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バーボチカの冒険 激震のフロンティア

海岸線での激突●
 逃げる船員を潜り抜け、水竜の前に立つ二人。その間にドミニクも森の中へ逃げる。

 いくら地上での活動が可能でもベースは水棲生物。アウェー戦を行うほどの好戦性もないため、彼を追うことはなかった。

「バーボチカ、わらわが肉薄して隙を作る! その間に弓で援護するのじゃ!」
「わかりました!」

 槍を構え前に出るスカジ。自ら食われに来たと思ったのか、水竜が牙を立てる。

「遅い!」

 しかし自ら囮を買って出ただけあってか、彼女の身のこなしは完璧。軽く体を逸らすだけでかわし、追撃に出る。
 穂先で地面を突き、舞うスカジ。軽々と頭に飛び乗った。

「ふん!!」

 すぐさま反撃へ。槍を突き刺し、大きくひるませる。

「オォォッ!?」

 そこをバーボチカが射撃。ここぞとばかりに頭を撃ち、すぐに次の矢をつがえる。

「む、危ないバーボチカ!」
「!?」

 飛び降り離れるスカジ。水竜の水鉄砲だ。正面めがけてほのかに緑色のついた水が放たれる。

「わーっと!?」

 全力で逃げるバーボチカ。直撃せずに済んだが、水竜は再び発射体制に移る。完全に狙われていた。

「こやつは飲み込んだ水に毒を混ぜて吐くぞ! 着弾点には近寄るな!」
「それ、もっと早く言ってください!」

 文句を言いながらも再び射撃するバーボチカ。再び頭に命中。度重なる攻撃に怯み、的外れな方向へ水を吐く水竜。

 確実に弱っている。頭からは血が滴り、口からは毒液が垂れ流しになっていた。

「オアァッー!!」

 最後の抵抗か、またバーボチカに水鉄砲を放とうとする水竜。

「おっと、させんぞ!」

 しかしスカジはこの時を待っていた。魔法を使い、冷気の風圧を水竜の頭に浴びせる。

「オォォッ!?」

 口に冷気を注がれたから、この一発だけで動けなくなった。毒水が喉から出る前に冷え固まったのだ。

「オォォォ……」

 横たわる巨体。あっという間に窒息死してしまった。




「……ふーう、これで終わりじゃの」

 念のため喉を斬り裂きトドメを刺す。これでもう、二度と立ち上がることはない。

「おいおい……本当にこいつ、倒しちまったのかい?」

 呆然とした船長が水竜の亡骸を見に来た。

「おお、船長さんや。よく来たの。約束の食料が用意できたぞ。これなら全員で食べても三日分以上はあるじゃろ」

 仕留めた獲物に指をさし自慢するスカジ。彼女もバーボチカと同様狩りが大好きなのだ。

「……これ、食えるのかい?」
「ああ、水竜はとても美味しいのじゃ。一生ものの思い出になるぞ」




――二人が話し込んでいる間、バーボチカは一人で森に入っていく。

「ドミニクさーん、どこですかー? もう危ないドラゴンは倒しましたよー!」

 皆が仕留めた水竜に注目している中、彼女だけはドミニクの心配をしていた。

「お仲間さんも心配しているから早く出てきてくださーい!」
「…………」

 呼びかけを続けていると、ドミニクが茂みから這い出てきた。怯えている素振りはなぜかなく、妙にいら立っているような顔。

「……どうやらケガはなさそうですね。さ、早く帰りましょう! みんな待っていますよ!」
「…………」

 黙ってバーボチカを見つめるドミニク。何か不満げだ。

「……もしかして、船長さんに怒られるのが怖いのですか?」
「平気だよ。それは自分で何とかする」

 立ち上がり船に戻って行くドミニク。その道の中で水竜を運び積み込む船員達が見えた。

「あ、今日はごちそうですよー。あの水竜をみんなで食べましょう! きっとすごくおいしいです!」

 返事もせず、一人で戻って行くドミニク。

「……そんなに怖かったのかな?」

 バーボチカはなぜ彼がこんなにも無愛想なのかがわからなかった。
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