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インヴォーク! 起動せよ、新生レグルス!!

【第0章最終話】新団長イングリット
 ホワイトエンペラー要塞ようさい攻略こうりゃく作戦さくせんから、ネロのギルドが撤収てっしゅうしてからはやくも一週間しゅうかんかれらはアイアンクロス大隊だいたい駐屯ちゅうとん内部ないぶで、生存せいぞんした負傷者ふしょうしゃ救護きゅうごされたことと、アネット少尉しょういおよびベアトリクス少佐しょうさ奮戦ふんせんによりホワイトエンペラー要塞ようさい奪還だっかん完了かんりょうした事実じじつったのであった。

――生存者せいぞんしゃなかには、レグルスの団長だんちょうクラウディオ・スカラーと、ふく団長だんちょうカズヒラ、Aチームメンバーのがあった。
 カズヒラは|鬼トケビぞく戦士せんしだったこともあり、老兵ろうへいでありながら一番いちばん軽傷けいしょうであった。リハビリが順調じゅんちょうにいけば冒険者ぼうけんしゃ復帰ふっきできるという。そしてAチームメンバーも一時的いちじてき失神しっしんとどまったようで全員ぜんいん無事ぶじであった。
――だが、クラウディオはいま意識いしき不明ふめい状態じょうたいつづいていた。

「――以上いじょうが、ホワイトエンペラー要塞ようさい攻略こうりゃく作戦さくせん顛末てんまつだね。ネロ、イングリットちゃん」


 報告書ほうこくしょったクラウディオのあに、ユークリッド・スカラーはくらかおをしながらも冷静れいせいはなした。


「――旦那だんなさま団長だんちょう状態じょうたい一向いっこうくならないそうです。かり回復かいふくしても、冒険者ぼうけんしゃとしてギルドに復帰ふっきするのはむずかしいとわれました」


 涙声なみだごえこたえるイングリットは、まるで自分じぶん責任せきにんかのようにこのけんのことを報告ほうこくした。

「イングリットくんきみなにわるくないよ。てき要塞ようさいにあんな強力きょうりょく魔物まもの所属しょぞくしているなど、わたしだって情報じょうほうつかめていなかったんだ。すべてはギルドマスターでありながら、十全じゅうぜん情報じょうほうあつめきれなかったわたし責任せきにんだ」

「ネロ、一応いちおうっておくが、このくらいのことでギルドマスターをりるとかうなよ。それにこのけんだれわるくない。不運ふうんかさねとおもうしかないだろう」


――生存者せいぞんしゃ一人ひとりカズヒラからの報告ほうこくは、すでとどいていた。だがかれ範囲はんい情報じょうほうでは、魔物まものみずからのシャドウ名乗なのったことと、強力きょうりょくかみなり魔法まほう使つかうことくらいしか、わからない。
 ネロが自力じりきはいれた情報じょうほうあわせても、がかりとするのには情報じょうほうりないままであった。

「……とはいえども、クラウ(※クラウディオの愛称あいしょう)が復帰ふっきできない可能性かのうせいたかいとなると、レグルスにあたらしいリーダーを用意よういしなければならないなあ」


 ユークリッドは重苦おもくるしいかおのまま、こめかみにてて今後こんご対応たいおうをどうするか思案しあんする。
 元々もともとクラウディオが兄貴あにきのためにすごいやつ大勢おおぜいあつめたキャラバンをつくりたい」ったのが、レグルス結成けっせいはじまりであった。しかし肝心かんじんのリーダーであるクラウディオが再起さいき不能ふのう状態じょうたいとあれば、あたらしくリーダーをめなければならない。

「カズヒラは若手わかてそだてることをのぞんでいるし、エミリーは団長だんちょうにするには血気けっきつよすぎる……」


 ユークリッドが思案しあんしているときであった。

「……ならば、一人ひとりしかいないじゃないか、ユークリッド」


 ネロがくるしそうなかおをしながら、こたえた?

「……なんだ、ネロ。おまえかんがえがあるのか?」

当然とうぜんだ。おれだって直接ちょくせつ一緒いっしょ冒険ぼうけんした回数かいすうこそすくないものの、かれらの素質そしつはある程度ていど把握はあくしている」

「ほう……」


 ユークリッドは、その素質そしつぬしに、消去法しょうきょほうではあるもののこころたりがあった。

「クラウディオにわってリーダーになれる人物じんぶつったら、おれはこのしかいないとおもう」


 質問しつもんこたえながら、かれはイングリットのかたにぎった。

「えっ」


 戸惑とまどうイングリットにたいして、ネロはつづける。

「イングリットくん今日きょうからきみがレグルスのリーダーだ」

「ええっ!?」


 あまりに唐突とうとつはなしであったため、彼女かのじょおどろきをかくせなかった。

きみ戦士せんしとしてはたよりないが、ユークリッドが直々じきじき参謀さんぼうとしてみとめたんだ。わりにリーダーをやれるのはきみしかいないとおれかんがえる」

「……おいおいネロ。ふざけてるのか? イングリットちゃんはあくまで参謀さんぼうだぞ」


 ユークリッドがむが、ネロはくびたてらなかった。

「だが、エミリーくんにはクラウくん同等どうとう陣頭指揮じんとうしきむずかしいだろ。彼女かのじょのリーダーとしての才能さいのうは、まだ十分じゅうぶんとはえない」

「それは、そうだがな……」

「それに、さっきのたたかいでぼくらの作戦さくせん原型げんけいつくったのはイングリットくんだ。りないところはぼく改良かいりょうくわえたが、実戦じっせんめば彼女かのじょぼくなら司令官しれいかんになれる才覚さいかくがあるだろう」


 ネロのなかで、イングリットの評価ひょうかはかなりたかかった。今回こんかい依頼いらい彼女かのじょ参謀さんぼうぶりを評価ひょうかしたからだ。

「で、でもっ――」

「まあ、ここですぐに
『でも』
あたり、不安ふあんはまだのこるけどね。だけども、このがエミリーくんたち苦手にがてなことをわりにやるぶん、エミリーくんたちがこの必死ひっしまもるというのはキャラバンとしてあって当然とうぜん団結力だんけつりょくおもうよ」


 イングリットの否定ひていさえぎりながら、ネロはさとすようにはなした。
 ネロにこうわれてしまっては、リーダーとしてやっていく覚悟かくごかためなければいけなくなった。だがイングリットのなかではまだりがつかないため、たすけをもとめようとユークリッドのほうくと――

「――わりがいない以上いじょう、やむをない。おまえとおりだ、ネロ」


 かれしずかにくびたてった。

「えっえっ」

『ええええええー!!!!!』


だい0しょう レグルス崩壊ほうかい かん
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