あっさりした城門審査を通過して、ヘルシスタン町に再び入る。
夕日になりかけの日差しに照らされた白とオレンジの町は、かなり綺麗だ。
ついでに言えば、美少女三人組も美しい。
メイン通りを通過して、冒険者ギルドへ到着した。
部長のクレハが自分のおでこをパチンとやる。
中に入り、受付のお姉さんに番号札をもらい酒場のほうの椅子に座る。
今の時間は列に意味がなく、番号札順になっているようだった。
途中でトイレとかに行ってももちろん大丈夫。
受付は獣人ちゃんが二人増えて六個に増加されているけど、対応はぎりぎりのようだった。
しばらく待たされる。
噴水と同じ原理の出っ放し飲み放題のお水を失敬して、一息入れる。
部長は俺みたいにおじさんっぽく。
タニアはちょっと恥ずかしそうに「です」をつける。
リエは通常運転。
新鮮なお水は美味しい。
もちろん、冒険中は竹筒のような水筒を持参している。
他の冒険者みたいに料理を食べたいところだけど、受付があるので今は我慢だ。
そうこうしているうちに、順番が回ってきた。
さっきの猫耳獣人の美少女だった。
買取品を出す。
スライムの核、フェルクラ草、ベネベネ草。
それほど多くはない。二十個ずつくらいだろうか。
奥に引き取られていく。
このままパクられたら終わりだけど、ギルドは信頼で成り立っているので、そういう心配はないのだろう。
気にするのは天邪鬼の俺くらいかも。
MMOPPGとかだと先渡しはタブー視されている。
だいたいそういう時は詐欺だ。
しかも多くの運営ではユーザー同士のトラブルは民事不介入の警察のごとしなのだった。
南無三。
「お待たせしました。全部で5,000トリングの評価額です。よろしいですか?」
マニュアル通りだろうけど、印象はいい。
なかなか笑顔がチャーミングな猫耳美少女さんだった。
「さて、面倒だしここで食べてく? それとも宿で食べる?」
んっていうのはどっちなんですかね。
俺も悩むな。
俺が提案する。
あっさり決まった。
というか宿? お泊りなんですかってお泊りだよね。
金土日の二泊三日、異世界冒険ツアーだもん。
とぼとぼと歩いて、宿屋に向かう。
表通りから一本だけ道に入る。
「HOTEL」と英語で宿屋の看板が出ていた。
そうだよな、外国人向けの商売なら、英語とか日本語があってもおかしくはない。
こちら側にも地球の影響がいろいろあるのだ。
四階建てでこの辺ではかなりの立派だ。
外装はシンプルだけど、ちょっとだけ年季の入った色をしていた。
どうせ俺はヘタレですよ。
「そんな目で見ても、シングルにはしてあげないわよ」
まあ俺が襲う側じゃないだけましか。
四階へと上がっていく。
四階が一番安い部屋だ。エレベーターがないので。
窓からは町の中の屋根と家々が見える。
夕日に照らされていて、かなり綺麗だった。
さっき横目でスルーした一階の飲食スペースへと戻ってくる。
座るなり、すぐに水と豚肉と野菜の炒め物、スープ、パンのセットが運ばれてきた。
「ここ、食事は一種類だから。そのかわり激安なのよ」
豚肉のソース炒めをパクリと食べる。
うまいっ。
もう一口。甘辛いタレに旨味のある肉でとても美味しい。
それからスープをスプーンで掬って飲むと口の中がリセットされる。
あっという間に食べてしまった。
異世界だから、食事が遅れているとかいうこともないようだ。
黒い硬パンに、まずい塩だけスープとか想像していた。
「食事はここ十年ですいぶん、グルメになったらしいわよ」
再び階段を上って四階へ。
扉を閉めると、クレハ部長と二人っきりになった。
改めて見ると黒髪ロングに美しい整った顔立ち。
かなり美少女である。
ドキンドキンと心臓が高鳴る。
こんな部長だけれど、俺だって男の端くれである。
「あ、そうそう、その線よりこっち来たら、斬るからね」
「うん、胴体と首より上がサヨウナラしたくないなら、気を付けてね」
一応、自分の危険性については認識していたのか。
それはそれでなんだか、男として認められているんだな、みたいな謎の満足感を感じた。
俺はいそいそと布団をかぶり、あ、この布団、ふわふわで気持ちいい。
こうして眠りについた。