしている。
 無駄むだ場数ばかずんだこういう店主てんしゅたちわるい。

「そんなえのうそついてもダメだよ」

本当ほんとう知人ちじんだ。シメるぞ」

「ひっ、こわ。これだからウォーロックwarlockはおっかねえ」

かってるんだったら、だまってろ」

「あーはい。すみませんね。で一発いっぱつだけでいいよ、いくら?」

貸出かしだしするわけないだろ、あたま魔法まほうたたきこむぞ」

「うひょおお。こりゃあ失礼しつれい。どうぞごゆっくり。げへへ」


 エロいかおかべて、おれたちをおくうながす。
 ラティアLatiaじょうかおたら、なみだかべているが、こえげてかないように必死ひっし我慢がまんしていた。
 おれふくすそはシワがよって、いたそうなぐらいギュッとつよにぎられている。

 こんなになんてことを。まもらないと。

 そんな感情かんじょうになるのはおれなかでは非常ひじょうめずらしい。

 部屋へやはいり、内鍵うちかぎをおろす。
 これで、あのゲスい店主てんしゅはいってこれない。
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