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謎スキル【キンダーガーデン】のせいで辺境伯家を廃嫡されましたが、追放先で最強国家を築くので平気です。

第3話 暗殺者
 パーティーも終盤に差し掛かった頃、主な出席者との歓談を一通り終えたグランはバルコニーに出て夜風にあたっていた。

「あなた、お疲れ様」
「アメルダか。よくクランツを立派に育て上げてくれた。お前には感謝してもしきれない」
「そんな……。それより、明日は遠征。朝早くからの御出立ですのに、そろそろお休みにならないと」
「しかしせっかくのパーティーの席で、私が抜けるのも失礼だろう」
「大丈夫ですわ。後のことは私にお任せください。父も来てくださってますのでご安心を」
「アメルダ、いつも済まないな。義父にもよろしく伝えておいてくれ。愛してる」
「私も愛しています。おやすみなさいませ」


 グランが自室にさがりしばらくすると入れ替わるようにアレン=バウアー子爵がバルコニーにやってきた。

「アメルダ、元気そうで何よりじゃ。それに孫のクランツの凛々しさよ。頼もしい限りじゃ」
「これも全てお父様のおかげですわ」
「何を言う。辺境伯家に嫁いでグラン殿に愛され、無事男子を産み育ててくれたアメルダあってこそじゃ。我が娘として誇りに思うぞ」
「そのことで、折り入って相談が……」

 そう言うと、アメリアは慣れた手つきで、バルコニーの扉に外から鍵をかけた。



「今回ほど、お父様に感謝したことはありませんわ」
「何のなんの。ところで、例のスキルのことは、誰にも知られてはおるまいな」
「もちろんです」

 子爵家は王国神祇官|《じんぎかん》の家柄。教会と王家とのやり取りは神祇官を必ず通して行う決まりになっている。
 今では、スキルの鑑定と宣告を行う神官や、スキルの調査官たちも子爵家の息がかかっている者で固められている。

「しかし【キンダーガーデン】とは驚いた。まさかあのスキルが本当に存在するとは……。流石は大聖女の血筋といったところか」
「お父様、今更あの女のことなど」
「すまぬ。それより首尾は大丈夫か?」

「ええ。幸いジークは攻撃魔法が使えませんので、護衛を二人も付ければ問題ありません。関所を通るまでは手出ししない様に言いつけましたので露見することはないかと」
「ふむ……」

「それから念のためにお父様に頂いたアレを放っておきましたの」

「な、何だと! それでは危なくて誰も通れないではないか。しかもあ奴らに暴れられては面倒なことになるぞ」
「ジークと御者の匂いをたっぷりとかがせましたので、あの二人だけを追尾しますわ」
「そうか。さすがは我が娘じゃ」
「ふふふ。関所の守衛たちにはジークの名をかたって南から来る者は、その場で殺すよう命じておきました。もちろんグラン様の了解もとってありますのでご安心を」

「ならば心配は要らぬな。それにしてもあそこは、我がバウアー家にとって因縁の地じゃの」
「ただ……【キンダーガーデン】について知る者が他にいないかだけが心配です」
「大丈夫じゃ。何しろあれは当主から第一子と跡継ぎのみに口伝されるものじゃからの」
「安心しましたわ。お父様、二人でお祝いしましょう」

 アメルダはそう言うと、二つのグラスになみなみとワインを注いだのだった。


◇◇◇


「いや、遠慮しておく」

 館を出発して五日目の夜。

 俺はたっぷりスープの入った椀をすすめられたが、腹痛を理由に断った。

「どうやら腹の調子が悪い。用を足しに行く」

 俺は三人にそう告げると、近くの林の中に向かった。


 俺が取るべき道は二つ。
 このままやみくもに逃げるか、それともここで暗殺者を嵌|《は》めるか。

 俺は、【キンダーガーデン】を付与されてからというもの、土魔法しか使えなくなってしまった。
 幸い以前に比べ魔力が増した上に土魔法の精度も上がったのだが、土魔法には攻撃魔法がない。
 腰にはアメルダから持たされた剣のみ。

(そうか。つまり、そういうことか)

 俺は抜き放った剣を鞘に納めると、覚悟を決めたのだった。
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