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文芸部でも恋がしたいし異世界小説も書きたいから両方する!!

第13話R8「宮古ヒスイ」
 転校生のヒスイちゃんはヒナコと同じセーラー服に身を包んでいる。
 しかし胸部の盛り上がりがセーラー服を押し上げていて、お腹のところはもちろん「乳袋」のようにぴったりになるわけがなく、だぼっとしていた。
 同じ服なのに同じには見えなかった。

 そして最近ことさら流行っているミニのスカートは、彼女の細い脚にマッチして、清楚な女子高生を演出しているが、総合的に一言でいえば「エロい」。

 なんだろう清楚と色香が同居していて、そのイケない感じが絶妙にエロスを放っている。

 もちろん男子もそして女子さえも、ちょくちょく後ろの席に視線を投げてよこす。
 隣の席の俺はそれをよく観察できた。
 本人からすれば、その視線を向けられているのは自分でたまったものではないだろう。

 そういう意味で、注目されても一切我関せず昼寝を決め込むのはふて寝なのか、それとも視線から逃れたいあまりの逃避行なのか。

 美少女というのもなかなか気苦労がありそうだ。


 お昼になった。

「はぁよく寝た」
「ああ、転校初日からよく寝てるな」
「そういうカンちゃんだって寝てたじゃないですか」
「まあ、そうだが」
「だって昨日も夜の執筆に忙しくて……眠いの」
「執筆?」
「あ、うん、なんでもない」
「もしかして小説とか書くのか? 俺もそうなんだが、もしかして同類なのかな」
「そうなんだ、うおおぉ、そういえば同類の匂いがする」

 眠たそうだった目を丸く開いて、鼻を俺に近づけてくるヒスイちゃん。
 その興味津々な顔は、かなりかわいい。
 まるでネコみたいである。
 ヒスイなのでカワセミのはずだけど、ネコである。

「匂いなんて嗅ぐなよ」
「いい匂いがしそう、同類の、じゅるり」
「本の虫の匂いしかしないはずだが」
「そうそう、そういう匂い。匂うぞ」

 変な趣味でもあるのか、くんくんしてくる。

 そんなことをしているうちに後方のほうから鋭い視線を感じる。

 ――ヒナコだ。

 喧騒に紛れて目立たないが、じっと俺を見つめてくる。
 その顔には「カンちゃんのえっち」と書いてあるようだ。

 いや俺は別にえっちではない。匂いを嗅がれているだけで。

 ヒナコはよく分からないが、教室では俺に話しかけることが極端に少ない。
 むしろ態と避けているような節さえある。

 ヒナコの非難がましい視線を気にしつつ、俺は目線をヒスイちゃんに戻す。

「お昼一緒に食べましょう」
「あ、ああ、俺弁当なんだけど」
「お弁当を食堂に持って行ってはダメなんですか?」
「いや、かまわないけど」
「じゃあ行きましょう」

 なかば強引だが、俺はヒスイちゃんに気に入られたようで、腕を組んで食堂に連れていかれる。
 もちろん食堂の場所は分からないから、俺が右、左とか指示をするんだけど、ぐいぐい引っ張っていく。
 それも俺の腕をがっちりつかんでいるので、その……すげえ柔らかい2つの膨らみが腕をもろに包み込んでいる。
 なんだこれ、すげえ。

 ヒナコではこうはいかない。
 よく後ろから抱き着いてくるときに、そのささやかなお胸様が当たっている感触はあるけれど、ここまで強烈ではない。

 ぷよんぷよんしていて、無重力みたいだ。
 よく高速道路で空気を触るとこんな感じになるというが、空気より柔らかく感じる謎すぎる。

 そうして引きずられて食堂に到着した。
 あ、弁当忘れてきた。

「弁当持ってくるの忘れた」
「あぁ、あのまま連れてきたから、ごめん」
「まあいいや、たまには食っていこう。弁当は放課後にでも食べるから」
「うん、ごめんね」
「いやいいよ」

 こうして2人で列に並ぶ。
 転校生だからといっても、ほかのクラスまで知れ渡っているわけではないので、知らない人程度の注目度、つまり誰も気にしていなかった。
 教室よりむしろ視線は少ない。
 しかし、やはり巨乳を見ている視線は飛んでくる。隣にいるとよく感じる。

「カツカレー1つ」
「私は唐揚げ定食」

 注文を済ませ、すぐに受け取る。
 この食堂はメニューが少なめなのだが、先に調理が済ませてあり、盛り付けだけなので待ち時間が非常に少ない。

 すぐに受け取って、席に座る。

 俺たちはジャガイモスープではなく食生活にそれほど困らない現代でよかった。
 ふと登場人物たちに思いをせる。

「なんか『思いを馳せる』ってかっこいいよね。一度は使ってみたい台詞の一つ」
「あーうんうん、分かる分かる。カンちゃんとは趣味合いそう、私うれしい」
「だといいな」
「細かいアニメの趣味とかは違うだろうけど、なんかこう、もっと漠然とした方向性とかは近いものを言葉の端々で感じるんだよね」
「そうか、そういってもらえると、うれしい」
「だよねー、にゃはは」

 思ったよりも、話しやすいし、明るい性格なのかもしれない。
 最初はもうちょっと根暗っぽいイメージがあった。
 なんとなく陰キャの匂いがするのだ、彼女からは。
 もしくはオタク特有の光だけを浴びている人種とは異なる雰囲気というか。

 そして、そういう影があるところは俺たちと共通している。
 ありていに言えば、まぶしすぎず、落ち着く。

 ヒスイちゃんとは、放課後部活に一緒に行くということまで約束をして、教室に戻ってきた。
 教室に戻ってきた俺たちは、注目の的になっていた。

 ――う、これは面倒くさいぞ。

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