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黄金の魔女フィーア (旧版)

テオドールとミレーヌ
【おしらせ】

テオドール達の別行動パートは、テオドールの視点を中心とした三人称で執筆しています

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 二階にある部屋は寝室と執事室。それぞれの個室には指輪やネックレスのような金物があるくらいだろう。
 しかしテオドールは調べる前から違和感を覚えた。
 不思議なことに、廊下に美術品が何一つ見当たらない。壁についた額縁を外した跡に、何も置かれず取り残された石造りの台座。先客がいたのか?

「さ、テオドール。さっさと調べて合流しよ」

 一方でミレーヌはそれらに対して疑問を感じていない。

「……いーや、ダメだ。もしかしたらこの事件に関わる情報がどこかにあるかも知れねえ」

 念入りに調べるべきと思うテオドールは賛同しなかった。

「だから丁寧に調べるべきだ」
「……まあいいわ。だったら丁寧に調べましょ」

 反抗的な視線を感じたのか、ミレーヌは考えを変える。幸運にもそれはテオドールの意向にそぐうものだった。



 とりあえず彼らは最寄りの寝室を調べた。

「わー、災害の真っ只中とは思えない!!」

 寝室は全く荒らされておらず、家具もベッドも原型を保っている。血の臭いもせず、臭うものがあるならカビくらい。

「ベッドとかもちょっと埃っぽいけど全然使えるわよ!」

 一気に飛び込み、喜びを示すミレーヌ。気に入ったようだ。
 しかしテオドールは険しい顔をしていた。戦場でベッドにありつく奴がいるか? 元正規兵である彼は無警戒なその様にあきれ果てる。

「テオドール、私はベッドで休むから代わりに引き出しを調べといてー」

 さらに険しい表情を向けるテオドール。彼女にとってはこれが自分なりのスタイルなのだろうが、テオドールにはそれが増長しているように見えた。

「……てめえ、バカにしてんのか」
「…………」

 互いが見合い、黙り込む。無言で怒りを示していた。

「……あんたねえ!!」

 先に怒りを爆発させたのはミレーヌであった。

「なんでさっきから私の言うこと聞かないのよ!? イエスマンならぬノーマンってわけ!? たまにはイエスって言ってみなさいよ!!」

 怒鳴られても彼がそれに答えることはなかった。

「ああもう! そんな不平不満ばかり言うような根性してるから仕事が続かないのよ! この万年二等兵!!」

 痛い指摘だ。テオドールはその様を見て、軍属時代に嫌いだった教官を思い出す。
 だがそれと同時に彼女はその嫌いだった上官が最も嫌う身勝手な部下の極例でもあった。

「あのなお前、こんなところで休んでいる間もお前のダチは情報を集めるために必死で頑張ってるんだぞ」

 テオドールの言葉にミレーヌの顔色が変わる。

「……た、確かに」
「きっとあんたのダチのフィーアさんティファレトさんも、今のお前を見たら同じこと言っているぜ」

 そう自覚すると急に恥ずかしくなってきたようだ。
 一方テオドールの方も冷静になりつつあった。彼の目線から見ればアレックス達と同様に目障りな奴に見える彼女、しかしそれでも彼女は、仲間から預かった大事なパートナーでもある。

「……ごめん」

 彼女の素直な態度に少しだけ気持ちが落ち着く。

「まあいいや。サボりたい奴に対して無理強いはしねえよ。外はお前のダチが連れてきたゴーレムが守ってるんだろ?」

 フィーアからもらった呪符で呼び出したゴーレムを使って、部屋の外の守りを固めている。何か侵入者が来た場合は警報が鳴る仕組みになっていた。

「……テオドール、危ない!」
「ん?」

 その時だった。天井から何か動く音と共に、隙間から糸が飛び出した。

「うお!?」

 咄嵯に避けたが袖の一部が切れていた。どうやら蜘蛛の巣のようなものらしい。

「フラッシュバスター!」

 ベッドに寝転がったまま、魔法の光弾を放つミレーヌ。寝そべって天井を見ていたおかげで敵の接近に気がつくことができたのだ。
 崩れた床から落ちてきた、大きな蜘蛛の魔物。この一撃で既に絶命していた。

「…………」

 まさか身勝手のおかげで助けられるとは思わなかっただろう。

「……ふーう」

 ミレーヌの魔法は出力が高いがその分彼女にかかる負荷も高い。前の戦いの反動も相まって、そのまま倒れ込んでしまった。

「……ちっ、手のかかる女だ」

 不平を言いながらもテオドールは彼女の代わりに部屋を調べるのであった。
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