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花冠【完結】
花冠
君のために繋ぐ。
白い花と花を絡めて。
繋いで。
輪になって、その小さな頭に乗せて。
君は笑う。
「とってもきれい、ね」
幼い笑顔はとても温かくて、乳歯が一本だけ抜けた口を楽しげに開く。
いつの間に君はそんな大きくなったのだろう。
少し前まで小さくて一人でお手洗いにだって行けなかったのに。
君は知らない内に成長していた。
小さな手で、私と同じ様に花と花を絡める。
「はい、お父さんの」
所々がほつれかけた花の冠を差し出す君は、愛しくてまぶしい。
妻はこの子の成長を楽しいと笑う。
私も楽しいと感じている。
でも、何故だろう。
いつか来る未来を想像すると少し寂しくなるんだ。
「有難う」
私は冠を被せてもらう。
まるで戴冠式だ。
「お花のかんむりって、私たちみたい。 なかよしで手をつないでる、お父さんと、お母さんと、私みたい」
無邪気な彼女の言葉に笑みが溢れた。
それから。
時が経って。
当然の様に君は私のもとから離れて行った。
妻は「仕方の無いことよ」などと私に言う。
想像していた未来と同じだと、私は寂しさを感じていた。
君は美しい女性になって、簡単には会えないほど、遠くに行ってしまった。
時が経って、虚しさを抱きながら毎日を過ごすのにも慣れ始めた。
休日に妻と散歩をするのだけが楽しみになっている。
公園を抜ける途中で、花を摘む親子を見かけ、孤独を感じる時もあった。
そんな日々を過ごしていたある日……。
「お父さん」
君は私たちに会いに来てくれた。
君の腕には小さな少女が抱かれていて。
その小さな少女が両手で大切そうに持っているのは、白い花の冠。
「ただいま、これ、この子が作ったんだよ」
君は、少しヨレヨレな冠を見せ、私に手招きをする。
君の腕の中で一生懸命に手を伸ばし、近付いた私の頭に少女は冠を乗せた。
「あぁ、有難う」
私が言うと、少女は明るい笑顔を見せてくれた。
嬉しくて、温かくて、私の目に涙が浮かぶ。
「お花の冠って、私たちみたいね」
昔みたいに笑顔で君が言う。
幼かった君が繋いでくれた花の冠。
私のために、君達が繋いでくれた花の冠。
どちらもとても温かくて……。
これからも「私たちみたい」だと、笑っていきたい。
笑っていこう。
幸せは、すぐ近くにあるのだから。
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