それから長いようで短い時が過ぎた。
試験終了までの時間は、もう一時間を切っている。
だが、リデラードは仲間を見つけられないまま一人で過ごしていた。
会場では、次々とパーティの卵達が生まれつつあった。
だが、その一員にリデラードを入れてくれるところは全然なかった。
もはややる気をなくしているのに等しい態度のリデラードは、自分に誘いの声がかからない理由を理解していた。
昔から、わがままですべてをゴリ押してきた彼女は、心の底から友達と呼べる人間を作ったことがない。その空気を、会場の他の受験者は感じ取っているのだろう。
このままだと積み重ねてきた剣のけいこが、ほとんど無駄骨に等しいまま、活かされることなく不合格になってしまう。
レウルーラの言った『お前の一番苦手なことを、はじめに試験する』という言葉は、まさしく伊達ではなかった。
――そんな時だった。
シラフではあるものの、再び酒に逃げていた時の自分にリデラードが戻りかけた頃。
リデラードが呼び声に振り向いた先には、ピンクのメガネをかけた女性の受験者がいた。
「あなたも、もしかしてパーティに入れなくて困っている人?」
昔のリデラードだったら、確実にかんしゃくを起こしていたであろう一言。だがそれを受けても彼女は動じなかった。
「……ええ、そうよ。そういうあんたも、アタシと同じ落ちこぼれ?」
メガネの女性も、武器は剣らしい。ただリデラードが片刃のサーベルを好んで使うのに対し、この女性は直剣を持っていた。
「……落ちこぼれだったら、合格することを諦めたりなんかしないよ」
またまた、昔の自分が聞いたらかんしゃくを起こすであろう言葉を耳にしたリデラード。だが、今の彼女はシラフゆえに、それを受け止めることができた。
「……そう、だったら良い相手が見つかるといいわね」
冷たく突き放しながら、うつむくリデラード。心のどこかでもう一度酒に逃げたいと言っている自分がいることに、彼女は気が付いていた。
でも、姉と必ず合格すると約束したのだ。もう逃げられない、逃げてはいけないのだ。
一方で、メガネの剣士は構わず話を続けた。
まったく離れようとしないこの剣士に、だんだんいらだちの感情が芽生えだした。
「それともあんた、本気でアタシと組みたいと思っているの?」
――その言葉に、リデラードは驚いた。
あまりの突飛な提案に、リデラードはますます驚く。
――大人ですら恐れる者もいるほどの不良の自分を、怖がらない同年代の者が、はじめて現れた。その事実にリデラードは戸惑っていた。
「……わかったわよ。このまま不合格になるくらいなら、あんたと組むわ」
ジュリという女は、この言葉に目を輝かせた。
やりにくさを感じつつも、この二人にとって互いにはじめて、仲間ができた瞬間であった。