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黄金の魔女フィーア (旧版)
作戦開始
「……コホン、話が長くなってすまなかった」
ある程度語って満足したのか、一転して誠実な謝罪。本当は真面目な人だということがよくわかる。ただお母さんへの愛が重すぎるだけで。
「では仕事の時はよろしく」
「……ええ」
主人の別れの挨拶が聞こえる中、店の外へ出る。扉のすぐ隣にはミレーヌがいた。
「……おかえり」
らしくない静かな声。中で何があったのか、その全てを理解しているかのような態度。
「どう、思い知ったでしょ?」
ええ、そうね……お母さんというありふれた題材であんな大演説ができるなんて、あの人は本物だわ。一緒にいてもお母さんと比べられるとか、そういうことがよぎりそうね。あなたみたいな子なら尚更。
「……それでも、置いて逃げるのはさすがにどうかと思うわよ?」
「嫌なものは嫌なの。それとも居眠りとか本読みで迎撃しろっての?」
……それはそれで怒られると思うわよ。あの人、根は真面目そうだから。
「いい男だと思ったのに……すっごくガッカリ」
――そして二日後。ついに出発の時が来たわ。
「君達は第七班に配属されることになった。第七班の任務は村長の屋敷を調査すること。本格的な殲滅は他の班に任せていい。無論調査の障害になるものは排除してくれ」
書類を見ながら要項を説明するライト。落ち着いた表情からは心配の感情を感じさせない。その顔は完全に戦士を率いる指揮官にふさわしい顔であった。
――他の二人と違って、私は彼に実力を示していない。なのに彼女らと同等の信頼をしてくれている。ミレーヌの証言だけで。
向けられた信頼に応えるのが魔術師の義務、少なくとも私はそう思っている。彼の期待に応えれるような結果を出さないとね。
「では行こうか、二人共。カマーン村へ!」
集合場所へ向かう私達。ティファレトさんが先頭に立って。
二台の馬車は一台あたり四人乗り。もっと乗せられそうな大きさだが、荷物のために定員をあえて四人にしてるのでしょう。
周りには冒険者と思える人も四人いる。
革製の鎧を纏った男性が二人、ローブを纏う女性が一人のパーティ。男性二人の装備は一人が普通のブロードソード、もう一人が長弓。
剣士は茶髪のざんばら頭で、鎧の隙間から青い服が覗いている。長弓の男は彼より一回り背が高い。女は私と同じ魔術師。
ロングのピンク髪にアクティブな革製のワンピース型ローブ。最近流行っているらしい、オシャレと機能性を両立したコーデ。まあ若い子はほぼオシャレだけを理由に選んでると思うけど。女の子なら尚更。
――正直、子供の時から魔法を学んできた身としては、どうも好きになれない流行ね。軽薄な覚悟で魔術を学んでいるように感じるわ。まあミレーヌくらい付き合いが長かったら受け入れられるけど。
もう一人は薄手だけど金属の鎧を着た男性。離れたところで一人、保存食を食べている。装備はもう片方の剣士とは比較にならない長さの大剣を背負っていた。
「この人達が同じ班のメンバーなのね」
早速視線を向けるミレーヌ。ああ、いつものあれね。
「ふんふん、見た目だけはなかなかいい男達ね」
この子の好みは結構幅が広い。線の細い美男子はもちろん、筋肉の塊みたいな巨漢にもこのように評価することがある。
ちなみに私の視点から見ると、長弓の男が筋肉系、他二人が美男子系に見える。ティファレトさんも見た目だけなら普通に褒めていたことを考えると、良くも悪くも切り替えが早い子だ。
「ミレーヌ、またそれ? これから戦いに行くのにそんなことしている場合なの?」
さすがにここは真面目になってほしいから、一言断っておく。
「えーいいじゃない。これこそが私の生きがいなのだもの」
知ってはいたけど、聞く気はないみたい。
「そんなことをしてたらまた顔だけの男を引くわよ?」
彼女の運の悪さは折り紙付きだからね。
一応フォローしておくと、彼女だって容姿が悪いわけではない。ただちょっとわがままなところは好き嫌いが分かれるだろう。実を言うとそこは私もちょっと苦手だ。
「またって何よ! そんな言い方されると私がいつも同じ失敗をしてるみたいじゃない!!」
いや、それは事実でしょう……ティファレトさんの時の失敗から少しは学習してよ……
「……待った。よく考えたらやっぱその通りかも」
「ええ?」
なぜか不安げな声を上げるミレーヌ。何やら考え込んでいる様子だった。
「おい、あそこにいるのフォレノワールの魔女じゃねえか?」
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