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文芸部でも恋がしたいし異世界小説も書きたいから両方する!!

第9話F3「冒険者登録」
 近所の薪割は一日でやってしまったので、もうやることがなかった。

「リーリア、俺はやることがないし、どうしたらいいのかな?」
「あのね、冒険者になるのがいいよ」
「冒険者?」
「うん」

 一応、ファンタジーはかじっているので冒険者が何か分かるが自分の常識がこの世界でも通用するかは分からない。

「冒険者ギルドというのがありまして、そこで登録した人が冒険者になるんです」
「ああ、うん」
「自由業だけど強いモンスターを倒せるようになれば、高い収入を得て楽に暮らせるわ」
「だろうな」
「お父さんも冒険者で、たまにしか帰ってこないけれど、隊商の護衛を専門にしています」
「あぁ、それでお父さんあんまりいないんだね」
「うん……たまには帰ってきてほしいのだけど、なかなかね」
「そうなんだ」
「でも弱いのに強いモンスターと戦うと死んじゃったりするから、自己分析が重要なんですよ」

 謎が一つ解けた。

 ということで家で洗濯などの家事をまだしている親子を見つつ、俺は暇なので冒険者ギルドへ向かう。

 場所はリーリアの家と門の中間ぐらいにあったはず。
 大通りまでとぼとぼ歩いていく。

 リーリアの家や周りの家々はみんな二階建てで、一軒のスペースは狭いものの、各家に二階がある。
 一階がキッチンとダイニング、二階には小部屋が2つという感じの構成で、ほぼ同じつくりのようだった。
 表通り側には家が並んでいて、逆側には小さな裏庭がある。

 各家々の裏庭がずっと裏側に並んでいた。
 リーリアの家の裏庭の場合は、以下のような感じになっている。
 裏には洗濯物の物干しが置かれている。
 隅のほうにはレモンの木とオレンジの木が1本ずつ植わっているが、今は収穫時期ではないらしいので、実はなっていなかった。
 それから小さいながらベビーリーフの野菜畑があった。
 木の下には、シイタケ原木が数本斜めに置かれていて、これがポタージュに入っているシイタケだった。

 庶民の中では中流くらいの暮らしらしい。
 ジャガイモスープばかりの食事で中流になるって異世界の食糧自称はなかなか厳しいようだ。

 とにかく大通りを歩いていくと中央広場のあるロータリーに出た。
 この一角が剣と杖の意匠、冒険者ギルドだった。

 ギルドに入る。

 朝一番ではないが、そこそこ人がいる。
 お姉さん、お兄さん、おじさん。
 朝から酒をあおっているスキンヘッドもいた。
 なるべくお近づきにならないように気を付けよう。

「すみません、登録にきたんですけど」
「はい、新規冒険者登録ですね?」
「そうです」
「では、こちらの用紙に登録情報をご記入してください。字は書けますか? 書けない場合は代筆いたしますが、代筆料大銅貨1枚、登録料は別で大銅貨1枚となります」
「あ、大丈夫、です」

 用紙をもらい、字が書けるか頭の中に思い浮かべてみるが、大丈夫そうだ。
 不思議だが神様パワーだと思うほかない。

 名前、年齢、性別、現住所の都市町村名、所有スキル、ギフト。
 それから、種族、髪の色、目の色、肌の色という項目がある。

 種族は、うーんたぶんここは「ヒューマン」でいいのかな。
 この世界にはいろいろな種族がいるらしく、街中ではネコ獣人、イヌ獣人、ウサギ獣人さんなどもちょくちょく見かける。
 ただし、ちょっとボロい服を着ていて、首輪をしている……奴隷が多い印象なのが、不安をあおるところだ。

 色に関しては、確かに写真がないこの世界では、いろいろな色の人がいて、識別に役立つ。
 なお俺はリーリアに確認してもらったところ、金髪に緑目だった。
 黒目黒髪ではないらしい。

 冒険者ランク制度はあり、EからAそしてS、SS、SSSまでだ。
 SSS冒険者は世界に数組しかいないらしい。

 俺は記入用紙を返却して、しばらく待った。

「はい登録完了です。こちらがギルドカードになります」

 定番になっているギルドカードだ。
 ランクはE。カードの色というか種別は木の板だった。

 これで俺も冒険者なんだな。

 なんだかじーんとしてしまう。
 異世界! 冒険者! 冒険者ギルド!
 といえば、一度はやってみたい定番だ。

 カードには「冒険者支部ハドリントン」という都市名、管理番号、名前、ランクが記載されていた。

 この世界でもちゃんと番号管理が導入されているのを見て、一応発展しているところは発展しているんだな、という印象を受けた。

 ちなみにギルドカード登録料は、この前の薪割で稼いだ額で足りた。

 銅貨1枚が10円。
 銅貨10枚が大銅貨1枚、100円。
 大銅貨10枚が銀貨1枚、1,000円。
 銀貨10枚が金貨1枚、1万円。

 通貨単位は銅貨1枚あたり換算で「リル」という。
 登録料は大銅貨1枚なので100リルということになる。

 ギルドを少し見学していくか。

 いわゆるクエストボードというお仕事掲示板がある。

 町の中での雑用などの募集も多い。ただどれも仕事の単価が安いように見える。
 若い女の子のウエイトレスの求人や、力仕事の募集が多いようだった。

 それらを眺めて横のほうを見ると、そちらには「ウルフの毛皮10枚」とかそういう討伐依頼系のものが掲載されていた。
 「ビッグディアの毛皮1枚~20枚」といったあいまいな依頼もある。
 革職人が材料を買い求めているらしい。

 俺は併設されている雑貨店によってナイフを見てみる。

 一番安いナイフは量産品で1つ銀貨1枚だ。
 日本円なら1,000円だから安いといえば安いが、貧乏人には結構きつい。

「うーん、あー。くぅ、この一番安いナイフください」
「はい、お買い上げ、ありがとうございます」

 薪割で稼いだのは銀貨3枚ぐらいだ。
 残りは心もとなかった。

 しかしナイフすら持ってないで出歩くこと自体が危険だ。
 もちろんそれには町の中を歩くことも含む。

 スラムの住人などからすれば銀貨1枚でも大金だ。
 肉串が1つ大銅貨1枚くらいなので、銀貨があれば10本買える。
 俺ぐらい貧乏でも十分ターゲットになる。

 向こうは知らないだろうけど、特にこういう世界に慣れていない俺なんて、カモもいいところなので。

 こうしてナイフ一本を装備して、俺は次の目標「薬草採取」をすることにする。
 先ほどクエストボードの常駐依頼という事前に取る必要のない、買取相場表を見て、薬草を採ると決めたのだ。

 ギルドでの買取は安いが、ほかに販売先の確保もできないペーペーにはありがたい制度だ。存分に使わせてもらおう。

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