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文芸部でも恋がしたいし異世界小説も書きたいから両方する!!
第7話F2「異世界の風景」
俺ハイルは10歳の洗礼で「ポール・マスター」というギフトを得た。
ギフトともいうし、普通に能力すなわち「スキル」ともいう。
神から与えられたものはギフトだが、普通に所持しているスキルとはそれほど区別されていないらしい。
算術スキルとか魔法とか、剣術スキルとか。
とにかくどのような由来にせよ、能力者である「スキル持ち」はその分評価が高い。
特にレアスキルは大幅な評価上昇がある。
「ハイル、やっぱりあなた私が目を付けた通り只者じゃないじゃない、すごいわ。なんだっけ『ポーン・マルター』だっけ?」
「違うって『ポール・マスター』だよ」
「はいはい。それで何がどうすごいの?」
「棒状の物体なら、どんなものでも武器として使えるセンスがあるってスキル」
「へぇ」
そういうことだ。
俺は棒状の武器が得意ということだ。
「えいやぁ」
とまあこんなふうに、薪を割るのはお得意中のお得意だった。
「さすがハイル。薪割上手! あはは!!」
「あ、あぁ」
この都市内ではほぼ誰でもできる薪割で褒められても微妙だけど。
リーリアはなんでもなんでも、俺をよいしょしてくれる。
リーリアはかわいい。
安い薄水色に染め上げられたワンピースを着ているが、顔立ちは天使のようにかわいいので、まるで花が咲いたみたいな雰囲気をまとっている。
ワンピースは生地を節約するためにミニ丈なので生足が露出していて、ちょっと現代人から見れば、ややオマセさんに見える。
この近所の女の子たちはみんなこんな感じのミニワンピだけど、薄水色を着ているのは彼女だけだ。
普通は薄茶のもっと安いワンピースをみんな着ている。
服を染めるのはそれだけ値段がする。
値段で言うと、倍ぐらいなのだとか。
そんなちょっとしたお洒落の違いが彼女を魅力的に引き立てている。
近所の洟垂れ小僧たちは、そんなことはよく分かっていないながらにも、彼女をかわいいと認識しているのか、よく通りすがりに目で追っていた。
ということで近所では「リーリアちゃんは、ちょっとだけ変わっていて、みんなより少しかわいい」という評判だった。
俺はこの3日間、彼女の日課である薬草採取に従う雑用を手伝っていた。
具体的には、採ってきた薬草の選別だ。
「一応、私がダブルチェックするけど、ちゃんと見て悪いところは取り除いてね」
「おっけ、おっけー」
「期待してるから」
「お、おう」
今は春の終わりだけれど、薬草は年間を通じて使用するため、採れる時期に集中して収穫して、乾燥させておくのがこの国ではセオリーとなっている。
色が茶色く変わっている葉っぱは取り除かなければ、売値が下がってしまう。
これは葉っぱの単純な重量の値段よりも、混ざりもののペナルティーのほうが割高なので、取り除いたほうが買取が高くなる。
錬金術には一定以上の品質を要求するらしい。
もちろん品質の低いまま錬金や民間薬の粉薬にする薬師もいるが、安かろう悪かろうというものだ。
リーリアとお母さんは品質が高いものに高値を付ける目利きができる錬金術師と取引をしているので、手は抜けない。
ちなみにお父さんはいるらしいのだが、話題に出たことがないので、空気を読んで質問していないので、いるだかいないだか分からない。
一応として父親の衣類や食器はあるので、存在自体はしているようだ。
カーン、カーン、カーン。
朝、日の出くらいの時間、午前6時くらいに教会の鐘が3回鳴る。
これが朝の1の鐘だ。
この世界の人はこの鐘でだいたい起きる。
近所で共有の井戸から桶で水汲みをする。
釣瓶は、二連滑車どころか滑車もついていないので、縄を直接引っ張って汲み上げなければならない。
少し使いづらい。
顔や手を洗った後は、朝ご飯の支度をする。
かまどはもちろん薪ストーブのようなものを使う。
貴族の家では魔道具製みたいではあるが、庶民にまでそんないいものは回ってこない。
「ファイア」
ただし火付けは生活魔法「ファイア」のお世話になっている。
これはお母さんの自慢の魔法の一つだそうだ。
そうしてこうして朝食の鍋が出来上がった。
「いただきます」
食事は基本的にジャガイモのスープだ。
薄くスライスして乾燥させたジャガイモをすって粉にしたものを使用する。
小麦粉よりはジャガイモの風味がして少しだけ甘味もある。
ポタージュといえばお洒落ではあるけれど、味付け自体は塩味のみでそれに玉ねぎと大根とシイタケが入っていて、それから少しだけベーコンを入れる。
ベーコンはこの家では貴重なタンパク源だけど、量は少ない。
今朝は春だからかサラダもついている。これは裏の狭い畑で採れたものだ。
なんの野菜かは判別が難しいがベビーリーフの一種だ。
軽く塩を振っていただく。別に味は悪くはない。
しかし主食であろうパンすら無かった。
でも別にこの辺の家では、みんなパンは贅沢品に分類されるらしく、食べている家はあまりないそうだ。
小麦栽培が盛んではないのだろうか。
でも転生直後に見た平野部には、小麦畑もジャガイモ畑も見えたので、そういうことではないようだ。
単に食生活の常識が違うというか。
とにかく俺はスキルのおかげか薪割で活躍した。
「おお、君、君、きれいに薪割るね」
「そうですか。スキルのおかげみたいで」
「へぇ、面白いスキルだね」
「まあそうですね」
「余裕で暇ならうちの薪も割ってもらっていい?」
「いいですよ」
ついでに調子に乗って、近所の薪割も受け持ってしまった。
どんどん薪を割る。
スキル最高!!
薪割たーのしー。
そうしてまたほかの近所の人に声をかけられて、薪割をする。
めっちゃ薪割った。
人生でこんなに薪割したことないよ。
と思ったけど、そもそも前世では薪割なんてしたことがないのだった。
お駄賃として、相当量の銅貨をもらった。
小金持ちになった。
「ハイルってすごいんですね!」
「あ、ああ」
こうしてリーリアとお母さんの分まで、屋台に行き「肉串」を買ってきた。
「お肉、おいしいです」
「本当ね、ハイル君ありがとう」
「いえいえ」
3人で、肉串を1本ずつ食べ、少し豪華になった夕食を堪能したのだった。
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