あれれ? こうえんからかえってきた4才のりさちゃんは、はなをおもわずピクピク クンクンさせちゃいました。だってね、ママったら。おとくいの、おさるのかおのビスケットをたくさんやいているんです。
「ママぁ! りさ、あじみするぅ」
りさちゃんはママのビスケットがダイスキなんです。
「あらあら」
ママはわらいます。
「そのまえにただいまと、てあらい・うがいでしょ?」
えへへ。りさちゃんはこっくりしました。
「はあい」
おててをきれいにあらってから、りさちゃんはもどってきました。
「いちまいだけよ」
ママはわらいます。
「あしたね、おじいちゃまのおみまいにいくの。 もうすぐたいいんなのよ」
おじいちゃま、はママのおとうさんです。いつもニコニコわらって、りさちゃんはおじいちゃまがダイスキでした。
「わあっ! じゃあ、バスのる? ピンポーンするぅ? 」
「ふふっ。りさちゃんはバスのピンポンがダイスキだものね。ええ。バスにのりますよ。ピンポンしてね、りさちゃん」
「うんっ」
りさちゃんはおおきくうなずいて、ビスケットをかじりました。
つぎのひになりました。 ママはあさから、おおいそがしです。 ひさしぶりにあえるおじいちゃまにもっていくにもつを、あれこれガサガサあつめています。
「ママぁ。 はやくぅ」
りさちゃんはほっぺをふくらませて、トントン。
あしをならしました。
「はいはい。 いきましょう。りさちゃん」
そういったママのりょうては、にもつでいっぱいです。ふう、ふう、ふう。ママはにもつがおもくてあせだくみたいです。りさちゃんはそのまえを、ぴょんぴょんとびはねてます。
「ママぁ。 はやくはやくぅ」
はやくしなきゃ、バスはいってしまうかもしれません。はしりだしたりさちゃんは、ステーン!そこでころんでしまいました。
りょうほうのひざから、ちがでてます。
「う…うぇーんっママぁ 」
ポロポロ。りさちゃんのりょうめから、おおきななみだがこぼれました。
「あらあら。いたかったわねぇ」
ママはにもつでりょうてがつかえません。りさちゃんをなでてあげることも、できません。
「ピンポンはこれじゃ、できないかな? 」
むぅ。りさちゃんはあわてて、かおをこすります。
「で…できるぅ」
りさちゃんはぐしゅんとはなをすすります。
バスがやってきました。なかはおもったよりもこんでいます。ママもりさちゃんも、もくてきのばしょまで4つ、たっていることになりました。
「りさちゃん。 4つ目だからね。 ピンポンよろしくね」
ママにいわれて、りさちゃんはこっくりしました。 …でもピンポン、どこにあるのかなあ。 キョロキョロしてさがします。
あっあったぁ!でも…たかいところにあります。りさちゃんにはとどきません。ほかのところには、ないかなあ。はやくさがさなきゃ…おりるときにおせなくなってしまいます。 あっあった!ありました。でも…そこにはこわそうなおじいちゃんがすわっています。こわがりなりさちゃんは、みただけでビクビクです。まゆげがふさふさしていて、こわそうです。
「りさちゃん。つぎのつぎにおりるわよ」
ママがいいました。えっ!もう?どうしよう…ピンポン…あるのに、おせません。うつむいていると。
「けがをしているね」
おじいちゃんがりさちゃんのひざをみて、いいました。
「よかったら、うちのまごがつかってるバンソコーをどうぞ」
そのおじいちゃんのこえはとてもやさしくて、りさちゃんはにっこりわらいました。
「…ありがとぉ! わあっかわいいっ!」
くまさんのバンソコーをもらったりさちゃんは、ピンポンのこともおねがいしました。
「あのね…りさね…」
「うん。これをおしたいんじゃろ? 」
おじいちゃんがにっこりして、りさちゃんにとどきやすいようにどいてくれました。
「わかばまえ〜」
バスのうんてんしゅさんのこえに、りさちゃんはにっこりして
「うん!ピンポーン」
ピンポンをおしたのでした。