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特二!

-パルフェ!-
「パルフェ! やっぱりPAGE ONEのパフェは最高だ!!」
 何杯目かのパフェを平らげ、深迫 美雪は感嘆符を山ほどつけた。空になるパフェを黒髪のウェイトレスがさっと片づけ、次のパフェを置いていく。
「サコよ・・・・・・なんぼほど入るんや」
 美雪をサコと呼ぶのは、超能力者養成学校の学長、水上 康安和尚である。康安和尚は、糖尿気味である事を理由に、さっきからブラックコーヒーを美味くもなさそうにすすっている。
 超能力者養成学校“慈恵院”の近所にある喫茶店で、二人はある母娘を待っていた。
「サコよ、やっぱりワシ、狐憑きなんかよう相手せんで」
「和尚ってば、馬鹿正直。なんで、世界随一のサイキックに、ホントに狐憑きのお祓い頼みにくるよ。その母親、認めてないけど、薄々感づいてるにきまってるっしょ」
 パフェに付属しているポッキーをぶらぶら口で咥えながら、美雪は宣った。肩で大きく和尚が溜め息をつく。
「ほんっと、和尚ってば、気が小さいんだから。ホントに世界随一のサイキックなの?」
 水上 康安和尚と言えば、世界でも五本の指に入る優秀なサイキックである事は、大きくメディアで取り上げられた事もある。テレパスを主とした能力を有していて、日本の“能力者”の認定には、必ずと言っていいほど、立ち会っているのだ。
「せやけど、電話で、ウチの娘は狐憑きでって、しきりに言わはるのん、どうやって説得すんねん」
「だーかーらー。帰ろうとすなー」
 美雪は、つい二か月前、“慈恵院”に入学したばかりである。“能力”は、“跳躍”。二階建ての建物よりちょっとくらいはジャンプできる。親が寛容なためか、すんなり“慈恵院”に入れた珍しいケースで、今回は、件の“狐憑き少女”が同い年と聞いて、康安和尚が連れてきたのだ。
「来たんじゃない?」
 この喫茶店のドアベルは、ごおんごおんと、やや重たく、不吉な音がする。喫茶店はいつもがらがらで、経営が傾いているんじゃないかと思うくらいなのだが、この手の面会をする時、康安和尚はここを好んで使う。ここの店主が、フラットな人間と知っているからだ。
「ぃいらっしゃぁぁい」
 店主が奥から新しいパフェを制作しながら、声をあげる。母親らしき中年女性は、いぶかしげに奥を覗いたあと、康安和尚に気づき、頭をさげた。
「パルフェ!! 美人が来た!」
「サコ」
 青白い顔をした少女が、美雪を一瞥すると、視線をまたはずした。
「雪みたいだ。いや、バニラアイスか。じゃあ、あたしはチョコアイスだね」
 美雪は、陸上競技をしていたせいもあって、色が黒い。
「違うよ。イヤミじゃない。あたし、陸上してたから、色が黒いの」
 少女は目を見開いて、美雪を見た。
「無理だよ、あたし、和尚と付き合い長いから、だいたいわかるだけで、読み取り機能はついてないもん」
「サコ」
 康安和尚が美雪を諫めるように声をあげた。いや、黙っていてほしいという本心かもしれない。母親が、美雪と自分の娘を交互に見比べている。
「あなたも狐憑きなのね」
「んにゃ。狐憑きなん、案外オバサンなんじゃねぇの? 娘、そんなに色白になるまで監禁してさ」
 少女がぶはっと吹き出して笑った。母親は顔を真っ赤にして何か言っているが、美雪は気にする風でもない。
「和尚、彼女と二人でパフェつついててもいい? 同い年同士、“口で”話しがしたい」
 黒髪のウェイトレスが、もう美雪の食べかけのパフェと新しいパフェを別テーブルに移していた。康安和尚は、後処理を任された形になった。
「あたし、深迫 美雪。アンタは?」
「佳子・・・人偏に土二つの佳に子ども」
「頭良さげな紹介すんね。アンタ、いいとこの学校の子でしょ? 制服がいかにもって感じ」
「・・・田舎よ」
 佳子はブレザーの上着を脱ぐと、椅子に柔らかく置いた。
「貴方は、怖くないの?」
「なんが??」
「その・・・・・・」
「糖尿病?」
 二人は顔を見合わせて笑った。

 「やっぱり、PAGE ONEのパフェは美味い!」
 美雪は、くぅーっと唸ると、また一口食べた。警視庁・特殊能力対策二課の課員である美雪は、数日前の事件現場でサポートしてくれたお礼がしたいと言った、やはり特殊能力対策二課の課員、香取 あきらを連れて、近所の喫茶店に来ていた。
「あの・・・・・・何杯目」
「おかーりー」
 香取は財布の中身を調べつつ、空になったパフェカップを数えた。
「あら、香取さん、美雪」
「おー、一課のエースが何用じゃ?」
 佳子が喫茶店のドアを開けて入ってくると、美雪はそっくり返って、Vサインを見せて来た。
「懐かしいわね、その姿。あたしのパルフェちゃん」
「その呼び方やめちくりー」
「パルフェちゃん?」
 香取がハテナマークを頭の上にのっける。
「慈恵院時代に、よく美雪が言ってたの。“パルフェ!”って」
 美雪は両耳を塞いで、聞こえないポーズをとっている。
「フランス語で、完璧っていう意味で、パフェの語源」
 香取がなるほどと頷く。佳子はサンドイッチのセットを頼むと、美雪の隣りにふわりと座った。こんな時、佳子はとてもいい匂いがすると、美雪は思っている。
「ね、なんで、あの頃、よく“パルフェ!”って言ってたの?」
「しーらーなーいー」
 アニメのキャラクターのモノマネとは言えない、美雪であった。
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