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VRあるあるあるき

029.ダンジョンと無限湧き
 再び転移水晶で、初心者ダンジョン前に戻ってくる。
 正式名称は「北森ダンジョン」だったかな。

「それではダンジョンに入ろうか」

「私オム子はわくわくします」

「ルルコはビクビクしてます」

「ユマルちゃんは眠いぴょん」

「ボクはゾクゾクするぞ。男たちの真の熱い戦いが中で繰り広げられてるんだ」

「あ、はいはい。では出発」

 洞窟へ入るのに制限などはない。
 いわゆる自己責任というやつだった。

 中に入るとすぐ暗くなり、ライトの魔法を使用する。
 MP消費量はほんのちょっとだった。ありがたい。
 住民たちはライト魔法ではなく、明かりの魔道具を使用するみたいで、宿屋にも付いていたから、そういうものなのかもしれない。

 中は気温が少し低くてひんやりしている。
 湿度はちょっと高めに感じる。

 入ってすぐは一本道だ。
 ミニマップがないこのゲームでは迷うと本当に迷う。

 別れ道に出てきた。

「どっち行く?」

「右ですね」

 ルルコが即決する。

「なんで?」

「看板が右を指してます」

 よく見ると木の板に右矢印が書かれていた。
 なるほど初心者用だ。
 道幅は数人並べる程度には広い。

 なんかいる。

「出たな土人形。男ですか女の子ですか」

 どうでもいいこだわりがあるのは、もちろんセリナだ。

「オム子、ウォーター魔法」

「はい、ウォーターショット」

 ショット系はバレットやアローが集中一点なのに対して、散弾系なので広がりがある半範囲攻撃だった。
 土人形に広く命中して、消え去った。

「あれ? 一発なんですね」

「土は水が苦手なのさ。自然の法則によるとね」

「なるほど」

 次々と土人形が出てくる。
 オムイさんのMPばかり使う訳にいかないので、皆で殴って倒し続ける。
 いまんとこ、ドロップはなし。
 経験値効率は過去最高だった。
 ダンジョンは敵がフィールドより多いのはあるあるで、常識だ。
 そして経験値が美味しいところは、ドロップがショボイことが多い。
 ゲームバランス的なものだ。
 でないと人が集中して大混乱になる。

「今度は洞窟ネズミさんですん」

「お嬢さん可愛いな」

 ユマル、セリナが反応する。
 ウサギみたいな凄い可愛い顔してやがる。
 目もくりくりして、キュートだった。

「師匠、こいつも敵ですよ。いざ。いきます」

 ルルコが投石からの棍棒こんぼうアタックで、どつき回す。
 ネズミは防戦一方で、粒子になって消えていった。

「ネズミもウサギもウリボウも今のところ可愛い子が多いですけど、テイムできないんですか?」

 オムイさんの質問ももっともだ。
 できるという噂がある。
 しかし、全然できないという、多くの報告もあった。

 土人形とネズミがぞくぞく出てきて、作業のように倒していった。

 途中、左の壁の一点が光った。

「ちょいストップ」

「師匠どうしました?」

「ここ、ほら、なんか宝石系が埋ってる。ハンマーで掘ってくれる?」

「ユマルんに任せてお兄ちゃん」

 ユマルん。期待してるぞ。
 周りを適当に叩きつけて、先の尖ったウォー・ハンマーで叩いてもらう。
 ポロポロ崩れて、薄い青い透明な水晶が取れた。
 鑑定結果「水晶石」。
 魔石より高い魔力を込められて貴重であり、そこそこの値段で取引される。

「お兄ちゃんよく、見つけたね。えらい、えらいです」

 妹に頭なでなで、してもらった。
 バブみが高いかもしれない。

「戻ったら売ろう。均等割りにするからさ」

 パーティーで出たドロップは、全員で分けるのが大抵の古いタイプのゲームの常識だった。
 マナーが悪い人がいたりして、そのうち分けるのがめるようになると、個人ごとにドロップするようになり、分けることができなくなったゲームもあった。
 ショボイアイテムは欲しい人にあげて、換算額の取り分だけお金を渡すことも多く行われる。
 高額品で複数人が欲しがるとじゃんけんやサイコロのシステムがあり、勝った人が買い取って、他の人はお金を分ける。
 その場でオークションになる文化のゲームもある。
 ゴミは出ても、誰も拾わなくて、しばらくマップがゴミだらけになることもある。
 でもゲームなので拾わなかったドロップは、一定時間で自然消滅する。
 そしてその普通はあまり拾わないものを拾って歩く人もいる。
 そういうのをルート行為という。死体を剥ぐときに使う言葉で、戦利品とかそういう意味がある。
 昔、現実で戦争で倒した敵兵の持ち物を持って帰る文化があった。
 ルーターは一部マナー違反とされ、嫌われることもある。
 特にプレイヤーの死体が残るゲームでその死体漁りが非難された。
 ドロップも他人が拾わなくても、一声掛けたりするといいと思う。
 何事もコミュニケーションだ。まあ、俺はコミュ障なので声掛けられないから、他人のゴミ拾いもしたことがない。

 奥まで進んでいく。
 前から明かりが近づいてくる。
 なんだと思ったらプレイヤーだ。
 おっさんが3人。そこそこ強そうな防具装備をしている。

「こんにちは」

「こん」

「戻りですか?」

「この洞窟、分岐が合流してるから、それ利用して回ってんの」

「なるほど、ではでは」

「第二陣も洞窟まで来たか。俺たちも先へ進むかな」

 おじさんたちは、全員片手剣を持っていた。
 防具はいいけど、全員剣はどうだろう。
 強そうではないけど、あんなんでも、別に問題ないのだろう。
 もしかしたら「本気装備」ではないかもしれない。
 武器を落としたりするゲームでは、予備の武器防具を持ち歩くことがある。
 いい装備は修理費用も高かったり装備が消耗品だと、なおさら本気装備を取っておいたりする。
 多分そういうのだ。
 このゲームは、装備は耐久値の修理制だが、耐久値が0になると壊れて戻せない。また最大耐久値は修理ごとに減少するから、装備に寿命がある。
 修理で全回復して半永久持つゲームも多い。

 敵を倒しながら進んでいく。
 特に変なギミックとかはないらしい。
 でも宝石が埋まっていたり、隠し要素的なものはあるので、探せばいろいろありそうだ。

 今回のタイトルにした『無限湧き』を忘れていた。
 敵が制限なしで、何匹も同じところから出てくるのをそういう。
 アクション系ゲーム用語だか、MMOもある種の無限湧きだと思う。
 実際にはフィールド中の個体数が一定になるように調整されているものだけど、倒したら、倒した分だけ敵MOBが補給されるので、事実上、無限だ。
 ただし、時間経過があるので、時間当たりのポップ数というのもあったりはする。


 今日はそれほど時間がないので、奥に進む。
 敵も出てきて、経験値も美味しい。

「ひゃうっ」

「ルルコどうした」

「水滴が落ちてきました」

「なんだ、そんなことか」

「びっくりしました。しょうがないんです。ぶうー」

「はいはい。びっくりしたね」

 まあ、それぐらいのハプニングは想定内だ。
 せっかくVRだというのに、なにもなしでは、開発のやる気がないと思われても仕方がない。
 フルダイブは基本的に体験型アトラクションなんだから、ギミックは必要だ。
 ギミックといってもパターンを予習してそれを先人と同じ行動さえすれば、ただそれだけでいい、というゲームも昔はあった。
 それも確かにギミックかもしれないが、それのどの辺が「冒険」といえるのだろう。ただのマニュアルをなぞっているだけじゃないかというような、批判も多く言われている。
 特にTRPGや古めのコンピューターRPGでは謎解き要素がある。
 それは決められた通りで攻略するのではなく、各所にあるヒントの碑文とかを読んで、推理したりするタイプがあった。
 そういうのをたしなんだ人は、やはりそういうギミックをMMOのダンジョンにも期待している。

 ローグ系の影響も結構あると思う。
 満腹度とか、鑑定しないで不明なまま武器を使うとか、ランダムダンジョンとか。
 もっと古い要素を受け継いだだけなのかもしれないけど、そこまでは詳しくない。


 部屋に出た。土人形が結構いっぱいいる。

「通路へ後退しよう。囲まれないように塞ぐんだ」

 油断していた。
 これもローグ系の知識が役に立った。
 みんなで通路を閉鎖して、正面の敵を倒す。
 それほど強くないので助かった。
 むしろ、たくさん敵がいて、経験値が美味しい。
 魔石も1個ドロップした。
 後ろから攻撃するのを「バックアタック」という。
 アクション要素があるMMOではダメージが大きいのが普通だ。
 だからそういうプレイを避けるように振る舞うほうがいい。
 ほかにも銃撃戦ゲームのFPS系では「ヘッドショット」という頭を撃ち抜くと、即死だったり大ダメージになる。
 VRは普通のRPGよりもアクション寄りなので、そういう要素も多分にある。
 弓矢、投石、アローやバレット系魔法では特にそうだろう。
 殴る時も手足より、急所を攻撃したほうがダメージが大きい。WIKIに書いてあったと思う。
 似たようなRPGの話に「首ナイフ問題」もある。HPがたくさんあったとして、即死なのか違うのかという問題だ。現実的には死ぬが、RPGステータス的には簡単に死ぬとおかしいという矛盾の話だ。
 このゲームでは死なないを選択したようだ。
 首が取れたら死ぬが、鍛えたらナイフぐらいなら首には刺さらない防御力があるらしい。

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