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シンセティックシューターメインストーリー1 シャーロッテ誕生編

誓いの日
「俺はお前に復讐するためだけに生きてきた! 俺は聞いたぞ。お前がホムンクルスを造ったという話を! そのホムンクルス、今お前の目の前で殺してやる!!」


――その宣言と共に、私達だけじゃなくお店中が大騒ぎになった。

「わああっ憲兵を呼べ!」

「逃げろ、逃げろ!」

「暴漢だぁっ!」


 冷めた鉄が近寄る気配を感じる――こ、殺されるんだ、私。何の恨みもないただの思い込みで、殺されるんだ。

「――その子を放せ!」


――その時だった。

「?」


 立ち上がったのは、なんとシャロだった。食事の際は全く手を付けていなかった食事用のナイフ、それを握って。

「その子はホムンクルスじゃないっホムンクルスは俺だ!」


――途端に繰り出される、早業。食事用ナイフが男の腕に直撃し、怯ませる。二重の金属音と共に拘束は解かれ、私の顔は床に転がった二本のナイフに急接近。

「――!!」


――これなら、やれる! とっさに私は、男に取られるより先に武器を奪った。

「……ぐっ!?」


 立ち上がって奪ったナイフを構えた時、男が二本目のナイフを取り出したところだった。

「…………」


 武器を奪われることを全く想定していなかったのか、相手は途端に怖気づいた。彼はせっかく握った二本目すら、何もするまでもなく取り落とした――いや、それだけではない。急に頭から倒れ込んでしまった。

「……私、助かったの?」









――それから間もなく、憲兵がやってきた。失神した男は無抵抗で捕縛されることに。私達は食事会を台無しにされたものの、無事生きて帰ることができた。

「…………」


 私と社長さんの事情聴取が、やっと終わった――だけど難航しているのはシャロだった。結果的に私が助かったからよかったものの、興奮状態の暴漢を却って刺激するような真似を憲兵達からとがめられているらしく、帰ってくるのを待つだけでも一時間以上かかりそうだ。

「――しかし、犯人が同級生とはねえ」


 呆れるように嘆く社長さん。犯人の暴漢はジェファソン・エスペランサ。彼は社長さんが大学院生だった頃同級生らしい。

「社長さん、あの人のことってどれだけ知っているんですか?」

「いや、特に仲がいいわけではなかったからちっとも覚えてなんかないね。ただ体が丈夫じゃない子だったことは覚えているんだけど」


 男は心臓を患っていたらしく、突飛な抵抗を前に発作が生じて倒れたらしい。つまり男の不運がなかったら、私は絶対に殺されていた。

「……きっと一生分の幸運でしたね」


――もしかしたら今頃、あのことをキチンと謝れないままお別れになっていたかもしれない。帰ってきたら今度こそちゃんと謝ろう。そして感謝しなくちゃ。

「いや、俺はあれを運だけとは思わない」

「?」


 そんな思いをはせていた中、社長さんが言った。

「俺は見たんだ。シャロがあの男と戦おうとする時に、あの子の眼が紅く輝くのを」

「……それって」

「ああ、魔眼だよ。あの子は魔眼を持っていたのさ」


――魔眼、それは先天的に素質を持つ者だけが使うことのできる異能だ。持ち主自身すら制御できないほどの魔力が析出した産物だと、本に書いてあった。子供の頃は冗談で魔眼を持っているとかうそぶく遊びを誰もがするし、高度な錬金術によって後天的にそれを再現する技術も秘密裡に開発されているらしい。

「あの子の魔眼がどういう力を発するのかは鑑定しないとわからない。だけどあの男が発作を起こしたのは、彼ににらまれた瞬間から確定していた必然なのだよ」


 だけど、先天的に発現した純正の魔眼の話は、一度も聞いたことがなかった。おとぎ話の中だけの存在だとずっと思っていたものに、助けられるなんて。

「……それにしても、ホムンクルスが魔眼を持って生まれたなんて前例は聞いたことがねえや。これは協会に報告しないといけねえ案件だな。だけどそれより先に――」


 社長さんは立ち上がり、入るなと言われた取調室の方へ歩みを向ける。

「俺があの子の無実を証明しないとな」


 笑顔で振り向いた彼は、悪びれることなくその扉を開け憲兵達を戸惑わせたのであった。


シンセティックシューターゼロ 誓いの日 完

【this is only the beginning……】
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