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VRあるあるあるき

024.戦闘スキル
 この辺りはご飯系屋台、露店地帯なのですぐに目的の店が見つかった。

 メニューは少なくて、トマトハムパン、ツナマヨパン、バジルガーリックパン。
 俺は100kを手にしたので手持ち152.6k、3種類全部購入。お値段1.5k。
 別のドリンク屋さんでレモン水を100ラリルで購入。
 オム子と、楽しく朝食になった。

「ごちそうさま」

「はい、ごちそうさまでした」

「そろそろ武器確定したいよな。靴作って売って100kゲットしたから魔法スクロールも買えるよ」

「私がいない間に儲けましたね。それじゃあ、魔法を見てから戦闘ギルドで戦闘スキルなのかな」

「うん、そうしよう」

 魔法使いギルドに来た。

「スクロール見せて、初心者用」

「はい、この辺りの一覧ですね」

 メニューみたいな案内を見せてもらう。
 何がいいだろうか。
 火だけでも、ファイヤショット、ファイヤバレット、ファイヤボール、ファイヤウォール、ファイヤアローがある。
 もちろんまだ覚えられない魔法も他にある。

「オム子どうする? 火にするか? 俺はそれなら水にするけど」

「うーん。ウォーターヒールがあるので、私は水系がいいです」

「なるほどな。俺が火やるわ。ファイヤバレットにするよ」

「私はウォーターショットにします」

「よろしいですか?」

 よろしいのでうなずいた。
 お値段30kなり。
 無駄遣いしないオム子でもキツいだろう。
 オム子も皮が余ってるから、何か作ってもらえばいいか。

「次は剣士ギルドだな」

 剣士だけど槍とかメイスとか物理戦闘系はみんなここだ。
 戦闘スキルを買いたい。
 買うんじゃなくて、訓練かもしれんが調べてない。

「ごめんください。戦闘スキルください」

「スキルの習得に来たのか。ふん。まあいい、基礎スキルアタックを教えてやろう。5kラリルだ安いだろ」

 担当は筋肉のおじさんだった。
 俺たちは言われた通りにお金を払う。
 やはりスクロールだった。

「アタックは魔力強化の基本だ。魔力を力に変換して、強い攻撃ができる」

「なるほど」

「他のスキルは、もう少し慣れたらがいいかもな」

「分かりました」

 とにかく戦闘力の強化になれば、何でもいいや。

 西門から出て進んで、またイノシシを狩る。
 人もそれなりだけど、キャパにはまだ余裕がある。
 フィールドが広いのは、こういうとき重要だ。
 足元も革靴で問題ない。
 回復手段もある。

 まず魔法先制。火と水の魔法がイノシシに襲い掛かる。
 攻撃されたイノシシは急いで接近してくるから、そこを俺の槍とオムイさんのメイスでアタックを使って物理攻撃で仕留める。
 MPは減少中だけど、自然回復もある。
 魔法攻撃のMP消費量が結構高い。
 アタックでの投石に切り替えた。
 威力は魔法より落ちるけど、コスパはいい。
 昨日というか、今朝よりは狩り効率が上がって、たくさん倒すことができた。


 レベル上げは面倒なので狩りの効率だけを求めるようになるヤツがたくさんいる。
 それを「効率厨」という。悲しい現実だ。
 経験値が高いのを「うまい」「美味しい」、効率が悪いのを「不味い」という。
 時間当たりの経験値効率を「時給」という。
 また武器などを買うのを基本とするゲームでは「金策」といって、こちらも「時給1M」という風にいう。
 狩り効率が高い場所ではポーションを消費するため資金的には赤字になることがあり金策を別でする必要があるのだ。
 それとは別に資金集めのため、確率の低いレアを狙う「レア掘り」という作業をする人もいる。
 自分で材料集めからレア材料、装備までドロップと自己生産で集めるのをポリシーとする人とは対照的だ。
 効率厨のほうは、最も儲かる金策をして、お金で買えるものは買うのがポリシーだ。
 経済の法則からいえば正しいけど、それが楽しいかには、疑問もある。
 ガチ勢は効率厨であることが多く、自作派はエンジョイ勢なので、その溝は深い。
 インスタンスダンジョンでも、効率厨は、最速攻略を目指す。
 そのためには最強装備で全身を固めたりもする。
 基本無料ゲームでは装備などのため、リアル現金「課金」を大量にする人も少なくない。
 廃人装備はただレアなのではなく、それを成功確率が低い装備強化を限界までして初めて普通とされる。
 そうでないキャラは「低火力」といわれ、効率厨からいじめられる。
 防御も「紙装甲」と呼ぶ。
 合わせて効率厨、廃人から見て「地雷」の一種である。
 課金ばかりする人を「課金厨」課金勢、重課金、廃課金。無課金を「無課金厨」無課金勢と呼び合ってお互いを罵倒する。
 どれも、多かれ少なかれ普通に見られる光景でMMOあるあるだ。

「うお、いてえ」

「回復はお任せですよ。リカバリー」

 オムイさんが手を当ててくれて、痛みが引くとともにHPが回復していく。
 不思議な光景だ。
 天使オムイさん。ありがとう。

「ありがとう、オム子」

「うん」


 ゲーム内で夕方になるまで戦闘を続けた。

「よし、終わりにしよっか。よく戦った。お疲れさま」

「お疲れさま」

 所持金残高は120k。
 動きもよくなったし、スキル補正もあって強くなった。
 ところで靴の製作なんだけど、道具を買って外でやったほうが、毎回4kラリル払わなくていいんじゃないかと思うんだ。
 どうだろうか。

 生産ギルドに寄って話を聞いてみる。

「靴製作のハンマーさえ買えば、レンタル作業場、使わなくてもいいんですよね?」

「はい。貧乏な人は道端で作業してることもありますね。マナー違反ではありません。露店の店番をしながらであれば普通ですね」

「ですよね。さすがに作業だけ道端ですると、ちょっと見た目がアレだけど」

「そういうことですね。買いますか、防具や靴のハンマーセットだけなら初心者工作ハンマーが10kですよ。これでも魔道具ですから」

「あぁ、ハンマーも魔道具なんですね」

「そうです。どうですか買いますか? 3回作業場借りるなら買ったほうが安いです」

「先に聞いておけばよかった。じゃあ買います」

「まいどありがとうございます」

「あ、2つください」

 20kでハンマーを2つ分買う。
 オムイさんはお金がない貧乏病に感染しているようなので、今のうちに逆転させたい。
 幸いなことに材料の皮はたくさんある。

 フリーエリアの露店に行き、場所を確保する。
 日曜夜だけあってかなりの混雑だった。
 でも売り切った人は場所を空けてくれるので、意外と場所確保は難しくなかった。
 特に初心者勢は持ち物がもともと少ないので、持ち寄る品数も少ない。

 まず急いで革靴を2足、作成した。
 露店に並べて何をメインにするか様子を見る。
 オムイさんも通称オム子ローファーを3足作りあげて並べている。

「同じ靴を作り続けてもいいですけど、なるべく全部売れて、高く売れるのがいいですよね」

「うん。革製品ってなにがあるんだろな。カバン? サイフ? どっちもいらんよな。グローブ?」

「グローブいいですよね。指抜きグローブとか」

「ああ、そっちか。俺は野球の思い浮かべてたわ」

「あはは、何に使うんですか。ファンタジーで野球するつもりですか」

「そうだ。野球で思いついた。ヘルメット作ろう」

「革でですか?」

「うん。意外とというか、なんというか、頭って重要なくせに騎士ぐらいしかヘルム被ってないじゃんね」

「確かに見ませんね。暑苦しいからでは」

「そこで軽くて丈夫な革帽子がいいよ」

「なるほど」

 さっそく皮を叩いて準備する。
 防御用なので2枚1組にして、叩いて防具作成スキルを発動させる。
 探検帽子とヘルメットの中間みたいな形を思い浮かべて、完成をイメージしながら一定のリズムと力で叩く。

「ほほう」

「なかなかいい出来ですね」

「補正もいい。とりあえず自分で被るわ」

 補正は革靴の防御力の倍ぐらいあった。
 これは防具が優れてるというより、頭という急所を守るという役割が評価されているんだろう。

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