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チェストー‼ 追放された貴族剣士は、辺境で最強国家を作ります

第19話 謁見
「ハヤト様、どうぞ」

 カールに促され、俺たちは王城に足を踏み入れた。高級感漂う城内ではあるのだが、絢爛豪華というより落ち着いた雰囲気。廊下に並べられている絵画や彫刻に至るまで、センスがいいような気がする。

「まあまあのセンスってところっすかね~」
「こら、モルト! 馴れ馴れしいぞ」
「いやいやハヤト様、気さくにしていただいた方が私も楽ですので。ところで、この後の謁見の内容に関してなのですが……」

 失礼極まりないモルトの発言も笑顔で受け流すカール。なんて気持ちがいい奴なんだ。それに引き換え、このもふもふめ!

 やがて俺たちは、長い廊下をすすんだ先にある休憩室で容儀を整えることになった。落ち着いた室内には、手すりや窓など細かなところまで装飾が施され、天井には小ぶりながらもシャンデリアが飾られている。

「この日のために、ハヤト様にとっておきのお召し物を用意してきたっす」
「そうか。正直よく分からんが、とにかくすまんな」
「何だか、あまりうれしくないねぎらいの言葉っす~」

 俺はモルトが用意してくれた礼服をありがたく着ることにした。

「ハヤト様、ばっちりっす!」
「そ、そうかな?」
「見違えるようっす~」

 腹立たしい所も多々あるが、こいつに褒めてもらうと、安心してその気になってしまうから不思議だ。よくわからないが、似合っているのだろう。

「まあ、これもすべて、自分のおかげっすけどね!」

「では、ハヤト様、参りましょうか」

 俺が怒りを必死で抑えているとカールがやってきたのだった。


◇◇◇


 重々しい両開きのドアが内から開き、俺は玉座の前へと進んでいったのだった。

 悠然と構えるエルフ王は、賢君として名高い。しかも思いの他やけに若く見える。色白で細面だが華奢な感じはしない。背が高く黒い瞳。額にかかる柔らかそうな茶色の髪が美しい。

「……」

 入ってきた俺たちを見てわずかに微笑む王。受け答えは、脇に控えた侍従長のみが行う。俺の言葉は、打ち合わせ通りカールが代弁してくれたので、王との面会とはいえ直接的な言葉のやりとりはなかった。


 静かで落ち着いた空間。時間がゆったりと流れた……。


 やがて王は俺たちを見回し、ゆっくりと右手をあげた。そしてそのまま柔らかそうなサラサラの髪を一度かき上げたのだった。


◇◇◇


「お兄様、どうでしたか?」
「上手くいったに決まってるっす~!」
「かの賢王は、人を見る目が確かという評判ですので、ハヤト様なら間違いないかと思います」

 控室に戻るや否や、俺は質問攻めにあってしまった。そんなキラキラした目で見られては、本当のことを言いずらいぞ。

「…い、いや、それがな……」


「ハヤト様、王はとてもお喜びのご様子でしたよ」

 俺が言葉をにごしていると、カールが口をはさんでくれた。

「え。だってほら……」
「王が笑みを浮かべて右手をお上げになったのは久しぶりのことなのですから」
「ホントか?」
「あんなにお喜びになられているお姿は久方ぶりです。何しろ、王は強い剣士がたいそうお好みですから。ハヤト様の武名は、我がハウスホールド中に鳴り響いております」
「え?」

「大森林の遠征では数多のラプトルを打ち取られ、武功第一の称号を得られて一躍辺境伯に任ぜられたとか。そして国境近くに巣くう山賊を討伐され、大森林では巨大なディラノを一刀のもとに両断されたというご活躍。今、ハウスホールドの宮廷では、ハヤト様の噂でもちきりです」
「……」

「しかも、海賊女王として名高いキール様でさえ、ハヤト様の武勇の前では借りてきた猫のようだとか」
「は?」

「おい、モルトお前……」
「自分は、ありのままを言っただけっす~」


「まあ、謙遜なさるのが、ハヤト様の美徳でもありましょう。では、交渉の席でお待ちしております」

 そう言うとカールは礼儀正しく一礼して退室したのだった。


「まあ、それもこれも、自分の力っすね~♪」

 こ、こいつは……な~に得意顔で尻尾を揺らしてるんだ! 一度、放逐してやろうか!

「さて、そろそろですね」
「頑張るっす~」

 交渉には俺とモルト、ドランブイの三人で臨む。相手側には、カールが全権を持って出席するとのこと。俺たちからすると何とも心強い。交渉相手にはなるが、悪いようにはしないだろう。

「お兄様、御武運を」

 こうして俺たちは、カールの待つ貿易交渉のテーブルに向かったのだった。
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