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チェストー‼ 追放された貴族剣士は、辺境で最強国家を作ります
第1話 王都追放
「お兄様、いくら何でも、今回のことはひどすぎます」
「そ、そうかな……」
「だって、あそこは、砂漠と湖しかない僻地。それに何十年も赴任した者などいないそうではないですか!」
「やっぱり、セリスも、王都の生活が恋しいのか?」
「いいえ! お兄様に対する処遇に、納得がいかないだけです」
「ま、まあ、落ち着けって」
「だって、王都からの追放だなんて……」
「そう追放、追放と言うなよ。案外、住めば都かもしれないぞ」
俺の名は、ハヤト=トーゴ。
馬車に揺られて拝領地に向かっているのだが、義妹のセリスの機嫌が非常に悪い。
隣では狐人執事のモルトが、もふもふ尻尾を逆立てておかんむりである。
「ハヤト様は、アウル辺境伯の話は辞退するって言ってたじゃないっすか」
「いやその……とにかく、すまんと言ってるだろうが」
「そんなの、全然心がこもってないっす!」
「しかも王都総督もお辞めになられるなんて」
「それなら、公爵様が引き継いでくださるから大丈夫だぞ」
「でもお兄様は、獣人族やエルフ族の面倒をよく見られてました。公爵様がお兄様ほど親身になってくださるとは思えません」
「こ、こらセリス。滅多なこと言うんじゃないよ」
俺のことを守るとか言って騎士団の軍服に身を固めたセリス。昔から俺のことを良いように見てくれるのだが、いささか度が過ぎるように思う。
大体俺なんて肩のこる書類仕事は部下に任せて、総督府の裏庭で剣の稽古ばかりしていたんだけど。
「でも、どうして大森林の遠征で一番武功のあったお兄様が、王都から追放されるのですか」
「武功といってもラプトルを何頭か仕留めたくらいだぞ。それに追放じゃなくて昇爵だからな」
北の帝国が南下の動きを見せているということで、王国も有事に備えて練兵もかねた大遠征を行ったのだが、結果は散々なものだった。
急造の王国軍は各隊の連携が取れず、兵站も途切れて孤立する部隊が出る始末。前線の指揮官を任された俺も、一番の武功をあげたとはいえ、それほど活躍した訳でもない。
「ほんと巻き込まれるこっちの身にもなって欲しいっす」
「モルトの言う通りです。いつもお守りしている私の身にもなってください」
「zzz……」
「あっ、お兄様!」
「都合悪くなったからって、寝たふりするのはずるいっす~!」
セリスとモルトから責められているのだが、これにはいろいろと事情があるのだ。
俺だって叙任式の前日までは、アウル辺境伯の話を固辞しようと思っていたのだから。
◇◇◇
叙任式の前日。
俺はこの日も木刀を振っていた。我がトーゴ家の家伝『次元流』の稽古である。
「チェストー!」
ところがこのとき、なぜか未来の記憶が奔流のように流れ込んできたのである。
それはアウル辺境伯を辞退したことから始まるバッドエンド。
俺は散々迷った挙句、アウル領行きを引き受けることにしたのだった。
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