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文芸部でも恋がしたいし異世界小説も書きたいから両方する!!
第14話F6「リーリアと薬草採取」
ゴブリンを葬った俺は、のんきに薬草採取を続けていた。
それから数時間。
そしてふと気が付いたら、なんか周りの採取者たちの動きがおかしい。
いつもはバラけて採取しているはずが、数人ずつグループを作っているのが見える。
「おい、坊主」
「え? あ、俺?」
「そうそう、あんた。すぐ向こうでゴブリンの死体が見つかってさ」
「ああ、そうなんですね」
「ゴブリンも脅威だが、それを倒したものが何か分からなくてな。人間っぽいから一応警戒しつつ、グループを作って採取してるんだ。お前も俺のグループに入って近くで採取してくれない?」
「いいですよ」
あ、それ俺です、と言える雰囲気ではなかった。
もしかして「俺やってしまいましたか?」ではなかろうか。
物語というのは、何か事件が順番に起こって進行していくものだけれど、俺の物語はそんな事件とかいらない。
平和にのんびりしたい。
でも本格的に冒険者になったら、事件の連続かもしれないな。
事件といっても魔物を倒して歩くというだけだけど。
とにかくおじさんと、それから16歳くらいの姉妹が同じグループらしい。
美少女たちにお近づきになれるのは、ちょっとうれしい。
一人だったから寂しくて。
姉さんたちはかわいいし、おっぱいもあるし、ミニワンピから出ている脚もきれいだ。
目の保養になるとか考えつつ、薬草を採取していく。
「ところで坊主、そのナイフ槍、なかなかいいな」
「でしょ?」
「みんな腰を屈めてナイフで収穫するのが普通だったから、思いつかなかったが、それなら屈まなくていい」
「だよね、うん」
「今度から俺たちもまねしていいかな?」
「あ、はい。もちろんです。どんどん勝手にまねしてかまいませんよ」
「それは助かる」
ナイフ槍には、ゴブリン戦でも活躍してもらった。
薬草採取でもこうして助かっている。
本当にナイフ槍様様なのだった。
カーン、カーン、カーン。
お昼の12時の鐘だ。
俺はバッグがいっぱいになったのを確認して、戻ることにする。
「それじゃあおじさん、俺は先に戻ります、いっぱいなので」
「ああ、気を付けて」
「おじさんたちこと、気を付けて」
「「じゃあね、ばいばい」」
美少女姉妹が挨拶してくれる。
俺はそれに笑顔で返して、ちょっとだけうれしくなって歩いていく。
男は何歳でも現金なものだ。
ギルドには寄らず家に戻ってくる。
「ただいま、リーリア」
「おかえり! ハイル。ご飯まだでしょ。食べるわよね?」
「ああ、あるなら助かる」
「じゃあ一緒に食べましょ、実は待ってたの」
「そうなんだ、ありがとう」
リーリアそれからお母さんとご飯を一緒に食べる。
この家では一階がキッチンとダイニングなので、ダイニングにテーブルがあって、そこの椅子に座って食べる。
ちなみにこの世界では普通の家の中は土足禁止だ。
もちろんテレビとかは置かれていない。
木戸の窓が開け放たれていて、外の明かりが入ってきて、けっこう明るい。
裏庭の様子もそこから見えた。
この家は北側に玄関とキッチンがあり、土地代が南向きより少し安い。
その代わり庭は南向きなので、ダイニングには光がたっぷり入ってくる。
ちなみに借家ではなく持ち家だそうだ。
庭の木には、虫を食べにくる鳥がささやかな緑を求めてやってくる。
虫は蚊など不快害虫はほどんといないが、チョウチョなどはいるようで、そのイモムシがたまに木に潜んでいる。
鳥は益鳥なので、この町では有難がられている。
「ヒヨドリがまた来てたわ」
「そっか」
こうしてまたジャガイモスープを飲んで、食事を済ませた。
「そういえばゴブリンと遭遇してさ」
「えっ、ゴブリン?」
「うん、ゴブリン」
そういうとリーリアは目を丸くして、そしてだんだん険しい顔つきになった。
「そんなダメ! 危ないわ」
「まあ、そうだけど、じっさいすごく怖かったけど、なんとか勝てたよ」
「そんなっ!」
「ほら、魔石? っていうのかな」
俺は紫色の3cmくらいの水晶のような石を取り出して見せる。
「本当だ……お父さんに見せてもらったことがあるの、本物ね」
「だろ、俺は勝てたから大丈夫」
「ダメ! もうそんな危ないことしないで、そうじゃなかったらパーティーを組んで」
「パーティーかぁ、うん。考えておく」
そうして食休みを挟んで、また出かけていこうとしたとき。
「待って。私も行くわ」
「え、リーリアも?」
「うん。午後からはどのみち薬草採取に行く予定だったから」
「それならいいかな」
「一緒に行きましょ」
「ああ」
リーリアと薬草採取か。
まあ、それも悪くはないかな。
ちょっと期待もある。近所でも評判の美少女と一緒に行動できるのは、素直にうれしい。
「お母さんはほかの仕事があるあら、一緒じゃないけど、二人でいきましょ」
「分かった」
どうやら母親付きではないらしい。
こうして俺とリーリアがパーティーを組んで、薬草採取に向かった。
「先に材木屋に行って、この槍と同じものを作ろう」
「うん」
材料を買い、城門を通って、草原に到着した。
ナイフ槍を作りリーリアに渡した。
「ありがとう。大切に使うね」
「あ、うん」
ナイフはもともとリーリアが使っていたものなので、作ったといっても紐を結んだだけだ。
それでもリーリアはどこか大切なものを見るような目でナイフ槍をしばらく眺めていた。
大切にされる分には悪い気はしないが、どこかくすぐったい。
遠くのほうでは午前中にいたおじさんもいて、彼もナイフ槍を持って薬草採取をしていた。
一度町に戻ったようだ。
リーリアと草原で二人っきり。
もちろん少し離れたところには人がぽつぽついるが、近くにいるのはリーリアだけだ。
なんだか意識すると、少し緊張する。
ふとリーリアのほうへ視線を向けると、彼女もこちらを向いてきて、にっこり笑みを浮かべて答えてくる。
そんなちょっとしたことが、ことのほかうれしい。
「なんだろう、小さな幸せだな」
「え? なに? 聞こえない」
「なんでもないよ、リーリア、大丈夫」
「それならいいわ」
リーリアとたまに二言三言会話をする。そんな些細なことが幸福なのだろう。
冒険者になると思っていたけれど、こういう薬草採取も悪くない。
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