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ファンタジー冒険部

4.俺の呼び名と冒険者ギルド
 ヘルシスタン町をとぼとぼ歩く。
 こうやって見て歩くだけでも、結構楽しい。

 人間、エルフ、獣人。
 猫耳、犬耳、あっちの子はウサギさんだ。

 まるで中世異世界ファンタジーのよう、じゃなかった実際に異世界なんだ。
 ファンタジーではないけれど。

「ところでさ」


 部長のクレハが話しかけてくる。

「東門、竜矢だよね。何て呼ぼうっか」

「あぁ俺の呼び方は決めてませんでしたね」

「そうそう。リュウがいいかな、ドラのほうがいい?」

「ドラ……」


 なんだかちょっと二十三世紀の猫型ロボットのような気もするけど。

「リュウ? どう思う? やっぱりドラのほうがいい? ねえ、ドラ」

「んんー」


「よし、ドラね。君は今日からドラだから」

「分かりました」


 俺は結局ドラにされてしまった。

「公園の野良猫、みたい」


 リエがぽつんと言ってくる。

「野良猫っ、くっ」


 俺は10のダメージを食らう。

「……猫、かわいい」


 あ、野良猫って煽ってるんじゃなくて、評価は「かわいい」なのね。
 俺なんかよりリエのほうがかわいいけど、なるほど。

「ところで、これで全員なんですか? 男子とかB班みたいなのは」

「それが、ね」

「あ、うん」

「あはは」


 みんな言葉を濁す。
 タニアが代表で言葉を続ける。

「実はですね。男子も最初はいたのだけど、みんな辞めてしまって」

「そう、なんですか」

「うん。オタクの子は自分でヤるのとRPGをプレイするのは全然違うとか言ってました」

「あぁ、それ、気持ち分かります。まだ戦闘もしてないですけど」

「だから引き止めないけど、ドラには頑張ってほしいです」


 くぅ。先輩に期待されちゃうと、頑張りたくなるよね。
 うおおおお。俺はやる。やり遂げる。

「そういえば、俺たちの目的とかあるんですか?」

「いえ、特には。スライム倒したり、薬草集めたり、しててもいいんですよ」

「そうなんですか」

「はい」


「こっちで科学の発展をしようという人は?」

「そういう人もいるんですけど、世界は広いので集まってやらないと、なかなか全体を底上げるするのも難しいのです」


 そうだよね。量産、工業化するにもまず蒸気機関スチーム・エンジンか?
 ヨーロッパの産業革命には燃料として泥炭だかの産出が前提としてあった。

 機械製作、機械部品、工作機械。
 金属加工だって、難しい技術だ。

 科学も電気工学とかも、純度の高い銅線を作るのから、まず難しい。
 電気を作るには強い磁石とコイルがいる。
 しかし強い永久磁石を作るには高電圧がいる。
 鶏と卵みたいになっているのだ。
 再現するのは難しい。

 ちょっとずつ進んではいるらしいけど、職人芸とかノウハウが必要なものは下積みからやらなければならないらしく、苦戦しているとか。
 古い手動での技術は現代社会から失われて久しい。

 例えば平らなガラス窓に使う吹きガラスはドイツに少し残っている程度だと聞いたことがある。
 そしてそういう人を異世界に連れていくのも、大変だ。
 元々忙しくて協力してくれるとも限らない。


 さてようやく、噴水広場に到着した。

「ここが噴水広場、見たままね。噴水があるってことは上水道があるって意味でもあるのよ」

「言われてみればそうですね」


 小説とかVRものだと噴水広場がよく待ち合わせ場所として出てくるイメージがある。
 その噴水広場もただ存在しているんではなく、水道施設が設置されているという意味なのだ。
 だから井戸とかを使わなくて済むということでもある。

「この噴水の周りがメインのロータリーになってて、東西南北四方にメイン通りが通ってるのよ」

「ほほう」

「一種の計画都市といっていいわ。異世界ではここまでちゃんとしているのは珍しいほうかも。近代都市だね」

「なるほど」


 ロータリーといっても、まだ馬車が現役だ。
 こちらには便利な石油が見つかっていないため、自動車がない。
 石炭もないので第二次世界大戦中とかに使っていた木炭車もない。

 
どどどどど。


 ロータリーを一台の馬が引かない馬車のようなものが通過していく。

「おおぉ、これが例の」


 今通過していったのが最新式、魔道車。
 魔石を燃料にした回転エネルギーを取り出すことで、走る自動車の一種だ。
 ただし、まだまだエネルギー効率が悪くコストパフォーマンスがよくない。

 高価な魔石をバンバン消費するので、道楽の一種とみなされている。
 ホームズとかで出てくる初期の自動車、電気自動車もそんな感じだったそうだ。

「じゃあ冒険者ギルドへ行きましょう」

「おぉ、冒険者ギルド!」


 やっぱりあるのか冒険者ギルド。
 存在は知っていたけど、憧れだよな。定番だし。

 メインロータリーに隣接されている冒険者ギルドに入る。
 建物は立派な三階建て。
 ただしこの町は家の外観がほとんど同じなので、区別はつきにくい。
 正面に剣と盾を重ねた意匠がトレードマークだった。

 ドアを通ると、ガランガランとカウベルが鳴った。

「ようこそ冒険者ギルドへ、どのような御用ですか?」


 入口すぐにいた案内係の女の子、犬耳の少女が声を掛けてくる。

「あ、ちょっと手紙の確認と新規登録を」

「はい、ではカウンターにお並びください。番号は三四六番です」


 番号札を渡される。
 数字は、地球と同じだった。

 実は異世界ではローマ数字風に文字を代字としていたけど、利便性でアラビア数字が導入され、ここ十年であっという間に全世界で同時多発的に広まった。

 数字さえ分かれば、値札なども読めるため便利なのだ。

 内装は酒場が併設された、銀行窓口だろうか。
 カウンターが四つある。

 オジサン、美少女、美少女、猫耳美少女。

 夕方前なのでそれほど混んでいない。
 もう少しするともっと混んでくると思われる。

 時間はどうやら、現地時間と地球側の時間が同期した場所がワープポイントらしく、地球の反対側では現地時間も十二時間ぐらいずれているとか。

「お待たせしました。三四六番のかた」

「はい、地球冒険者のクレハです。伝言、手紙はありますか?」


 猫耳美少女の受付だ。
 クレハが冒険者カードを渡す。

 冒険者カードといっても、ただの木の薄い板だったりする。
 残念だけど、討伐記録やレベル経験値などが全部記録された魔法のカード、魔道具ではない。

「そのまま少しお待ちください。他に用件はありますか?」

「あっ、こいつの冒険者登録をお願いします」

「はい。地球のかたですよね。こちらの記入用紙にお願いします」


 普通に洋紙の登録用紙を渡される。
 文字が読めない。

「ここに登録名を。別に本名でなくてもかまいません。フェリエル文字は書けないですよね? アルファベットでお願いします」


 俺は言われた場所に名前を書く。

 ”Ryuuya”


「こちらに誕生年を西暦でお願いします」

「え、西暦でいいの?」

「はい」


 西暦で記入した。

「リューヤさん、十五歳ですね」

「はい」


 新しい冒険者カードには冒険者番号らしきものが書かれていた。

「こちらのカードにも記名をお願いします」


 図書カードとかと同じタイプだ。
 名前を裏書きする。

 正面には番号意外に「F Rank」とも書かれている。
 なぜか英語だ。

 受付の猫耳美少女は登録用紙に冒険者番号を転記して、同じか確認していた。

「はい、以上で終了です」


 あっさり冒険者登録を完了した。
 この感動をかみしめる。


 ――俺が、俺たちが冒険者だ。 

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