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オオカミとメカ

大隊長の狩猟
 それからの彼女の戦いぶりは、圧倒的だった。あれだけ信頼できないと文句を言い続け、他の隊員が犠牲になるくらいならと嫌々テストパイロットの役を背負ったシェーンハイト大隊長。

 だが戦場に出た瞬間の戦いぶりは、やはり私が今まで見てきた普段の彼女そのものだった。試験機の搭載武装は魔力式ブレードとハンドガン、胴体に内蔵したマシンキャノンのみ。だがその武装三種類を全部均等に試しながら、遊ぶように標的の魔物を彼女は殲滅した。

 緋眼の人狼の名で味方からも恐れられる彼女は、例え慣れない武器を使っていたとしても血に飢えた狼として任務――いや、狩りを遂行する。

『博士、終わったわよ』

「お疲れ様」


 だけど駆動系を魔法使いの魔力を前提にしてしまうのは、やはりまずかったか。

「……とりあえず動きを生身同様に滑らかにできるのは、魔力式の最大の利点ね」

「ええ」

「だけど、扱える人材が限られるなら、それは兵器として失格よ。ウチで個人利用する分には困らないけど、今のままだと絶対上層部は買ってくれないわよ。このアイデア」


――帰った後少佐もずっとそこに文句を言っていた。
 魔法使いの兵士のみが使える新兵器を上層部がどこまで喜んでくれるかどうかはまだ怪しい。魔力式で駆動するなら、それに足り得る必然性がないといけない。
 防御力は間違いなく及第点。これをベースにどれだけ操縦性を簡略化できるか。



――それから次の休暇。私達は近所のレストランに席を取って話し合っていた。

「……とりあえず、嫌だと思いながら最後までやり遂げてくれてありがとう」


 ここはまず、改めてお礼したい。

「ッケ、当ったり前じゃないのよ。ガキ扱いはやめなさいよ。だからいつまでもみんな魔女のババアとしてあんたに接するのよ」

「ッな」


 だけど今の言葉を少佐は嫌味と感じたらしい。血に飢えた狩りによる武功だけで佐官にまで上り詰めただけあって、ここは年不相応に横柄な子だ。
 ……まあ、いいわ。若さではこの子に絶対に勝てない。なんたって相手は20代前半で少佐になった共和国軍最強の戦士だから。

「……と、とりあえずお礼として奢ってあげるわ。好きなの食べなさい」

「ええ、いいの? ありがとー」


 ……返事がどう考えてもこの子の言うガキの態度に見えるけど、黙っておこう。機嫌を損ねたらこっちの負けだ。
 それにしても、この子と二人きりで食事なんて、初めてね。そもそも研究室生活が長引いて誰かと食事をする機会がほとんどなかったのだけど。あるとしたら軍のパーティーの会食くらい。

「うーん、何にしようかしら……」


 それにしてもこの子、レーション以外だと普段どんなもの食べているのかしら。異名の通り肉ばかり食べていそうなイメージがあるけど。

「――すみませーん、クリームパスタとクリームドリア、シーザーサラダいいですか」


 ウェイターさんを呼び出し口にしたメニューは――かわいいと言うしかなかった。というか、クリーム系ばっかり……
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