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ファンタジー冒険部

5.薬草採取
「それじゃあ、冒険者登録もしたし、最初の任務、薬草採取でもしようかね」


 部長のクレハが提案してくる。

「分かりました」


 俺が答えると街を出て、外の草原に向かう。

 ワープゲート周辺は森が広がっているが、城塞都市のすぐ前は切り開かれていて、草原なのだ。

「あったあった、これが薬草、フェルクラ草」

「ってなんですか。フェルクラ草じゃん」


 俺だって毎日学校への行き帰りで見てる。フェルクラ草。
 長梨市では、おなじみの光景だ。

 異世界のファンタジー植物が、普通に畑の路地で栽培されているから、笑っちゃう。
 ちなみに冬の間はハウスか、もっと南のほうで多く栽培されている。

 見た目はヨモギのような植物で、別に普通。
 白い花弁で真ん中が黄色い、スノーボールみたいな花を付ける。

「えへへ、だって薬草って言ったらこれでしょ」

「これ、初級の薬草なんです?」

「うん。下の上だね。中級に近い初級」

「へえ」

「もっと効果が低い薬草も何種類かあるけど、見向きもされてないから」

「なるほど」


 クレハが自慢げに教えてくれる。

「これがベネベネ草」

「なんです?」

「例の効果が低い、下の下の草」

「そんなのどうするんです?」

「実は下痢の特効薬だったりする」

「なるほど」


 これも採取した。
 見た目は丸くて長いホウレンソウとかタンポポみたいな葉っぱだった。

「というか、ドラ。そういえば装備、渡してなかったね」

「そうですね」


 クレハは背負い袋を漁ると剣と革のブレストプレートを出してくれる。
 どう見ても袋より大きい。

「あのクレハ。袋より剣のほうが大きいんだが」

「これはマジックバッグなのよ。他にもいろいろ入ってる」

「そうなんだ」


 イッツア、ファンタジー。

 ショートソードと胸鎧を借りる。
 胸鎧を縛ばる。
 ショートソードには腰のベルトがあるので、それで吊り下げた。

「いっちょ前に、冒険者みたいじゃん」

「いいですね」

「かっこいい」


 お、思ったより好評だった。
 なんだか美少女たちに言われると、肯定感が得られるというか。
 めっちゃうれしい。

「ねえねえ抜刀してみてよ」

「はい」


 俺は剣を抜き、振りかぶったりしてみる。
 剣は重いが、振れないほどではない。

 剣道なんてやっているわけもなく、しかし俺は少年野球をしていてバットを振った筋肉がある。
 いつか役に立つと思って、バットの素振りだけは欠かさなかった。
 だから腕の筋肉はなくはない。

「思ったより、剣、振れてるね」

「そうですよね」

「まとも」


 及第点はもらえるのではないだろうか。

「ほら、ちょうどスライムがいる」

「本当だ」


 平原にはスライムが普通にいた。

 半透明の水色のボディー。
 口と目がついている。
 それから中に核と呼ばれる魔石が見える。

「ていやあ」


 俺はスライムに斬り掛かる。
 するとスライムのゲル状の部分が千切れて分離する。

「やった」


 しかしそのまま見ていると、また合体して何でもないような顔をしている。

「スライムは核を切るか、分離しないとだめなのよ」


 部長が得意げな顔で説明してくれる。

「わかった」


 俺は振りかぶる。

「うりゃあ」


 剣を核目がけて振る。

 ヒットした。核が割れて、真っ二つになった。
 後にはべちゃって潰れたスライムが残された。

 さすがに光って消えたり、ドロップしたりはしないらしい。
 一応ここは現実なので、さもありなん。

「あーあ。核真っ二つじゃない」

「そうですね」

「うん」


 あれ、見事だと思うのに、反応が悪い。

「スライムの核は売れるから、核だけ掴んで引き抜くのがセオリーなのよ」

「なんだそれ。それって剣もいらなくないですか」

「いらないね」


 嵌められた。
 まんまと剣で倒させられたけど、剣意味ねえ。

 その後も薬草採取を続ける。

 クレハがスライム狩りの手本を見せてくれる。

「まず剣でバラバラにするの」


 剣で斬りつけ、周りのゲルを分離していく。

「弱ったところを手を突っ込んで、核を抜く」


 手がスライムに伸びて、核を引き抜いた。

「はい、終わり」


 ゲル状の部分はバラバラに散らばって、目と口は行方不明。
 核だけ手の中に残っていた。

「この魔石で100トリング」

「トリングですか」

「通貨の単位ね。10トリングが為替で1円。もちろん硬貨はゲートを通れないけど」

「そうなんですね」


 つまり100トリングは10円と。

「パンも100トリング。10円だね。物価は安いの」


 あぁややこしくなってきたぞ。
 つまりパンが日本では100円とすると物価換算では100トリングは100円の価値だということだ。

 為替が機能しているなら、異世界に移住すると10倍金持ちになれる。
 お札は金属ではないが、持ち込めた例はないらしい。

「鉄貨が10トリング。銅貨が100トリング。銀貨が1,000トリング。金貨が10,000トリングね」

「あはい」


 つまり俺は6万トリング位を持っている。

「スライム倒しまくれば大金持ち?」

「100体で金貨だね」

「そうか。うーん。まあ悪くはないですね」

「そうだね」


 その後も薬草を取って、スライムを倒して歩く。
 ただスライムはあまりいない。

 夕方になってしまったので、切り上げて町に戻った。
 また城門審査の列に並んで、中に入る。
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