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VRあるあるあるき

041.演劇
 中ボス、スケルトン・ナイトを撃破した。
 この前、ドロップの分け方については書いたと思う。
 個人のアイテムボックスに直接配布分配されるタイプ。
 ドロップが画面に出て、欲しい人が欲しいボタンを押すと抽選になるタイプ。
 そして、このゲームみたいに地面に落ちてるタイプだ。
 個人分配はそれがゴミならいい。
 問題は通知が全員に行かなくて、レアが分配されてしまうタイプだ。
 これだとパーティーで行動しているのに、特定の運がいい人だけ儲けられる。
 いわゆるレアドロップのネコババだ。

 地面に落ちるタイプは、ネコババは難しい。特にボスドロ。
 忙しい乱戦中に拾って歩くルータープレイは可能かもしれない。

 ボスのドロップは、スケルトンナイトソード、骨、魔力石中。
 剣は片手剣だが、人間が持つには少し大きいので両手剣扱いみたいだ。
 いちいち説明に片手とか両手とか書かれていないので分からない。
 片手で持てればラッキーぐらいだろう。

「売ってもいいけど、どうする?」

「師匠、ニーナかカロンにあげたらと思う」

「ニーナちゃん欲しい?」

「(こくこく)」

「カロンは?」

「オレは盾があるんで、ちょっと片手で持てそうもない」

「そっか。じゃあニーナよろしく」

「でもお金が払えません」

「まぁ、いいんじゃないかな。プレゼントか出世払いで。クラブハウス建てるときによろしく」

「分かりました」

 スケルトンナイトソードは装飾もきれいな一品で、WIKIのドロップ報告にもある。
 値段は書いてないから分からない。
 まぁそうだな、400kぐらいかな。
 前線装備は10Mぐらいだから、まぁあげても問題ない範囲だろう。

「中ボス倒したけど、戻ろっか。約一名、先に行っちゃったし」

「行ったというか逝ったんですけどね、師匠」

「あぁ、あれは悲しい事件だったね」

「はい」

「では帰還。アイテム高いよ帰還石!」

 意外と高い帰還石ちゃん。しかし歩いて戻るのは、時間がもったいなさすぎる。
 帰りも敵は出るけど、面倒に決まってる。
 あと迷子になった時に帰還石があると便利だ。
 このゲームにはシステムのマッピングがない。
 シーフ系スキルと紹介したけど、手書きしかないんだよバカ野郎。

 全員で転送されてきて、トロリン村に戻ってきた。

「村に戻ってきたぞ」

「お帰りみんな」

「ああ、ユマル元気そうで何より」

「全然元気じゃないよ。それで倒せたの?」

「ああ、魔法ぶち込んだら死んだよ。お土産は剣が出た」

 ニーナが無言でユマルに剣を見せていた。

「きれいな剣だね。私も大剣使いにしようかな」

「大剣なんて持って素早く動けるの」

「そっか、無理だわ」

「あはは。残念だ」

「むーー」

 可愛い可愛い。妹キャラも板に付いてきた。



 数日後、オムイさんがふと言ってきた。

「あの、演劇がしたいですっ!」

「あぁ演劇したいの? 別にいいよ。やってみそ」

「わーい」

「師匠、あっさり認めましたね」

「だってマイナーだけどあるあるだし」

「あるあるだったんだ。さすがあるあるクラブ」

 ルルコもあるあるクラブに馴染んできた。
 ということであるあるクラブ主催、演劇の準備が始まった。

 まず演目を決めないといけない。

「せっかくなので、スケルトンナイトソードを使うのがいいかなぁと思います」

 オムイさんはお考えがあるようだ。
 あの剣、値段は普通だけどかなりのレアで、見た目もきれいで人気は高い。
 サーバーに10本ぐらいしかないらしい。
 もちろん他の国のサーバーでも出るし、特に北米サーバーは人口も多いから、レア情報とかも集まりやすいらしい。
 ただ言語の壁があって、向こうの情報があんまり伝わってこない。
 元データはサーバー間で差異はないらしいけど、プレイヤーが関わって変化するイベント系では事情が異なるため、別世界みたいになるらしい。
 いわゆる並行世界というやつだ。

 劇のお話は剣とお姫様の話にするとか。
 ベースの話は不思議の国のアリスとか、眠れる森の美女とかそんな感じのを混ぜたような話らしいよ。

 ヘッドギアは現実時間で進むので、作業をVRでする必然性が薄い。
 オムイさんは仕事の空き時間とかで台本を書いているみたいだ。
 そんなに長い話にすると大変なので、なるべく短くても楽しい話にするって言っていた。

 そしてこのVRファンタジーは衣装製作の職人と材料があり、いろいろな衣装製作のイメージさえしっかりしていれば、それが目の前に現れる、イメージ製作システムなのだ。
 だから劇の衣装は作りやすい。
 問題はうちには衣服専門職人がいないんだ。
 防御力は無視していいので、その辺の糸を買ってくればいい。
 結局オムイさんの知り合いという娘がやってくれるらしい。
 オムイマジック発動だ。

 MMORPGではロールというなりきりプレイをする人もいる。
 それとは別に台詞演劇をする集団が一定数いるものだ。
 末期とか過疎だとそんな人はいないけど、人が集まっている期間にはわりといる。
 ただお客さんも多くなかったりするから、動画公開が一般的になった後に動画投稿サイトとかに載せてみる人がいればいいな、ぐらいだと思う。
 あまり宣伝手段とかもない。
 公式サイトの雑談とかなんでも掲示板があれば、そういうところに書くとお客さんが増えるかもしれない。
 増えすぎると見れないという問題はある。

 演出担当はセリナがやってくれる。
 何がって、変な魔法を物色中だ。
 例えばスノーという雪を降らす魔法。
 あとフラワーシャワーという花を降らす謎効果と話題の魔法。
 補助魔法らしいんだけど、バフ効果が観測されていない。
 こうやって使うんだな。
 魔法の中でも値段は安かった。お財布に優しいのは嬉しい。

 配役は王子がカロン。
 敵のおっさんが俺。
 お姫様はニーナ。
 魔法使いのおばあさんがルルコ。
 残りはあれだ、七人の小人もどきの七人のウサギ。

 小道具は露店で物色して済ませる。
 こういうときリアルのお金ではなくゲーム内通貨なのが大変ありがたい。

 大道具は無理だと判断。諦めが肝心だ。

 音楽は、なんと、聞いて驚け、あの、聴覚障害者の会の子供たちにお願いした。
 というか、他に手段が思いつかなかった。
 入場無料。チップ歓迎。
 劇で貰えるチップの半分は子供たちの取り分で手を打ってもらった。


 日曜日の午後6時、飯を食って、中央広場を占拠する。
 文字通り占拠だ。
 冒険者ギルドで一応お伺いを立ててあるが、問題ないらしい。
 掲示板で宣伝も適当にした。
 頑張りすぎて人が集まりすぎると困るのでほどほどにする。
 集まってきた人は結構いる。
 全然興味ない層もいる。
 あと俺のハーレムクラブだと思ってるアンチもいるが、高級ハードだけあって礼儀正しい人が多いので、そういう人は無視してくれている。
 ゲームの値段、最低コストと民度には一定の関連があると思う。
 お子様プレイヤーも相対的に少ない。

「あるあるクラブ主催、演劇、剣と魔法のお姫様です。開始は7時を予定しています。もう少しお待ちください」

 周りではいわゆる便乗商法をやっている人もいる。
 これは事前確認制にさせてもらった。
 近くの屋台や花火屋さん、クラッカー屋さん。
 クラッカーといってもビスケットや悪いハッカーではなくて、三角形で紐を引くと火薬で紐が飛んでいくやつだ。
 なぜかこの世界にはそのクラッカーのでかいのが売っている。
 花火も魔術石製の安心安全の幻影魔法の応用のやつだ。
 毎回の話題だけど、会場にトイレが不要なのは助かる。
 全員を並べて座ってもらっても、特に問題がない。

「では、演劇、剣と魔法のお姫様はじめさせてもらいます。主催はあるあるクラブ、マスター、タカシです」


 お姫様は悪いおじさんの俺に虐められて、お城から森に追い出される。
 7人の小人という名前の女の子たちと楽しく生活する。
 そして魔法使いのおばあさんにだまされて、りんごを食べて眠りについてしまう。
 7人の小人は困る。
 そこに噂を聞き付けた王子様が現れる。
 しかし俺が邪魔をする。
 俺と王子が剣で決闘をして、俺が負ける。
 お姫様と王子がキスをして、お姫様は目が覚める。
 ハッピーエンド。

 俺は立派に悪い奴を演じたぞ。
 これには俺否定派も大歓迎らしい。
 拍手とか「ざまあみろ」とか言われた。

 目が覚めるシーンでは、花が空を舞い大歓喜。
 最後は俺以外のみんなでダンスシーンをしてハッピーエンド。
 昼間だけど、花火とクラッカーが空に飛んで盛り上がった。

 収入はうん。この国はチップ文化があんまりない。
 でもNPCも見てくれて、意外と集まった。
 音楽を担当してくれた子供たちにも、チップを払えて面目は保てた。
 王子がスケルトンナイトソードを掲げて装備したシーンは、思わず「おおおぉ」と声が聞こえた。
 なかなかうまくいった。

 王子はカッコよかったし、姫も可憐かれんなドレスだった。
 ウサギコスの女の子たちは可愛かった。
 俺だけ普通の装備なのが笑えるところだ。

 大好評で劇を終えることができた。

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