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バーボチカの冒険 激震のフロンティア

三獣将との対峙●
「……よし、これで全部終わった」

 使う爆薬は一隻あたり一個だけ。数の不足は油と粉塵爆発で補えるようになっている。
 全部の爆薬を船に張り付けた頃、天井に妖精達が集まっていた。打ち合わせ通り、散布の待機をしていた。

「…………」

 ハンドサインを送り、その場を離れるバーボチカ。散布が始まった。後は見つからないように逃げるだけ。そうすれば完全に勝ちだ。

――しかし、運命の歯車というものは彼女達の都合だけに合わせて回っているわけではない。裏口に戻るまでの間に、二つのアクシデントが立て続けに起きた。

「…………!?」

 正体不明の爆音が、外で鳴り響く。遅れて聞こえるのは炎の燃え上がる音と、外の警備兵達の悲鳴。

「なんだ!? 今のは!?」

 男女三人もそれに驚愕している中、次のアクシデントが起こる。

「……誰、あなた!!」

 三人の内の一人、女がバーボチカに気づいた。
 爆音に戸惑って足が止まっている間に見つかってしまった。

「……おやおや、子供じゃないですか」
「…………」

 黒い長髪の女、その声に合わせて振り向く二人の男。肥満体でスキンヘッド、穏やかな表情をした男と、それよりさらに背が高く痩せたノッポの男。

「こんな夜遅くに出歩くなんてあぶないでちゅよー? さあおいで、おじさん達が保護してあげるからねー?」

 肥満体の男は幸いにも彼女を外敵とみなさなかったらしい。が、その瞳に歓迎の意思はない。下卑た嘲笑だけが見て取れる。
――そこにノッポの男の拳が、無言で飛んだ。

「ウゲッ」
「ヴァーカ、なーに寝言言ってやがる。侵入者なら黙って殺せ。例えガキだろうと平等にな」

 一方でノッポの男は殺意の塊のような男であった。服装は清潔なコート姿で、いかにも紳士のようだが全身からにじみ出る殺気がそれを一切感じさせない。

「いってぇなあ! 何すんだこのヤロォッ!!」

 さっきまでは温厚そうだった肥満体の男が逆上する。

「あぁん? やるのか、テメー?」
「ちょっとやめなさいよ二人共! 侵入者がいるのよ! 仲間割れしている場合なの!?」
「…………」

 不運にも彼女は、最も見つかってはならない相手に見つかってしまったようだ。

「わー!? 助けてくれー!!」

 再び聞こえる外の警備兵の悲鳴。外でドミニクが警備兵と戦い始めたようだ。

「……どうやら外に加勢する方が大事そうですなあ」
「そうだな。行くぞ」
「え、ちょっと!?」
「ガキは任せた、クラーク。俺達は外に加勢する」

 さっきまでケンカしていた男二人が息をそろえて入口へ向かう。幸運にも見逃してくれるらしい。

「……チッ、あいつら。いつもいつも私のこと、女だからってバカにしてっ!!」

 八つ当たりに等しい言葉を吐きながら、バーボチカと対峙する女。

「悪いけど死んでもらうわよ、お嬢ちゃん」
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