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チェストー‼ 追放された貴族剣士は、辺境で最強国家を作ります

第17話 ブランド
「ハヤト様、ご相談したき事があるのですが」
「今、モルトから聞いたところだ。何か不都合でもあったのか」
「それが『ドラゴンソルト』の品質が一定してないことがわかったのです。ひとまず出荷を取りやめられた方がいいかと思います」
「ウチの製塩技術が未熟なのだろうか?」
「いえ、そうではなく、水を採取する場所によって塩の風味が変わるようです」

 このカルア海は、湖底から冷泉や温泉が湧き出る箇所が複数あり、それぞれが違った泉質を持つ。それに伴い、精製される塩にも独自の香りと味わいの違いがあるのだとか。

「源泉から離れた所にある塩は、不純物が少ないので、これまで通り『ドラゴンソルト』として売ればいいでしょう。源泉近くで取れた塩は……」
「やはり、売り物にはならんか?」
「いえ逆です。温泉の香りのついた塩は、調味料やハーブをまとったような品ですので、我が商会が取り扱っている香辛料並みの価値があると思います」

 香辛料に関しては大陸でも指折りの商人であるドランブイがで言うのだから間違いないだろう。

「出荷を休止して、ブランドごとに再編すべきかと。大陸南部への販路はこのドランブイに、ご一任ください。必ず大陸南部の諸国から珍重されると思います」
「それがいいっす。ここはドランブイに一任すべきっすね!」
「なんでお前が偉そうにしているんだよ」
「ハヤト様、忘れたんすか?『ドラゴンソルト』がここまで育ったのは、そもそも誰のお手柄でしたっけ」
「え……?」
「王都に出向いて、必要な資料を探してきたのは自分っす。しかも自分は『ドラゴンソルト』の味見役として開発にも携わったっす」

 モルトは得意気にもふもふ尻尾を揺らしている。
 俺はむしろお前が、塩造りをさぼっていたことの方をよく覚えているけどな!

 多少イラッとしつつも、急いで『ドラゴンソルト』の販売戦略を練り直すことにしたのだった。


◇◇◇


「とにかく、品質がいいことは間違いございません。下手に値段を下げると今まで流通していた岩塩を駆逐してしまうかもしれないくらいです」
「なるほど。慎重に行かないとな」

 うちの塩が流通することによって、困る生産者や流通業者もいるだろう。影響は最小限にしたいところだ。
 源泉から離れた温泉成分の少ない塩は、レギュラータイプの『ドラゴンソルト』で今のまま通常販売をする。
 温泉成分が多く含まれる塩は大きく分けて三種類あり、それぞれ別々の商品として売り出したいという。
 
「一般的に大陸で流通している岩塩が、小袋ひとつ銀貨1枚くらいですから、レギュラータイプの『ドラゴンソルト』は銀貨5~6枚が妥当でしょう。『レッドラベル』『ブルーラベル』『ゴールドラベル』は、それぞれ小袋ひとつ金貨1枚で売れると思います」
「では次は販路か。大陸北部はインスぺリアルに一任するとして、問題は南だな」

 大陸南部には亜人たちの国や地域が広がっている。俺たちが狙っているのは、盟主ともいわれるハウスホールド王国。ここを抑えることができるかどうかにかかっている。

「やっぱり俺も、エルフ王に挨拶くらいはしておくべきかな」
「もちろんです。何しろハウスホールドは亜人たちの盟主。ハヤト様も早急にお目通りされた方がよろしいかと」

「お兄様は私がお守りしますので、ご安心ください」
「とにかく、謁見のお伺いを立てておくっす」

 翌月。俺たちはありったけの『ドラゴンソルト』を積み、ハウスホールドを目指して出航したのだった。
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