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黄金の魔女フィーア (旧版)

ガーゴイルの脅威
 倉庫の中は、何一つ灯りがなかった。入口の辺りに手持ちのろうそく立てが置いてあるだけ。おそらくゾンビ騒ぎが起きる前から、灯りはろうそくだけで賄っていたのでしょう。

「二人共、離れすぎるなよ。特に後ろに気をつけるんだ」

 彼はここにあるろうそくを使うつもりらしい。しかしろうそく立てを使うとなると片手がふさがってしまう。それだと戦いにくいだろう。

「待って。あなたはランタンを使って。これなら腰に下げるだけでいいわ」

 こういうことがあるから、持ってきておいてよかったわね。

「おや、いいのかい?」
「自慢の刀が使いにくいと困るでしょ? 後で返してくれればそれでいいわ」
「ありがとう。なら遠慮なく使わせてもらおう」

 ランタンとろうそく立てを交換する。それでは調べ始めましょうか。

 ろうそくの火を頼りに倉庫を見回す。濃い色の土壁に棚がかけられている。置いてあるものはつぼや古びたナイフ。一階よりは金になりそうなものがあった。
 しかし量が少ない。空っぽの棚がほとんどだ。まるで誰かが持ち出していったように。

「妙だな。ここにも価値がありそうなものがほとんどないぞ」

 そうね。特に金物が全くと言っていいほどないわ。この分だと期待しない方がいいかしら。
 その時、奥の方で何か音がした。
 足音……いや違う。

「きゃあああ!!」

――その時、金切り声が響く。あの魔物が現れた時と違って、本物の女性の金切り声。間違いなくエミリーのものだ。

「……!?」

 聞こえた方向は入口からだ。急いで振り返ると、そこにあったはずの扉がない。

「まずい、何かあったみたいだぞ!!」

 真っ先に駆け出すティファレトさん。私も慌てて追うが、片手が使えないから走りにくい。
 それでも入口はすぐそばだからあっという間にたどり着いた。
 どういうわけか、外からの灯りがない。入口が岩のようなものでふさがれている。

「おい、なんだこいつら!?」

 アレックスが剣を向ける先にいるのは、二体の槍を持った石像。
 そして彼らは血まみれのエミリーを捕まえていた。

「アレックス!? 何があったの!?」
「わからねえ! 気が付いたらこいつらが後ろに……」

 間違いない、ガーゴイルだ。一体は入り口を塞ぐ形で立ち、もう一体はエミリーの腕を押さえつけている。
 なんとかしてエミリーを助けないと。

「フィーアさん、後ろだ!」
「え?」

 振り向いた先にいたのは、無数の甲冑。中身がないはずなのに、自分の意思を持っているかのように動いている。
 こいつらも、きっとガーゴイルだ。数は十体以上。囲まれたらひとたまりもない。
 どうするべきか考えていると、背後にいたガーゴイルたちが動き出した。
 エミリーを抑え込んでいる奴は、彼女をつれて逃げ出した。もう一体は、アレックスの方へ。

「アレックス君! 後ろは私達が抑える! フィーアさん、行くぞ!」

 二人は武器を構えて戦闘態勢に入る。
 迷っている暇はない。エミリーを助けるには排除しなくてはならない。そうしなければ全滅を待つだけだ。

「大地よ怒れ、アースブレイク!!」

 建材に包まれていない土の床が分厚い板のように隆起し、甲冑を貫く。突き出た土の柱が複数体をまとめてなぎ払った。
 やったかと思ったけど、手ごたえが浅い。やっぱり硬い。
 だが動きを乱しただけでも、充分だ。

「ティファレトさん、今よ」
「ああっ!」

 一気にティファレトさんが間合いを詰める。土柱の間をすり抜けて懐に入り込み、渾身の一撃を叩きこんだ。
 鎧ごと砕け散った破片が飛び散る。これで一気に数を減らせた。でもまだ終わっていない。残った連中が襲い掛かってくる。
 土魔法を発動させる前に、ティファレトさんの刀が一閃する。その斬撃が複数のガーゴイルを切り飛ばした。
 やはり強い。さすがムラクモ族の未来の族長だけはある。
 だけどまだ安心はできない。ガーゴイルはまだ残っている。私は土壁を作りながら後退した。
 このままではジリ貧になる。どうにかして突破口を見つけなくては……。
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