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スペース・スカウト~僕は宇宙の偵察兵~
第4話 新宿駅にて
「アメリカは日本への軍事的な支援に合意しました……」
蓮とオリバーは火星軍が接収したタワー型のアーコロジーに住んでいた。
つけっぱなしにしてある日本のテレビからは、様々なニュースが入ってくる。
「チッ、つまんない番組ばかりだぜ。そんな事より筋肉組の体操はマダかよ!?」
オリバーは日本のテレビ番組にすっかりハマっているらしい。様々なニーズに応じるための多彩な番組作りでは、日本が優れているようだ。
「そうかな? 筋肉の番組もためになるけど、僕はこの前の女の子が一人でおつかいに行く番組が面白かったな」
「ああ、あれも面白かったな」
なんだかんだでオリバーは付き合いが良い。
蓮がテレビを見ていると、いつの間にか横に来て、プロテインの水筒に水と粉末を入れてシャカシャカしながら横へ座る。そして一緒に視聴してくれる。
「なぁ、オリバー。俺は思うんだ。これだけの国力を持った国が負けたままってありえないと思うんだよ」
「確かにな、後藤隊長も仮初の平和だかなんだかって言ってたしな」
そのような静かな午前中に、サイレンが鳴り響いた。
「全員、武装して新宿駅へ向かえ! 日本軍の反撃だ!」
後藤隊長の声が響く。
「クソッ、今日の筋肉番組はおあずけかよっ!」
「僕もお使い番組の続き見るんだ!」
新宿中に日本のものと思われる放送が流れた。
「日本は憲法を改正して、日本軍を組織した! そして盟友アメリカの支援を受けて反撃を開始する。火星の民よ、降伏せよ!」
新宿駅の壁の向こうには、最新式のパワードスーツに身を固めた日本兵がズラリと並んでいた。
「銃は撃つなよ! 恐らく効果が無い。全員トマホークを装備しろっ」
その時である。
再び放送が流れた。
「日本と火星間で和平協議が開始された……両軍ともに戦闘停止せよ!」
◆
「あーあ、今日もAIの監視かぁ。元の生活に戻っちまったぜ」
オリバーが以前の職場でモニターを見つめている。
二人とも無事に生還して火星へ戻って来ていた。
「いいじゃないか。日本領土は取り返されたけど、火星は独立できたのだから。それよりさ、自販機に天然物のお茶が入ってたんだ! しかもすっごく安いんだよ! オリバーも飲んでみろよ」
蓮がオリバーにお茶の入ったボトルを渡す。
「静岡県産? なぁ、静岡ってどこだ?」
「分からないけど、メイドインジャパンって書いてるよ! 日本産だよ! テレビもつけようよ」
「あいよ」
「次のニュースです。火星と日本の不平等条約がすべて撤廃され、調印式が……」
「プハッ、このお茶うめぇなぁー。俺らが飲んでいた合成品は何だったんだよ? やっぱ天然物にはかなわねぇな!」
オリバーがボトルを傾けてゴクゴク飲む。
「ああ、本当にね。火星軍に入って良かったよ!」
連はちびちびとお茶を楽しんだ。
END
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