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文芸部でも恋がしたいし異世界小説も書きたいから両方する!!

第11話R7「プロローグ症候群」
 朝起きて、学校に行く。
 昨日は2話も書けた。

 誘惑も多かったが2話も書ければそこそこだろう。
 書ける人は一晩で1万文字とか書けるそうだが、俺はそうではない。

 教室につくと、俺も陰キャの一員ではあるが、無難に挨拶くらいはする。

「おはようございます」
「「おはよう、カンちゃん」」

 誰が犯人かは知らないが、すでに教室でもすっかり「カンちゃん」にされていた。
 第一容疑者は猫を被っているヒナコであるが、このクラスには他にも同じ中学の男子が2人ほどいるので、第二第三容疑者も十分怪しい。

 とにかく仮ではあるが4話で合計約1万文字を書けた。
 目標は10万文字であるからして、すでに10%、10分の1書けたことになる。
 これを10回繰り返すだけで、目標達成だ。

 しかし序盤はいいのだ。
 序盤はテンプレ的展開を自分なりにアレンジしつつも書いていけば、すんなり書けるのだ。
 今まで思いついた小ネタとかも織り交ぜつつ、序盤戦は書きやすい。

 ところがここから中盤、後半となるにしたがいネタも尽きてきて、そしてテンプレが通用しなくなると、その人の本来の能力が問われてくる。

 経験的には文字数が進めば進むほど、自力が重要になってくる。
 ということで、文字数だけで言えば10%だが、苦労を数値化すると3%くらいだろうか。

 この序盤も序盤を何回も書いているとこなれてくるのだ。
 そうして途中でリタイアしてまた新しい話を書き始めると、序盤ばかり書くことになり、序盤のプロになってくる。

 ――ヒロインは出すなら早ければ早いほどいい。
 ――創成物語などプロローグは全体的に言えば不評である。
 ――最序盤に少しだけ先の盛り上がるシーンを先に見せるとよい。
 ――序盤の時点で明確な主人公の長期目標があるとよい。
 ――序盤では固有名詞をむやみやたらに並び立てない。
 ――ザ・長文説明をしない。

 こういうよくあるテクニックをだんだん覚えていく。
 すべて適用するかはその時その時だけれど、経験値というのは実際にある。

 こんな感じにプロローグにだけ強い、序盤先生になってくる。
 今考え付いたがこれを「プロローグ症候群」と命名したい。

 チャイムが鳴り、ホームルームが始まった。

「さて、急だが、転校生を紹介する」
「ええ、そうなんですか?」

 ガラガラ。

 教室前のスライドドアが開く。

 金髪碧眼ストレートロングの美少女だ。
 そして巨乳である。

 まあ金髪だからどうした、ではある。
 この国では昔から国民の1割ぐらいは金髪のはずだ。
 だが、あこがれはある。金髪碧眼。

「転校生の宮古みやこ翡翠ひすいです」
「「おおぉおおぉ」」

 彼女がペコリとお辞儀をすると、その凶悪なおっぱいがボインと揺れた。
 男子の大興奮の声が教室に響いた。

 ピコリン。

 俺のスマホが鳴った。

 さっと確認する。緊急の用の場合もあるので。
 この学校では緊急事態に備えてスマホの電源はつけたままにすることが許されている。
 そしてそれを確認するところまでは黙認されていた。

『ヒナコ:おっぱい見過ぎだよぉ。カンちゃんのえっち><』

 どうやら緊急ではないな。

『ヒナコ:おっぱい大きい子が好きだったの???』

 おっぱいちゃんはまだ前で自己紹介とか質疑応答とかをしている。

『ヒナコ:お肉いっぱい食べれば、おっぱい大きくなるかな?』

『ヒナコ:巨乳っていうんだよね? 巨乳、きょーにゅう』

 ヒナコの席は前のほうだ。必死にスマホをいじっているのが見える。

「では席は廊下に用意してあるから入れてくれ、場所はカンちゃんの横だな」
「うぉおっと、俺ですか?」
「他にどこが空いてるんだよ? なんだカンちゃん不満か?」
「いえ、大丈夫です」

 俺は窓側、最後列を死守したい。
 ここは昼寝に一番いい席である。

 ヒスイちゃんの横が嫌だとか言ったらぶん殴ってるところだった。
 横おっぱいが見放題なのに不満があるとか陰湿な嫌がらせをするところだった。

 とか意味深な邪教の教えが聞こえてくるが、あはは、俺は聞かなかったことにしよう。

 ヒスイちゃんが一生懸命机を運んで入ってくる。
 ぶはぁあああ。

 持ち上げた机に胸が乗っていてデカい丸いものがでーんと鎮座していた。

 こ、これは、なかなか。

「どっこいしょ」

 美少女でもどっこいしょとか言うんだな。

 席を設置したヒスイちゃんはニコッと俺に満面の笑顔を浮かべる。
 すげー攻撃力だ。

「よろしくお願いします。えっとカンちゃんさん?」
「ああ、東西とうざい環都かんとという、よろしくたのむ」
「はい、ご丁寧にどうも、どうも、カンちゃんさんとお呼びしても?」
「あはは、みんなカンちゃんと呼ぶから『さん』はいらないよ」
「はーいぃ。カンちゃんですね、よろしくですぅ」

 そうしてヒスイちゃんは席に座った。
 胸が机と体の間に挟まれて潰れている。すごい。

 ああ、姿勢よくすると胸が重いんだ。
 だから体を前傾姿勢にして机におっぱいを置くことで、それを低減しているんだ。
 姿勢が悪いといえばそうだけど、これは最適化の結果なんだな。

「ふむ、興味ぶかい」

 ピロリン……ピロリン。

 また着信だ。一応、念のため確認する。

『ヒナコ:おっぱい見過ぎ』
『ヒナコ:カンちゃんのえっち』

 おっぱいを見ていたのは事実だが、その重量と重力について検証していたに過ぎない。
 別にエッチな気持ちで見ていたのとは違う。

 まあ言っても詮無いことだ。

 こうして、騒がしくも1年3組は本日も授業が始まった。

 俺はしばしお昼寝とする。
 ついでといえばそうだが、彼女ヒスイちゃんもお昼寝派だったようで爆睡していた。
 おっぱいがいい感じに緩衝材になるようだ。
 大物である。

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