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メタモルシャーク【総ルビ対応!】

サメの三枚おろし
 よるのアパートの一室いっしつ住居じゅうきょじん不在ふざいやみひかりした。残業ざんぎょうえた借手かりてかえってきたのである。

 らしたひかりうつしたもの。それは奇怪きかい景色けしきであった。ゆか一部いちぶ粘性ねんせい液体えきたいつつまれて、よごれている。さらにそこには、あか血痕けっこんもあった。

 そのさきにあるのは、ネコといぬあたまくびからしたはない。断面だんめんから背骨せぼねのぞいているそれのおおきくひらき、恐怖きょうふかんじさせた。

「…………」

――そう、かれはこの衝撃しょうげき景色けしきたりにしてしまったのだ。リビングにはいり、そのすべてを凝視ぎょうししたかれは、この惨状さんじょうまえうごけなくなった。怪奇かいき現象げんしょうぶにはあきらかに大規模だいきぼ生々なまなましいそれは、なにかの事件じけんあとなのか。

「――ちゅら!」

――ふとかれは、われかえったとき、あることをおもした。同棲どうせいしている恋人こいびとのことだ。彼女かのじょ無事ぶじたしかめるためにあわてて部屋へやちゅうさがまわった。
 きっぱなしになり、ちゅういつくされた冷蔵れいぞうや、なぞ粘液ねんえきよごされダメになった無数むすう家電かでん数々かずかずかえさずさがつづけたてに、かれ寝室しんしつにたどりいた。
 ここだけがなぜか、不自然ふしぜん無事ぶじであった。彼女かのじょねむっているみたいで、ベッドのうえふくらみがえる。

「ちゅら大丈夫だいじょうぶか!?」

 彼女かのじょさけびながら、布団ふとんをはがしたかれ――だが、そこにいたのは彼女かのじょではなく……

「ええ!?」

 衝撃しょうげきの、景色けしきだった。いたのは粘液ねんえきをまとった巨大きょだいネズミザメやつかれづくなり、きばをむき――かれにかじりついた。



 さきのどわれ、あたま胴体どうたいはなされたかれ不幸ふこうにもかれは、まだ意識いしきがあった。人間にんげんはギロチンでころされてしばらくのあいだ意識いしきがあるという。痛覚つうかくうしな恐怖きょうふなかつことしかできない生首なまくびは、サメが変身へんしんするさまた。

「…………」

 サメが変身へんしんしたのは、同棲どうせいしている恋人こいびとちゅらであった。
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