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バーボチカの冒険 激震のフロンティア

冥界の暴君
「よって、その小娘には今ここで死んでもらう」

 ついに本気の魔法を放ってきた。繰り出されたのは黒い衝撃波。
――幸いにもかわすのは間に合ったが、さっきまでの投石とは比べ物にならない威力のそれは空ぶった先の地面を大きく削り取り、破壊した。

「…………」
「ほう、かわしたか。なるほど。子供だが英雄としての素質はあるようだな」
「やめろ、メドゥーサ! まだバーボチカは子供なのじゃぞ! そんなにわらわのしたことが気に入らないなら殺すのはわらわからにしろ!」
「何を言う? そこにいるお前はただの化身の人形だろう。それに奴らはこの小娘のビーコンを追っている。最も欲しがっている相手とみなして問題ない。よってこの小娘は死体にしてでも奴らに引き渡す」

 杖を構える共に虚空に現れた、六本の石の剣。それらが一斉にバーボチカの喉めがけて一直線に飛ぶ。

「危ないっ!」

 飛び込むように避けると、地面に刺さった剣が岩石を砕いた。

「お前えぇ!!」

 かつてない憤怒の叫び。常に落ち着いているスカジが不仲の旧友の横暴を前に、声を荒げる。

「お前だって自分の民を守るために造船所を爆破したではないか。私だって自分の民を守る責任がある。それのためにその小娘を殺すことの何が悪い?」
「許さん! これ以上手を出すのなら、島ごと氷漬けにしてやるぞ!!」
「なぜダメなのだ? お前が殺した無数の罪なき人間の命と、お前の殺戮に加担した子供一人の命、どっちの方が軽い犠牲だ? 間違いなく私のやり方の方が理知的だろう。そう思わないか?」
「思うはずなどない! わらわにとってはこの子こそが今、最も守るべき命なのじゃ!!」

 一歩も譲らない激しい言い合い。長年言葉を交わすことのなかった両者は、両者の知らぬところで価値観を築き上げた。愛情の下に守護するスカジと、理屈だけで守護するメドゥーサ。どちらの主張にも一理はあるはずだが、お互いそれに気づくことはない。

「愚か者め。その子供一人のためにお前はさらに殺戮の連鎖を重ねるのか」
「わらわは殺戮などしておらん! 無秩序に大地を汚す奴らへ裁きの炎を浴びせただけじゃ!」
「いいや、お前も私と同じだよ。自分と自分の民だけがかわいいのだよ」
「なんだってぇぇー!!」

 感情の高ぶりでついに魔力を制御できなくなったスカジ。体から強い冷気が漏れ出し始めた。

「待って下さい、二人共!!」
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